まるで彼岸花のような
 

「む、」
「こんにちは……」
「ああ、」
図書館で偶然、市と真田は出くわした。
「…………」
「…………」
お互いがお互い、自分から話すような性格ではない為沈黙を貫き続けると、真田が暫くしてから口を開いた。
「…その、何か用があるのか?」
「本を、読みに……」
「そ、そうか…」
「ええ…」
「……(図書館に来る理由など他にないだろうが!たるんどるぞ俺!)その、だな」
明らかに話題の選択をミスった真田は何とか話を繋げようとした。
「何かお勧めの本はあるのか?」
「お勧め…市が気に入ってる本でいいなら……」
「ああ、それで構わん」
真田が了承をすると、市は歩き始めた。
「これよ……」
「うむ」
市から本を受け取り、真田は迷った末に告げた。
「…その、よければなのだが…俺のお勧めの本を読んでみてはもらえないか…?」
「真田さんの、お勧めの本を…?」
きょとんとした顔で市は聞いた。
「う、うむ……嫌ならば構わないのだが」
「………、お願いするわ…」
若干考え込んだあと、市は頷いた。
「うむ、ならばこちらの棚にある本なのだが…」
案内するように真田が話し始め、本を手に取る。
「あ…このシリーズなら前から気になっていたの……」
「む、そうだったのか」
「うん…」
周りにはいない喋り方をする市に不思議な感覚に陥りながら、真田は話を続ける。
「真田さんは古風な喋り方をするのね……」
「そうだろうか、」
「ええ…何だか――様みたい……」
「すまないが、よく聞き取れなかったのだが」
「…? 市、何か言ったかしら……」
不思議そうに口元に手をやりながら市は尋ねた。
「……いや、何でもない」
無意識だったらしいと分かれば真田は特に問い詰めるでもなく、市の頭にポンと軽く手を置いた。
「何か付いていた……?」
「いや、そうではない。つい手が動いてしまってな。……すまなかった」
「変な真田さん…」
控えめに笑んだ市に驚きながら、真田は常とは違う優しい笑みを浮かべたのだった。





















「あ、弦一郎。弦一郎もこんな本読むんだ」
「…あ、いやそれはだな……」
「ほう、弦一郎がこのような本を読んでいるとはな」
「いや、これは」
「珍しい本を読んでんな、真田」
「ピヨッ」
「真田君、誰かから勧められたのですか?」
「ああ、織田から勧められて」
そう言った真田の手にある本は小さな詩集だった。



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