月曜日


困ったことになった。
「…お前さ、何で此処にいるの?」
「あ、帰ってきた」
「あ、帰ってきた。…じゃねーよ!」
仕事から帰ってきたら高校来の親友である崎本がいた。
ご丁寧に俺の住むアパートの部屋の前で大きなダンボールの中に入って待っていた。
…ご近所さんになんて言い訳すればいいんだよ、これ。
「しかも『拾ってください。』が上手くて腹が立つ…!」
「ははは」
俺の言葉を笑い飛ばし、ダンボールから立ち上がる。
「…で?」
「何?」
「いや何じゃなくて。もう大分遅い時間なのにどうしたんだよ」
そうだ、もう真夜中といっても可笑しくないくらい遅い時間なんだ。
もう終電だってないし、下に車はなかった筈。
つか、車あったら普通に気付く。
「あー…ごめん花村」
「は?何が?」
「泊めて欲しい」
「…いやいいけど。下に車ないし泊めようと思ってたしさ」
とりあえず此処じゃ迷惑だからとドアを開けて二人して中に入る。
部屋の中は男二人でいると若干窮屈に感じられたけど仕方が無い。
「…んで?崎本が車もなしに家に来るなんて珍しいな。何かあったのか?」
麦茶をコップに入れて、崎本の前に置く。
「…んだ」
「へ?」
「家を追い出された」
「……はあ!?」
え、どういうこと。
「ちょ、ちょっと待てよ…えーと、今さ、家を追い出された、って言わなかったか?」
「言ったな」
冷静に頷く崎本。
…いやいやこんなときまで冷静って。
「確かお前のとこ、一軒家だったよな?それに別に借家でもなかったし…」
「………」
「…あれ、相棒?」
久々に使う呼び方に反応せずに崎本は視線を逸らしている。
「…の、ノーコメントで」
言いたくないのか黙秘された。
マジで何があったんだ…。
「とにかく諸々の事情で一週間、家に帰れないんだ」
「お、おう…」
「今日はもう遅いし、ホテルも探せない。花村、朝一に出て行くから一晩頼む」
「ちょ、朝一って…」
一番に頼ってくれたのはすっげえ嬉しいけど、朝一に出てくなんて。
「いいんだ、俺は仕事なら何処かネカフェかホテル借りられればそこで出来るし。それに、流石にこれ以上は迷惑も掛けられないしな。いざとなったらラブホだろうが何だろうが寝られればそれで…」
「崎本!」
崎本のこの目は本気だ。
勇気が豪傑のコイツならラブホだろうがなんだろうが普通に入ってく。
「何だ花村」
「別に迷惑じゃねえからさ。一週間、だよな?だったらウチにいろよ」
「…いいのか?」
「おう。つーか駄目だったら最初から言ってねえっての」
「ありがとう、花村」
おーおー、相変わらずの男前っぷりだな。
崎本の笑顔にそんな感想を持ちながら俺は立ち上がる。
「…何か食うか?」
「いや、腹減ってないからいいよ」
「そっか」
…あれ、そういや崎本っていつからいたんだ?
あんなダンボール用意出来るくらいだから随分前からいたんだろうけど。
この辺、ダンボールくれてる店遠いから時間ねえと無理だし…。
「…ちょっと相棒、手ぇ出せ」
「あ、その呼び方久しぶりだな」
「さっきも呼んでたけどな」
「…そうだっけ」
崎本の手に触れる。
「冷てっ」
コイツ本当に何時間外にいたんだよ。
「冷たい?」
「氷みてえにな。崎本、お前いつから外にいた?」
「ノーコメントで−−−」
「駄目だ、言え」
「………確か日が沈む少し前だった気が」
その言葉に俺は眩暈がした。
そりゃ冷えるわ。
相変わらず無頓着…いや、むしろ悪化してる。
「せめて何か羽織れよ」
「あ、その発想はなかった」
「とりあえず風呂沸かすから入って来い」

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