そして僕らはアカルイミライとやらへのチケットを破り捨てた

ぐるぐる、ぐるぐる。
目の前が周り続ける。
ええと、…今は何処?
いつなんだろう。
泉李は考える。
ゆっくりでいい、確実に思い出さないと…取り返しがつかなくなる。
『コイツを落とす』
「……!」
思い出した。
視線は彷徨う。
あのとき、何が起きた?
私はあのときに…そうだ、湊は?
いなか、った?
え、ちょっと待って。
何で?
生田目をテレビに落とすか落とさないかって話になったとき、私は何故か発言すら出来なかった。
『させないよ、異分子の人の子』
瞬きさえも出来ず、固まったようにまるで透明な一枚の板を挟んだ場所で物事が進展していく感覚。
お願い、動け、このまま進んだら取り返しが…!
そうして。
最終判断を下したのは。
『…生田目を、テレビに落とす』
リーダーである鳴上で。
その目に宿る暗い光に、もう後戻りは出来ないと悟ってしまった。
「…それで、私は気絶…か」
情けない。
そうならない為に私は介入することを決めたというのに。
「…そうだ、テレビ」
起き上がり、テレビを付ける。
テレビからは生田目が死体となって発見されたというニュースが流れていて、本当に駄目なんだと分かってしまった。
「湊も、いないし…あ、はは。本当、何で…」
ぽっかり空いたような、いいようのない空虚感。
数日、私はどう過ごしてきたのかが分からない。
ふと、思いついて携帯を開けばそこに着信履歴が並んでいる。
一条君や長瀬君、あいちゃん、小西君…見事に特捜メンバー以外で仲が良かった学校の人達だけだった。
否、ただ一人だけ連絡を入れている人がいた。
「完二君…」
折り返して完二君に連絡を掛けた。
暫くコール音が鳴り、完二君が電話に出た。
「…金代先輩、ですか?」
そのいつもとは違う弱々しい声色に、私は一つ覚悟した。
「…うん、どうかした?」
「や、その…連絡着かねえし、学校でも姿見なかったんで」
心配して連絡を入れてくれたらしい完二君に少しだけ心を和ませた。
「他の皆はどうしてる?」
「………」
「完二君?」
「…っスよ」
小さ過ぎて聞こえない。
「ごめん、もう一度」
「…っ全員、目も合わせねえし、話もしねえっ!」
「……!」
予想はしていたことではあったけれど、実際に聞くとそれは凄まじい破壊力を持っていた。
あんなに仲がよかったのに。
「………ねえ完二君」
重い沈黙を重ね、私はとうとう口を開いた。
「もしも、さ。やり直せるならどうしたい?」
「どうしたい、ってそりゃあ…」
頭を使うってことよりも行動することに重きを置いている完二君が考え込む。
そして、その末に出した答えに私は、一言「分かった」と答えて通話を切った。
今の特捜メンバーは呼び掛けても動こうとはしないだろう。
菜々子ちゃんも、恐らくは…。
「…っだー!ヤメヤメ。私ってば本当最近ネガティバー!…腹、括って《やり直し》しますか」
一応の装備を整えて、私は家を飛び出した。
全ての始まりの元へと。
だって、私はそれ以外に方法を知らないんだ。
いればいいけど、いなかったらどうしよう。
過ぎ去る風景に、見知った人がちらほら見える。
特捜のメンバーとも何人かとすれ違った。
けど、誰も目を合わせようとはしなかった。
そうして、私は立ち止まる。
目の前にいるあの人に、私はこう声を掛ける。
「ゲームをしませんか」

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