甘ったるい程の友愛を
 

「織田ー、何か食いモン持ってねえ?」
「持ってないわ……」
俺は丸井ブン太、高校二年生。
天才的なプレーをしてるんだぜ。
こいつは織田市。
ジャッカルの親友。
俺はジャッカルの親友で、織田もジャッカルの親友だから…要するに織田も俺の親友だよな?
まあ分かんねえけど。
織田はお菓子くれるから良いやつだと思う。
「うっしゃ、織田ー何か食いに行こうぜ」
「いい、けど…」
戸惑い気味の織田の腕を引っ張る。
織田って綺麗な顔立ちしてるし、勿体ねえよな。
いつも後ろに立って目立たないようにしてる感じ。
何つーか…あ、大和撫子って感じ?
うん、まあとにかく常に誰かの陰に隠れて支えてるような縁の下の力持ちみてえな。
よく分かんねえけどそんなイメージ。
「丸井さん…何を食べるの……?」
「ケーキに決まってんだろぃ?勿論ジャッカルの奢りで!」
「って俺かよ!」
うん、流石ジャッカル俺のパシリ。
ナイスタイミングだぜ。
あ、違ったパートナーだった。
まあ変わんねえよな。
うん、変わんねえよ。
「良いじゃんか、俺今月お菓子買い過ぎて金ねえんだよ」
「それはお前が悪いだろ!…ったく、しょうがねえ。今回だけだからな」
「っしゃ、サンキュー」
何だかんだ言ってジャッカルは俺に甘い。
いやむしろ詐欺にすぐ騙されるレベルのお人よしだ。
そんなジャッカルだから俺のパートナーなんか出来てんだと思うけど。
まあそんなことは置いとく。
とにかく織田とジャッカルとケーキ食いに行かねえと。
割引券はあっから安く済むし。
え、何で割引券があるかって?
あー…何かクラスの女子がくれた?
まあよくあること、むしろあり過ぎて引いてんな。
毎日毎日よく飽きねえよな、みてえな?
つうか何でそんなに割引券持ってんだよ。
「あ、そうだ。織田のこと、名前で呼んでいいか?織田だと仲良くねえ感じすっし」
「構わないわ…」
「じゃあ市!俺のことはブン太って名前で呼べよ?」
「それは無理よ……」
「だああっ何でだよ!」
きっぱりと断る市に俺は叫んだ。
「市、丸井さんのことあんまり知らないもの…」
いやそりゃそうだろぃ、あんま話したことねえし。
けど、なーんかな…。
「仲良くなりてえからって名前で呼び合いてえのは駄目なのかよ」
「…駄目、じゃないけど」
「じゃあ良いじゃんか」
「………分かったわ」
強引かもしんないけどこうでも言わねえと、きっと市は名前で呼ぼうとはしねえと思う。
「ブン太さん…ケーキって、何処のケーキ屋さんのケーキなの……?」
「んー?駅前のホテルのバイキング」
「バイキング……」
「あ、もしかして行ったことねえ?ホテルのケーキバイキングって美味いんだぜ」
俺の言葉に興味を引かれたのか市はすっかり行く気になったみてえだ。
「行きましょう…ジャッカルとブン太さん…」
「お、おう……」
ジャッカルが戸惑い気味に返事してっし。
まあ初めてかもしんねえよな、こんなキラキラした目をしたとこ見んのは。
「いっぱい食うぜ…俺が」
「俺か…ってブン太かよ!」
うん、ナイスツッコミだぜジャッカル!
流石俺のパートナーだろぃ。
キョトンとしている市はこのやり取りをまだ見たことねえんだな。
「ジャッカルとブン太さん…仲が良いのね……」
「そりゃあ、中学のときから一緒だしな」
「つーか、俺らは市とも仲良いつもりだし」
「そう、なの…?」
「あったりまえだろぃ!」
ぐしゃぐしゃと髪を掻き乱してやると市は髪を抑えた。
「ブン太さん……」
「良いじゃんか、てか市髪がすっげーサラサラ!」
ちょっと恨めしそうに俺を見る市に笑うと、市はキョトンとした。
「市の髪はそんなにサラサラじゃないと思うけど……」
「そんなことないと思うぜ、柳くらいサラサラだと俺は思う」
「そうそう、ジャッカルの言う通り」
ぷくう、とガムを膨らませながら言うと市は戸惑ったように髪に触った。
「……早く、ケーキ食べに行きましょう…?」
「…おう!」



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