私の好きな様にしていい?
 

「大丈夫だったか、市?」
「うん……」
教室に戻れば心配そうな顔で尋ねてくるジャッカルがいた。
「ごめんなさい、心配かけて…」
「いや、無事なら良いんだ。」
それに頷いて、市は席についた。
「休まなくて良いのか?後1時間だけなんだしよ…」
「いいの…市、授業ちゃんと受けたいから…」
「そうか、なら具合悪くなったら言ってくれよ?」
相変わらず周りから見たらどこの兄妹だよ!と言わんばかりの掛け合いにクラスの人は暖かい目で見つめている。
それに気付いたジャッカルが慌てて取り繕う。
「次は確か移動だったよな、」
「ええ……化学室で実験だったよね…」
ペンケースと教科書を持ち、市はジャッカルが準備しているのを待った。
「…よし、それじゃあ行こうぜ」
「ジャッカル、織田さん」
いざ教室から出ようとしたところで、先程まで話していた声に引き止められた。
「ゆ、幸村…」
「幸村さん?」
「俺も一緒に行って良いかな?」
筆箱と教科書を手に持ち、にこやかな微笑を浮かべた幸村が話し掛けた。
「構わねえけど…市は良いか?」
「ええ、平気よ……」
こくりと頷く市に微笑を向ける幸村に、ジャッカルは何処か怪しげな目を向けた。
(珍しいな、幸村が女子を気にするなんて……)
通常の幸村ならする筈がない行動に疑問を感じたからだ。
「どうかした、ジャッカル。俺の顔を凝視して」
「! な、何でもねえよ」
笑顔のまま問われて、しかし何故か背筋に悪寒を感じて慌てて目を逸らした。
「そういえば仲が良いんだね、ジャッカルと織田さん」
「まあ隣の席だしな…」
「ふうん?」
「ジャッカルと幸村さんも仲良しよね……?」
「ふふっ、そうだね。仲良しだよ」
「………(やばい、笑顔が怖い)」
「ジャッカル、どうかしたの…?」
「えっ、いや何でもない…(気付いてねえ!)」
黒い笑みに気付かずに首を傾げている市に感心するが、今はそんな事を言っている場合じゃなかった。
化学室に着いた為、そこで話が途切れたものの……恐らくは部活の時間に扱かれるのだろう。
相変わらずの扱いの酷さに目頭が熱くなるのを感じたジャッカルは、部活の時にせめて丸井や赤也のとばっちりを受けずにいたいと叶わない願いを胸の内に浮かべた。













「きりーつ、れーい、着席ー」
「よし、これから放課後だから部活やれよー」
やる気のなさが窺える担任の言葉にクラスの人がノロノロと動きはじめた。
「市、また明日な」
「また明日……ジャッカル」
テニスバックを肩に掛けて挨拶してきたジャッカルに挨拶を返して、市は溜息をはいた。
(今日一日で沢山知り合いが出来たわ……久しぶりに沢山喋ったから疲れた…)
そのせいか、立ちくらみまですると机に手をついて深呼吸を一回して帰り支度を始めた。





少女はただ流される。これから起こる事に興味も持たずに。
願うのは友の幸せと揺るぎない世界。
それを守る為ならば少女は第五天魔王にも戻れるのだから。



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