#02

「この家で最初に過ごす夜が雨とかこれなんてフラグ」
泉李は0時になるのをリビングで待っていた。
まだ主人公は来ていないので勿論第一の事件も起きていない。
「確か昼間にニュースで山野アナの報道はしてたし…うん、理論上は映る!…筈」
これで映らなかったら色々と物悲しい。
それだったらによ動的なのを探して見てるしとぼんやり考えながら、泉李は時計をチラチラと見る。
あと数分で0時になる。
ソファに座り、テレビの画面を見つめる。
本当に映るのか。
映った場合、どうするべきなのか。
(出来れば誰にも死んで欲しくない、けど…天城屋旅館は多分封鎖されるよね、うん。忍び込むのもいいけど、捕まったら本当に困る。いやでも…二件目は?)
泉李は一つの可能性に気が付く。
(例えば第一発見者が小西早紀じゃなかったら?そうだったとしても、一緒に誰かが居たら?そうすれば最悪の事態だけでも…)
ない頭を必死にフル回転させて考え込む。
ブツッ…。
そこでテレビの電源が勝手に入った。
「!」
泉李は食い入るように見つめた。
ボンヤリと人影が見える。
女性だ、髪は…ショートヘア。
本当に山野アナなのかはまだ判断が付かない、けれどやはり【予告】はあったのだ。
「……そういえば、私ってテレビに入れるの?入れたら確実に大変なことになるじゃん」
確認する気にはなれなかった。
流石に明日の昼間とかにしようと先延ばしにして、泉李は最初に目覚めた部屋へと足を運ぶ。
「………」
「戻っていらっしゃいましたね」
ベッドに腰掛けてこちらを見てくる女性、エリザベス。
ペルソナ3のときにイゴールの側でイゴールと共にベルベットルームで主人公を導いていた存在である。
「初めまして、私はエリザベスと言います。ベス、とお呼びください」
上品に頭を下げたエリザベス。
マナーも完璧である。
「えーと…エリザベスさ」
「ベスでございます」
「…ベスさん、何か用事でも?」
「それもありますが、まずはご挨拶をと。姉から貴女がベルベットルームへと訪れたことを聞き、こちらに足を運ばせてもらった次第です」
口元に笑みを称えながらエリザベスが話す。
その様子に気圧されながら、泉李は口を開いた。
「でも…何で私に挨拶を?」
「それは、お頼みしたいことに関わりがございます」
「頼みたいこと…?」
「左様です。失礼ですが、このお部屋…少々見させてもらいました」
「何ですとー!?」
「私の読み通り、貴女様はこちらの事情を知っていらしているみたいですね」
「あれ、無視!?」
さらりと受け流し、エリザベスは話を進める。
「私が貴女様に頼みたいと思ったことの答えを見つけさせていただきました」
スッと立ち上がり、泉李の机の上に置いてあった少し角が丸くなったノートを手に取った。
「…それ、って」
「貴女様がお書きになったのですよね?この考察を」
ノートの表紙には『ペルソナ3考察』と書かれている。
それは、泉李が暇で仕方がなかったときに考えたものだ。
其故に泉李はこのノートを『厨二病ノート』と読んでいた。
全てに理由を付けて正当化していて筋は通しているのだが、何しろ考え方がぶっ飛んでいるのだ。
下手すれば根本からストーリーを変えてしまったり、終幕を変える方法。
そんなものが書き連ねられている。
まさに黒歴史。
「ぎゃー!ちょ、それ何処から…!」
「こちらに書かれたこと…本当に成し得るとお思いでございますか?」
「!」
エリザベスの至って真剣な表情に泉李は口を閉じた。
「…それは、あんまりにも結末が悲しかったから書いたものであって、それを実際に実行したからといって成功する訳ではない、ですけど」
「可能性はあるのでしょう?」
何がエリザベスをそんなに駆り立てるのか…それは泉李には分からない。
泉李が憶測で考えるのはともかく、本人の考えなんて分かる訳もない。
「私は…私のお客人であった、彼を救いたいのでございます。しかし、私はお客人を導く存在であり、試練を与える存在でもあるのです。私は彼を助ける為に文字通り身一つで助けに行きましょう。けれど、最後に彼を助けるのは私には出来ないのです」
「ベスさん…」
「お願いします、彼を助けてください」
「…私は、何も出来ないと思います」
「いえ、貴女様だからこそ出来る方法もある筈でございます」
エリザベスはそう言うと後ろに隠していたのであろう、箱を取り出した。
「これをどうぞ、お持ちください」
「これは…」
エリザベスの取り出した箱を開け、泉李は唖然とした。
「彼の、召喚器です」
「これは確かアイギスが持っていたものなんじゃ…」
「拝借いたしました。…一時的に貴女様がお使いになられてください」
「……」
泉李は迷う様にして手に取った。
「本日はもう遅いのでまた明日、午後2時過ぎにお邪魔いたします」
それではお休みなさいませ、そう言い残し、エリザベスは部屋から出て行った。
「…え、何処から来たの?」
そんな間抜けな声を洩らした。

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