初詣
 

「あけましておめでとうございます、織田先輩!」
「おめでとう、切原さん……」
なんやかんやで赤也とはあれからも交流があった市。
今日は二人で初詣に来ていた。
「何だか楽しみっスね、織田先輩」
「そうね…でも、部活の人達とは行かなくて良かったの?」
「あはは……実は年明けてすぐに先輩達とは来てるんスよ」
だから二度詣っスね、と笑い切原は歩く。
「そういや、俺が戻ってから初めて二人でいますね」
「切原さん、部活があったから……」
ほのぼのとした雰囲気を出しながら、二人は歩く。
「くしゅっ……」
「織田先輩、寒いんスか?」
「今日は周りで霊が騒いでて…」
余計寒い空気を出してるのと小さく震えながら言う市に手を伸ばして手を繋ぐ切原。
「これなら少しは寒くないっスよね」
「うん………」
混んでいる神社の境内を手を繋いだまま歩く二人。
「…年明け早々お熱いのう、お二人さん」
「げ、仁王先輩…」
「失礼じゃな、赤也」
からかうような口調でいつのまにか傍に来ていた仁王に嫌そうな顔をした切原。
ポヤッとした顔をして二人を見ている市に断りを入れて、切原は仁王を連れて端に行った。
「何でいるんスか、仁王先輩!」
「そりゃあ決まっとるじゃろう、赤也のことやから織田誘ってもう一回初詣行くと思ったんでな」
「…それで、な・ん・でいるんスか」
「プリッ」
コソコソ話している二人を尻目に、市は周りの霊のせいで震えていた。
「なあなあ、こんなとこで一人で何やってんの?」
「良かったら俺らとお茶して温まらない?」
フルフル震えている市に近寄ってきた不良二人。
温まらないの一言に反応した市は小さく頷いた。
「それじゃ行こーぜ」
「あっちに良い店があるんだよねー」
ぐいぐい引っ張る不良組に従い連れられる市。
「ねえ、彼女に何してるのかな」
凛とした声を響かせ、幸村が歩いて来た。
「…? 何だよ、てめえ」
「彼女の連れだよ」
穏やかな笑みを浮かべて、幸村は言った。
「もう一人女がいたとはなあ…一緒に行こうぜ」
「残念だけど、俺は男だよ」
そう言い、幸村は不良組から市を引き離した。
「織田さん、寒かったからって安易に頷いてはいけないよ」
「織田先輩!………と、幸村部長?」
「何じゃ、幸村も来とったんか」
「丁度通り掛かってね」
不良組は今のうちにと逃げ出した。
「あ、おい…待てよ!」
「大丈夫だよ、赤也。今の奴らにはきっちりお礼しておいたからね」
「へ?お礼って…」
「ん?ああ、ちょっと聴覚奪っといただけだから」
「そ、そっスか…」
若干引き気味の切原を無視して、幸村は言った。
「三人共、これから神社に行くんだ?」
「そっス、」
「ええ…」
「そういう幸村も行くんじゃろ?」
「まあね」
「ならこの後4人でどっか寄って暖まりましょうよ!」
「赤也にしては良いこと言うの」
「赤也にしてはは余計っスよ…」
うう、とジト目で切原は睨んだ。
「ふふ、俺は構わないよ。それじゃあ早く行って来ようか。織田さんも寒そうだからね」
「わっ、大丈夫なんスか織田先輩!」
「平気……」
顔が青くなってきている市に慌てて切原が早く行きましょう、と言い。
4人で年明け早々ドタバタしたのだった。



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