閉幕たる序章
 

『すんませんっ仁王先輩!』
市の後ろに隠れる切原。
「ほー…柳生がよくて何で俺は駄目か言いんしゃい」
『目!目が笑ってないっスよ仁王先輩!』
ぎゃあぎゃあ騒ぐ二人を無視して市は赤也の体へと近づいた。
「………――――」
「何か言ったか、市?」
「ううん…」
ジャッカルの問い掛けに小さく首を横に振り、市は座り込む。
「ねえ、早くしないと部活の時間がなくなるんだけど?」
早くしろよ、といった感じの幸村が声を掛けると仁王と切原は静かになった。
『織田先輩、どうするんスか?』
「………無理矢理、はどうかしら…」
『無理矢理って…具体的には何をするんスか』
「引きずり出して、押し込む……?」
恐る恐る尋ねた切原の言葉にさらり、と返す市。
『何かあまり良い予感はしないんスけど』
「じゃあ織田さん、それで頼んだよ」
『幸村部長!?』
「ええ……」
『織田先輩まで…!』
切原の声を無視して進む話に切原は複雑な気持ちになった。
「それじゃあ…………」
市の足元から巨大な黒い手が現れて切原の体の方へと手を伸ばす。
「……何かえげつないのう」
見えてない他のレギュラー達は仁王の言葉を聞いて何とも言えない気持ちになった。
「じゃあ……行くわ…」
両腕を前に持っていっていた市の雰囲気が変わる。
いつもの何処か俗世離れした雰囲気に拍車が掛かり、さらに遠い存在に感じるようになる。
「………っ!」
左手で何かを掴むような動作をしながら右手を切原の方へと動かし切原の体の方へと移動させる。
『っわ!』
引っ張られるように切原は体へと吸い寄せられて行く。
そして切原が体にぶつかる瞬間に左手をぐいっと後ろに引っ張った。
「……っ、」
市はぐったりと苦しそうに息をしながら切原を見つめた。
「……ん、あれ…?」
眩しそうに目を開いた切原はバッと掌を見つめた。
「透明じゃ、ない…ってことは!」
市を見て切原は笑いながら涙を零した。
「俺っ…やっと戻れたんスね!」
その言葉に、市は微かに微笑みレギュラー達は切原に嬉しそうに声を掛けながら近づいたのだった。

















「織田先輩、色々ありがとうございました!」
「ううん…気にしないで……市が、勝手にやったことだから……」
暫くして、切原が礼を言うと市は小さく首を横に振りながら言った。
「そうだとしても、俺が織田先輩に助けてもらったのには変わりないっスから!」
笑顔で言う切原に市も釣られて笑うのだった。



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