#06

「…っ!」
ガバ、と起き上がる。
「此処は…私の、部屋?」
周りが見ればこちらでの自室だった。
「私、生きてるんだ…」
「起きましたか」
「うわ、ベスさん!?」
「おはようございます、本日は4月に入る前日です」
いきなりドアを開けてエリザベスが入ってくる。
「へ、へえ…そっか…ってもう4月?!」
「左様でございますが」
サラリと答え手に持っていた土鍋を差し出す。
「………これは?」
「勝手ながら私が作りました」
シンプルなお粥だった。
「2日程寝ていたので無理には食べないでください」
「ベスさん…」
感激しながら一口、レンゲで掬って食べる。
「………!」
塩が濃過ぎて噎せた。
「初めて料理なるものをしたのですが…」
「…今度一緒に作ろうか」
妥協案を出し、水を飲みながら全部食べ切った泉李。
そして気になっていたことを尋ねた。
「どうなったの?」
「……連れて来ることは出来ました」
エリザベスが暫く沈黙したあとにそう口にした。
「連れて来ることは…って?」
「食事をしようとしません」
「きっぱりと言ったね!」
言いづらそうにしていた様子から一転したエリザベスに泉李が叫ぶ。
「てか、食べない…?」
「はい」
「……死んじゃうじゃんか」
「そうですね」
平坦に言うエリザベスに泉李は溜息を吐いた。
「ベスさん、」
「私はお客人をあの場所から連れ出せればそれで良かったのです」
そう泉李の言葉を遮り、エリザベスは部屋を出て行った。
「ベスさん…無茶しやがって」
ふ、と笑い泉李は着替えて外に出る準備を始める。
「と、その前に…」
冷蔵庫の中を漁り、中身を確認する。
「あー…やっぱり殆ど空だった」
財布を鞄に仕舞いながらボヤき、適当に歩き始める。
「エブリデイヤングライフジュネスー…っと」
歌いながら歩く泉李。
「貴方のーテレビにー時価ネット田中ーみっんっなっの欲のー友」
暫く歩くと河原に出た。
「…あれ、逆方向?」
キョロキョロと見渡しても人影が見えない。
「やばい迷子った!え、嘘、どうしよう」
元来た道を戻ろうとして泉李は人影を発見した。
「よかった人いたよ…本当よかった…」
ホッと息を吐き、泉李は人影に歩み寄る。
「て、あれ」
「誰だよアンタ」
目の前にいたのは巽完二だった。
(原作キャラ、だと…!てかこれはチャンスじゃね?ある程度話したことがあればもし原作のあの場面に遭遇しても大丈夫かもしれない)
完全に不純な考えである。
「初対面です」
「あ?」
ハキハキと答える泉李に完二が眉根を寄せる。
普通の人なら怖がるであろうその様子に、亜久津とよく喧嘩(泉李が逃げてるだけ)をしている為普通に流す。
「初対面早々お願いが」
「お願い…?」
「商店街は何処ですか」
「はあ?」
「この町に来て二日目、迷子です」
「…………」










「いやー助かったよ、ありがとう」
「や、いいっスけど…」
泉李は完二と買い物袋を持ちながら歩いていた。
「あんなに買ってどうやって持ち帰るつもりだったんスか」
「根性で!」
ぐ、と拳を握りながら言う泉李に完二は溜息を吐いた。
「つーかこんなに食べ切るんスか…?」
「食べ切ってみせる!」
「流石に一人じゃ無理なんじゃ」
「いやいや一人じゃないし。家にあと二人」
「それにしたって多いっスけど」
「………じゃあ巽君が食べに来ればいいじゃまいか!」
「今日はもうお袋が夕飯支度してっと思うし遠慮しとくっス」
「あらやだいい子」
泉李がそう言うと、完二が固まる。
「何か今寒気が…」
「え、風邪?よし薬湯でも…」
「いや本当いいんで」
「ええー…」
「何でそんなに不服そうにするんスか」
完二のツッコミに泉李が笑う。
「巽君何かあれだね、癒やし系」
「はあ!?」
完全に何言ってんだという目を向ける完二に泉李はリボンシトロンを渡す。
「はい、お礼」
「え、あ、どもっス」
「まあ今度食べにおいでよ、美味しいモンご馳走するからさ」
そんな風に告げて、泉李は家の中に入って行った。

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