新刊的発想な
 

「よっしゃ、今日は新刊の発売日!」
手塚君は今日生徒会の仕事があるから私は手塚君の分も確保する約束をしている。
ジャ〇プ面白いよねジャ〇プ。
手塚君の意外な一面を知ることが出来て楽しいですはい。
「此処から一番近いとこは……あ、あそこか」
頭の中で最短ルートを描くと私は走り始めた。
これでも運動能力は人より少し高いのである。
スーパーの食品戦争ナメんなよ!
最初に参戦したときは惨敗でパンの耳しか買えなかったよ、お母様方すげえ。
「すいませーん!さっちゃん新刊二冊ちょうだい!」
今にも潰れそうでありながらコアな本を沢山置いてある御堂書店に飛び込んで私はそう叫んだ。
「うっさいわこのチビ娘が!」
「いった!て、さっちゃんは身長二メートル近くあるから私が小さく見えるの」
「はっ、150前半の身長が何を言う」
口が悪ければ目付きも悪い御堂書店唯一の店員…いや、店長の御堂慧毅(みどうさとき)。
通称はさっちゃんで、年は30代後半のおっちゃんだったりする。
その筋のお母様方には大変人気のある人だ。
……さっちゃん、見た目だけはいいから。
性格は残念な人なんだ…。
「新刊だっけか。そこらに積んである」
「さっちゃん、それ今日発売の雑誌。しかも付録開けてるよ」
「いんじゃね?俺の店だし」
「あー…うん、そうだね」
きっぱりと答えたさっちゃんに面倒になって私は新刊を探し始めた。
「何で新刊が下の方に……」
「え?マジでー?さっき何か気分で置き換えたわ」
「さっちゃんなんかチャラ男っぽいよ!口全然悪くないじゃん」
二冊取り出してお金を渡す。
「お、毎度ー。じゃあさっさと帰れよ。俺これから大人の本読むから」
「嫌な店長だ…!てか言い方変えたら逆にいかがわしい!」
「あんだよ、どうせそれこないだ仲良くなった男子に渡すんだろ」
「私の交友関係知ってるさっちゃんが怖い」
軽口を叩きながら御堂書店を出ると私はファーストフード店に入った。
『手塚君、〇〇駅近くのファーストフード店で待ってるよ(^∀^)ノ』
「送信……と」
軽く何か食べようと思ってチーズバーガーセット(ドリンクは牛乳!背伸びろ)を買って食べる。
「さっちゃんのとこで結構時間くっちゃったけど生徒会の仕事、こんな遅くまで終わらないんだ…」
今度から差し入れしてあげようと決意してドリンクを飲んでいると見慣れたリュックが見えた。
「あー…今日も疲れましたね、英二先輩?何食べてきます?」
「そんじゃあ俺、トリプルバーガーセットでポテトLサイズだよん!そんでドリンクはコーラ!」
「越前はどうすんだ?」
「俺はハンバーガー10個にダブルチーズバーガーセット、ドリンクはポンタグレープ」
「じゃあ俺もそれでドリンクはコーラで」
凄い注文してる……!
え、あれ一人で食べられる量?
……じゃなくて!
手塚君鉢合わせしたらまずそうだから連絡入れとこう。
「すまない、金代遅れてしまった」
「! 手塚君ちょっ…」
「どうかしたのか?」
気付いてない!
「あ、じゃあ俺席取ってくるねー。お、あそこちょーど空いてるにゃー」
良かった、反対の席に行ったか……。
「手塚君何か頼む?買って来るけど」
「……いや、俺が行って来る」
「いやいやいやっ、ほら手塚君走って来たみたいだから座っててよ」
無理矢理座らせて私はレジの方をちらりと見た。
どうやら二人も席を取っていた菊丸君の方へと行ったみたいだ。
にしても……あの二人って誰なんだろう。
菊丸君は同じ学年だから知ってるけど二人は分からない。
多分髪を立ててる人は2年で小さい子は1年だなって分かるくらいであとは全然分からない。
「手塚君、何食べる?」
「……フレッシュフィッシュバーガーセットで飲み物は麦茶で頼む」
「うん、了解」
一応念には念を利かせて私が注文しに行った。
手塚君が凄い私のことを申し訳なさそうに見ていたのはまるっきりスルーさせてもらった。
「うわ…凄い勢いで食べてる…!」
注文している最中ちらりと菊丸君達の方を見れば凄いスピードで食べている3人が見えた。
若いねー…。
注文したものが来たから受け取って席に戻ると眉間に皴を寄せた手塚君が待っていた。
「どうしたの、手塚君」
「先程から何を隠しているかと思えば…あの3人がいたからか」
「あー…うん」
「別に気にする必要はない。疚しいことをしている訳でもない」
そう言うと手塚君は私の手からトレーを取り、食べ始めた。
「あ、そうだ。はいこれ」
暫く無言で食べたあとに忘れていた新刊を取り出した。
「すまないな」
「ううん、こっちこそ遠回りさせてるし」
私から本を受け取って手塚君は鞄へと仕舞い込んだ。
「…3人とももう食べ終わって出てったみたいだね」
「ああ」
菊丸君達の席をちらりと見ると既に知らない親子が座っているのが見えた。
「そろそろ帰ろっか」
「そうだな。…金代、これを」
「え?あ、これこの間言ってた…」
「家にあったからな、暫く貸しておく」
「ありがとう!」
昔流行ったゲームを借り、今度こそ私と手塚君は帰った。



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