憧れの人
 

「織田先輩!おはよーございますっ」
「おはよう、赤也……」
俺には憧れの先輩がいる。
テニス部の先輩達は目標で、いつかぜってえ追い抜く対象。
俺が初めて織田先輩と会ったのは俺が幽霊みたくなってたあのとき。
でも、本当はもうちょっと前。
織田先輩は俺に気付いてはいなかったから、きっと知ってるのは俺だけ。
それがちょっとだけくすぐったい。
「織田先輩に朝から会えるなんて嬉しいっス!」
抱き着きながらにっこりと笑顔で思ったままを告げると織田先輩も控えめに笑ってくれる。
立海の中だときっとこうやって笑ってくれるのは親友だっていうジャッカル先輩と仁王先輩、それに俺くらいだと思う。
もしかしたら丸井先輩もそれに加わってるかもしんねえけど。
「赤也、そろそろ学校に行かないと遅刻になっちゃうわ………」
「…もーちょっと」
ぎゅうっと力を少しだけ強めると織田先輩は俺の頭を撫でてくれた。
最近寂しいんだ、俺だってもっと織田先輩と一緒に話したいのに。
俺が幽霊みたくなってたときはいつでも話せてたのに。
なんて若干面白くなかったりして。
「俺、織田先輩のこと大好きっス」
聞こえないように言って、俺は織田先輩から離れていつもみたく「遅刻する!」って叫んで織田先輩の手を握って走り出した。










「織田先輩…」
はあ、と溜息吐いて先輩達と弁当を食べる。
「お前ほんっと市のこと好きだよな」
バクバクと弁当+菓子パンを食べながら丸井先輩が言う。
…いつのまに織田先輩のこと名前呼びになったんだ?
俺は織田先輩から聞いてるから名前呼びは遠慮してる、けど…。
まあ俺が特別って考えりゃ我慢出来っけど…あー、何か腹立つ!
「そりゃあ俺の憧れの人っスから!」
「あーはいはい」
うわあ、聞いといてどうでもよさげ。
「へえ…赤也の憧れの人になっちゃったのか、何だか妬けるな」
面白そうに笑う幸村部長に何か嫌な予感しかしないけど無視しとこう。
織田先輩なら天然で切り抜けてくれる、てか幸村部長が織田先輩に何かするってことはないだろうし。
柳先輩は柳先輩でまたノートに何か書き込んでる。
あ、俺の弁当から何で肉取ってんスか仁王先輩!
「ちょっ、返してくださいよ俺の肉!」
「赤也が食わんからいらんのかと思うとった。ほれ、代わりにこれやるナリ」
「何で野菜寄越すんスか、肉と野菜だと絶対肉の方が上等じゃないっスか!」
「………プリ」
いやごまかされても。
「赤也、俺の生姜焼きをやるから我慢しろ」
「マジっスか!」
「ああマジだ」
柳先輩がくれた生姜焼きを食べながら俺は織田先輩のことを考えた。
やっぱ憧れ、なんだよなあ。
確かに恋愛感情の好きもあるんだけど、何かかっこいいっていうのもあるし。
どっちかっていうと憧れの方が比率が高い。
「まあ市も赤也のこと気に入ってるみたいだし、」
「へ?」
ジャッカル先輩の言葉に俺はキョトンとした。
「よく市と話すぜ?赤也のこと」
つまりそれって俺のこと気にかけてくれてるってこと?
…うっわぁ、何か照れる。
「これって…恋?」
「…………仁王先輩、勝手にアフレコするの止めてください」
一気に突き落とされた気分になった。
「あー…まあ、織田のことやけえ。一番この学校でアイツんこと理解しとるのは赤也、お前さんじゃろ」
事情を知ってる仁王先輩の言葉に、すぐさまテンション上がったけど。
「…つくづく単純じゃのう」
「そこが赤也の良いところじゃないか」
「まあ、の」



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