ぼくらはいつも見えない何かで繋がっている
 

「久しぶりね……一氏さん、小春さん」
「ホンマ久々やなぁ、ちゃんと食っとるんか?」
「そうよ、市ちゃん。ただでさえ細いんに…食べなきゃあかんよ?」
「うん……」
天下の台所、大阪。
冬休みを利用して市は友人である二人の元へやって来ていた。
「にしてもちょっとびっくりしたわぁ、市ちゃん」
「ホンマや、いきなり来たら会えるか分からんやろ」
「ちょっと向こうで立て込んでて…」
「立て込んでるって…何か事件に巻き込まれたの市ちゃん!?」
怪我とかあらへん?と心配する小春に平気だとアピールする市。
「それより…此処、寒いから移動しよう……」
「そやったわ、ごめんなぁ。市ちゃんと会えたのが嬉しくて寒さを忘れとった」
「う、浮気か!死なすど!」
「やあねユウ君。市ちゃんは親友よ」
「すんません先輩らキモいっスわ」
「あら、ひかるん」
ぎゃあぎゃあ騒いでいると、後ろから話し掛けられた。
ムスッとした顔つきに両耳合わせて5つのピアスを付けた男。
「どないしたん、こないなところで」
「こっちの台詞っスよ、何往来でいちゃついとるんですか」
「俺と小春はいつでもラブラブなんやからしゃーないんや!」
「ユウ君、それはないわー」
「! 小春うぅぅ!?」
さらりと否定した小春に一氏はショックを受けた顔をした。
「…………、この人は誰っスか?」
そんな二人を見てるのが嫌になったのか、市を指差して話しを変えた。
「せやった、ごめんなぁ市ちゃん」
「ううん…」
「ひかるん、この子は織田市ちゃん。うちとユウ君の親友や」
「小春先輩はともかく、一氏先輩も……」
「なんや、俺に友達がいるんがそんなに意外なんか」
その言葉を聞き咎めたのか、半ば睨みつけるように一氏は言った。
「ちゃいますわ、ただ一氏先輩は女の人が苦手やないですか」
「財前…お前こそ、女とあんまり話さないやないか」
「はいはい、そこまでやユウ君」
「小春!」
「まずは市ちゃんにひかるんの事、紹介せなあかんやろ?」
仲裁に入った小春のおかげで、市は財前の名前を聞いた。
「財前さん、よろしくね……」
「しゃーないからよろしくしたりますわ」
やれやれといった態度で財前は頷いた。
「にしても、ひかるんがこっちに来るなんて珍しいわぁ」
「……今、謙也さんから逃げてるんスよ」
嫌そうな顔をしながら財前は言った。
「あら、謙也君に?そら大変やね」
「どーせ謙也のことやから『光ー、今から一緒に遊びに行かんか?』とか言って追いかけまわしとるんやろ」
声を真似ながら一氏が言う。
「…ま、そろそろ諦めたと思いますけど」
「いーや分からんで?謙也君、なかなかひかるんに対して頑固やからなぁ」
「勘弁してほしいっスわ」
盛り上がる3人を尻目に、市は先程から凄い速さで行ったり来たりをしている男を見ていた。
気のせいか、「光ー、光ー」と叫んでいるようだ。
「どないしたんスか、織田先輩」
「…あの人、」
「………げっ、謙也さんじゃないスか」
指差した先に見つけた彼に最悪やと零し、くるりと背を向けて走り出す。
まだ向こうは気付いてないのか、こちらを向きもしない。
「あら、ひかるん行ってもうたわ」
「これで、俺と小春もいちゃつけ」
「そんなことより!」
遮った小春は笑顔で言った。
「今日はめいいっぱい遊ぼうや、せっかく市ちゃんもおるんやし!」
「うん………」
頷き、3人で歩き出す。
沢山遊び回った後、新幹線で帰った市は帰ってすぐに携帯にメールが来ているのに気がついた。
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財前ですが

From
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登録頼んますわ
***********@***.jp


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本日1番の収穫は財前のアドレスだったと市は思う。
返事を返して、市は寝る為にベッドに潜り込んだ。
明日は学校に行かなくてはならない。
彼女の高校1年生の冬の出来事。



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