#09

学校初日。
「まあ予想はしてましたけども!」
皆さんこんにちは、おはようございます。
泉李です。
制服があったから着て八十神高校に来てみたら編入させられました。
二年生に。
こんなの可笑しいよ…。
だって私三ね…何でもないよ、うん。
言ったら大切な何かを失う気がするんだ…!
あ、お隣には有里君もいるよ。
何か連れて来たら転校生扱いになってた。
…誰だ手続きしたの。
それが私の左隣、右隣には。
「………」
番長がいらっしゃった。
ガン見してらっしゃる、ガン見してらっしゃるよ!
「…ええと、どうもハジメマシテ」
「……あ、初めまして」
ぎこちなく挨拶をすると、番長は少し間を置いてから返してくれた。
…もしかしてステータス初期状態?
初期番長?
一週目ですね分かります。
「金代泉李です。こっちが有里湊ね」
「鳴上悠です」
お互い自己紹介しつつ担任待ちをする。
とりあえずモロキンでないことは確かだからなあ…。
だって鳴上君とクラス違うし。
一体誰なんだろうね、担任。
そしてやってきたのはモロキンとカーメンだった。
「……」
やだ…濃い、この面子濃い。
軽く説明を受けてそれぞれの教室に向かう。
私と有里君は二年一組、鳴上君は二年二組へと分かれる。
「今日から新学期じゃ、皆の者も一つ進級してとうとう先輩になったのじゃ」
カーメン…祖父江先生が最初に挨拶をする。
「あまり硬いことは言わぬが…節度は守るようにの。さて、妾の隣に立つ二人を見て、お気づきの者もおることじゃろう。このクラスに転入生じゃ。隣の二組は一人じゃが…こちらは二人じゃ。さあ、二人とも自己紹介を」
「皆さん初めまして。金代泉李です、これからよろしくお願いします」
「…有里湊」
最初が肝心だから普通に挨拶してみた。
でも有里君の自己紹介に空気が凍るのを感じた。
………。
此処は一つ合いの手を入れるしかっ!
「…し、シクヨロ☆」
空気を変える為に声を丸井君の声に声色チェンジして話した。
「………」
「…今、声変わって」
「え、何今の…」
「凄くね?」
ザワザワとざわめき始める教室内に一息吐いた。
…よ、よかったあああ!
これで流れたよね、あの空気は!
「金代氏が素晴らしい特技を披露してくれたのう。まだまだ聞きたいところではあるのじゃが、もうそろそろSHも終わりじゃ。二人とも空いてる席に着くのじゃ」
女子は右ですね分かります。
空いてる右側の席は…ん?
気のせいかな、私の目にはお隣さんが一条君に見えるんだ…。
「金代さん、よろしく。何か分からないことがあったら何でも聞いていいからさ」
やだ…何この子超いい子…!
いや知ってますけども。
「あ、じゃあ可愛い女の子を教えてくだしあ」
「可愛い女の子って…普通はかっこいい男子じゃねえの?」
何か面白いな、金代さん。
なんて言われ、なかなか好印象だったのが伺えた。
…計画通り!
ふっ、コミュの方々(まあ学校の方々)とは積極的に絡む報告で行こうと思うんだ、主に番長の恋愛模様の観察の為に。
え、最低?
うん知ってる。
でもね、番長が可愛い女の子と恋人になるか、それとも男子と恋人になるか、それって重要だと思うんだ…!
それによって私の今後の方針が決まるから。
うん、嘘です。
関わりません、勝つまでは。
確かに小西先輩は助けたりしたいけどそれとこれとは別なのよー…。
特捜メンバーとは完二君はともかく他メンバーにはなるべく関わらない、関わったら負けだと思うことにした。
…けど何かすぐにその決意が無駄になる気はしてました。
「…あ、やばい」
そろそろ早退しないと小西先輩捕まえらんないや。
「あれ、どうかした?」
「あー…うん。ちょっと今日は予定があって帰らないとマズイんだ…」
「マジで?」
「うん、あーあ…何でよりによって転入初日に…」
「何か大変そうだな…そしたら、今日はこのあとは校長の話聞くだけだろうし、適当に誤魔化しておいてやるから」
同情混じりの視線を貰いつつ、一条君を味方につけた。
有里君は…あ、寝てるや。
お隣は…うん、海老原さんだね。
てことは何か大変そうだね、頑張れ。
え、何が大変かって?
海老原さんじゃなくてその取り巻き?
海老原さん自身は興味ないだろうけど、クラスの男子の目が据わってるよ…。
けど有里君残していくのは心配だし…。
………。
「ええと…お隣さん」
「ん?あ、ワリ。自己紹介してなかったな。俺、一条康。よろしくな」
「一条君ね、オケオケ。…そしたらさ、頼みがあるんだけど…いい?」
「おう」
「有里君の事お願いしちゃってもいいかな?」
今は君しかいないんだ、本当お願いしますはい。

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