紳士的discipline
 

「服装の、検査……?」
「うん、明日学校に来れないから誰か代わりにやってくれる人を探してて。…織田さん、お願い出来る?」
「ええ…違反のチェックだけよね?」
「そうそう、あとはチェック表を柳生君に渡せばいいから!」
それじゃあよろしくね、と言いながら同じクラスの風紀委員の女子は席へと戻って行った。
「ジャッカル、柳生さんって仁王さんとペアを組んでいる眼鏡を掛けた人よね…?」
「ん、ああ。柳生に何か用があるのか?」
「ええ…明日の服装検査を手伝うことになって……」
「あー…あれか。変なやつに絡まれねえようにな」
「うん…」
心配そうな目で市を見るジャッカルに、市は小さく頷いた。
























「スカートの丈が規定より三センチ短いわ……」
「三センチなら見逃してよ!」
「駄目…」
早朝から集まり、風紀委員は服装のチェックをしていた。
その中には勿論市の姿もあり、たった今スカートの丈が短い女子生徒を注意したところだった。
サラサラと書かれていく字は昔使われていた書体で、隣にいた女子が感嘆の声を上げる。
「織田さん字上手いね!」
「そうかしら……」
「うん、書道やってるの?」
「いいえ、やってないわ……」
「凄いねー、今度教えてよ」
そこで調度服装検査が終わり、話が途切れた。
「おや、貴女は…風紀委員ではなかった筈ですが」
「代理よ…」
「そうでしたか、お疲れ様です」
「ううん…柳生さんこそ、お疲れ様……」
チェック表を手渡すとき、柳生に聞かれた。
市からしてみれば、大したことではなかった風紀委員の仕事を委員ではない市に手伝わせてしまったことに申し訳なさそうに眉尻を下げた柳生に頭を振った。
「柳生さん、このくらいの仕事なら普通に出来るわ……」
「いえ、そうではないのですが…」
捉え方が何処かズレている市に、柳生は困ったように微笑んだ。
「……織田さん、でしたよね。赤也君がお世話になりました」
「…? 市は赤也をお世話してないわ……」
柳生の言葉をやんわりと否定して、市は柳生を見上げる。
「それに…市がやったことは赤也や仁王さんの手伝いだけよ……」
しっかりと伝えて市は頭を小さく下げて教室へと歩き出す。
柳生はただそれを呆然とした様子ど見送った。

















「柳生、織田は面白いやつじゃろ?」
いつからいたのか、柳生へとニヤニヤした笑みを浮かべながら話し掛ける仁王。
「そう、ですね…まさか私の目をしっかり見てあのように言うとは思いませんでした」
自らの周りにいる女子達を思い浮かべながら柳生は返事を返した。
もし他の女子だったら、と考えると否定はしても期待に満ち溢れた目を隠しきれない者ばかりの筈。
伊達に4年以上詐欺師とペアを組んで来た訳ではない柳生にはすぐに察しが着くことだった。
けれど市の目は、柳生に向いていながらも柳生のことなど見ていなかった。
ただ聞かれたことに答えただけ、という態度が新鮮だったのだ。
「…次にお会いしたときには、キチンとお話したいですね」
「会いに行けばええじゃろうに、妙なところで律義やのう」
「用もないのに話し掛けられないでしょう?」
「固いやつナリ」
柳生の目は市が去って行った方に向けられていた。
「織田さん、ですか…彼女なら」
きっとよき友人になれる。
あとの言葉は音にならずに柳生の中に仕舞われた。



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