バンダナとビデオ
 

「一氏さん……こんにちは…」
一氏が学校から帰宅する途中、目の前に市が現れた。
「…!何でおるねん!」
「今日、一氏さんの誕生日だったから……」
はい、プレゼントと俯き加減な市にラッピングされたプレゼントを渡された。
「おおきに。…今日は何で来たんや?」
「皆が手伝ってくれたの……」
『皆』が何か知っている一氏は何を言うでもなく普通に言葉を紡いだ。
「そか、まあ来てくれたんは嬉しいで?ただ、前持って言えや」
「うん、ごめんなさい…」
ワシャワシャと頭を撫で回すと一氏はふと考え込んだ。
「ちゅうか市、今日はどないすんねん。明日は学校やし、とんぼ返りとちゃうか?」
「平気よ…もう少しこっちにいたら帰るから……」
「せやったら小春達にも会うていかんか?今ならまだ帰る途中やろうしな」
思い付きを口にすると市は困ったように笑った。
「ううん…今日は一氏さんの誕生日だもの……一氏さんも疲れているでしょう…?」
「アホ、小春に会う口実が出来るんやから気にする必要はないわ」
ふん、と鼻を鳴らすと一氏は手に持ったままだった袋を見た。
「…此処で開けても構わんか?」
「ええ…構わないわ……」
市が頷いたのを確認すると一氏は袋を開けた。
中にはバンダナとお笑いのビデオだった。
「これ…」
「この間、中古のビデオショップに行ったら見付けたの……」
随分昔の物であるビデオは前々から一氏が欲しがっていたものであった。
希少価値も高く、販売数自体も多くはなかったビデオは近辺のビデオショップにはなく諦めかけていたもの。
大阪と違い神奈川ではそこまで浸透していた訳ではない芸人のビデオだったから今まで残っていたのだろう、と一氏はそこまで考えふと思った。
「(例え浸透していた訳ではないビデオやったとしても、販売数自体が低かったビデオがそう簡単に見付かる訳はない筈やな…)なあ、市」
「なあに…?」
首を傾げた市に問い掛けるのは不粋かと、一氏は「何でもないわ」とだけ言い携帯で小春に連絡をした。
「今から公園に来るって、小春から連絡来たで」
「うん…行こう……」
こくり、と頷き市と一氏は来た道をゆっくり戻り始めた。
その間、二人は無言で歩いた。
公園に着き、まだ小春が来てないのを確認すると二人でぶらんこに腰掛けた。
「…なあ、市。おおきにな、プレゼント」
一氏がとても小さな声で呟いた。
それが聞こえたか聞こえなかったのかは分からないが、一氏は市が小さく笑った気がした。
「あらあー市ちゃん、久しぶりやなあ」
暫く二人でぶらんこに座っていると私服姿の小春が小走りでやって来た。
可愛らしいその格好に一氏はきゅんとしつつ、市を促して立ち上がった。
「ほら、早う小春も交えて話そうや」
ニッと悪戯っぽく笑う一氏に市も笑顔を見せたのだった。



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