Various places are traveled.

「あれ、あれって…」
泉李はふとガソリンスタンドに立つ彼に気が付いた。
雨で無ければ遭遇することはないと思っていた「らっしゃーせー」の店員である。
原作の人物と妙なエンカウントをしながらも、視線を逸らして商店街内へと足を踏み入れた。
「へえ、こんな感じなんだ…お、自動販売機発見」
リボンシトロンを買い占め、店を回る。
途中、ミツオやらを見掛けたが全てスルーしている。
下手に絡んで変な因縁を付けられたら堪らない。
「時期的にそろそろだよねえ…」
ガサ、と買い物袋が音を立てる。
中には今とりあえず買える範囲のアイテムが入っている。
ちなみにタルタロスを登る最中に荒稼ぎしたので数ヶ月は豪遊出来るような状態だ。
またタルタロスに行ってお金を貯めようかと思案しつつ泉李は商店街をうろつく。
「あ、そういえば装備品見とかないと」
だいだら.に足を向けて色々と確認する。
「らっしゃい、うちのアートを見に来たのかい?」
「親父さん、何かお勧めの防具ってある?こう…隠密行動出来るような」
泉李がそう尋ねるとだいだらの親父さんは一旦考え込んだ。
「そうだな…ああ、昔作ったのにこんなやつがあったな」
ちょいと待ってな、と奥に引っ込む親父さんを見送り、泉李は店内に飾られている武器や防具、アクセサリーなどを見ている。
「ほらよ、気にいるかは分からねえがこれなんかどうだ?」
戻って来た親父さんがカウンターにドサリと黒いものを置いた。
一度広げてみるとそれはゴツイ黒のレザーコートだった。
デザインはムシ○タの特管を思わせるものだ。
「生地は丈夫で動きの邪魔をしない自慢の一品だ。恐らく、俺のアートの中じゃ1、2を争う」
一度着て軽く動いてみると確かに動きの邪魔をしない。
「…これって、いくつか同じものがありますか?」
「いや、これだけだな」
親父さんの言葉に泉李は考え込んだ。
効果は魅力的だけど格好が完璧に怪しい人になる。
「……」
沈黙していると親父さんは苦笑混じりに付け加えた。
「状態異常回避付きだよ」
「これください」
即決だった。
(状態異常回避とかそれなんていい装備。これでゲーム内では没ボイスになったのもきっとあるからゆっくり聞ける…勝つる!)
欲望に忠実な金代泉李、高校二年(笑)生。
今まさに世間体と欲望を天秤に掛けて欲望を取った瞬間だった。
「ベスさんから渡されたベルベット仕様の服は最早原型を留めてなかったし…必要だったんだよ、うん」
お金を払って、店から出て来てそう呟く泉李。
正直言って変な人状態である。
そのまま泉李は移動する。
やることは山程あって、色々移動しまくる。
一度荷物を置いて、今度はジュネスにやって来た。
『エブリデイ・ヤングライフ、ジュネス!』
あのお馴染みのBGMが流れ出す。
鼻歌交じりに泉李は食品売り場で食材を吟味する。
特にエンカウントすることもなく買い物終了。
少しだけテレビ売り場を見ることになった。
「おおう、マジで人がいない…」
感嘆の声を洩らす泉李。
辺りには店員の姿もなく、原作で千枝が泣いていても目に付かない訳である。
「えーと、ステミキとマイク探さなきゃなー…」
テレビ売り場を早々に後にしてさっさと目的の物を買いに走ることにした。
何故か今まで使っていたマイクもステミキもショートしていて全く使い物にならないのだ。
機能の良さそうなものを購入し、方向転換をすると。
今までいなかった花村陽介の姿があった。
「……」
「………」
何故か走る沈黙。
「…あ、お買い上げありがとうございます」
最初に我に帰ったらしい花村がそう言ったのを聞いて、泉李は何事もなかったかのように、けれど早歩きでジュネスを出た。
(まさかのエンカウントおおおぉ!)

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