下剋上するぜ、鉄人よ!
 

家に帰る途中、私は送ってくれるって言ってくれた手塚君に丁重に断って、卵買って来てメールを送った張本人の家に卵を持ってやって来ていた。
……まあ口じゃ勝てないのは知っていました。
ただ私にも夢を見る権利はあると思いますです。
「あー…入るよー」
入る前から何だか疲れた私は、綺麗に片されている部屋を前に声を掛けた。
「あ、早かったですね金代さん」
「予定繰り上げで大阪から無理矢理帰って来ましたが何か」
「喧嘩売ってるなら買いますけど」
「すいません」
古武術やってる日吉君に勝てる訳ないよ!
心の中でツッコミを入れながら、私は即座に謝った。










日吉若。
私が家に引っ越して来たとき(中二の秋くらい)からのお付き合いのお隣りさん。
最初会ったときはつっけんどんで感じ悪っ!
なんて思ってたけど、引っ越して来てから数日後のゲーセンで太鼓の鉄人をやっていたのを見つけたときそれはがらりと崩れた。
凄い速度で、しかも独特のフォームで正確にリズムに合わせて打っていく日吉君。
その姿はによ動で有名な『下剋上』さんにそっくりだった。
……興奮も冷めやらないうちに、私が話し掛けたときの日吉君の顔は忘れられない。
滅多に崩さない無表情を崩したからね。
間抜けな顔になってたよ。
「…何か変なこと考えてるでしょう」
「いたっ痛いから!無表情で頭掴まないで馬鹿になる!馬鹿になるから!」
「元々馬鹿だと聞きましたよ、金代さんのお母様から」
「ママン!?」
え、何勝手に暴露してるのママン。
てかよく娘をけなせるな。
「それから『うちの子にならないか』とも聞かれましたが」
「本当ママン何言ってるの」
何勧誘してるの、何で?
…手塚君ママンがいるときに連れて来なくてよかったかもしれない。
絶対既成事実なりなんなり作って手塚君を家に引き込むよ絶対。
もうママンの暴走は止められないから。
パパンはママンに勝てないし。
私は人質(お小遣)があるから逆らえない。
…手塚君、君の人生は私が守るようん。
「日吉君、何で卵買って来いって頼んだの」
「は? 何の話ですか、とうとう頭沸いたんですか」
「とうとうって何だ。…だってさっき日吉君からのメールが来たから卵買って来たんだけど」
「…それ、幽霊か何かですか?」
「ば、ばばばばバーロー!幽霊なんかいねえよ!」
「金代さん、本当に幽霊苦手ですよね。口調が変わるくらいに」
「違うし別にこわ、怖いとかねーし。バーローてやんでい!」
ゆ、幽霊だと…。
そんな非現実的なこと、ないって!
だって幽霊だよ?
いないよ絶対!
……あ、あれ。
何か日吉君の目が輝い、て…!
やばい、日吉君オカルトマニアだった。
「にしても身近で幽霊が現れるなんて思いませんでしたよ」
「私も思わないから!」



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