#05

翌日。
体調もバッチリ、アイテムも準備満タンだ。
「さて今日中に最上階まで上がろう…って言いたいところだけど」
チラリと自分の手の中にある棍を見て溜息を吐いた。
「流石に強行軍だったしなあ…」
真ん中から真っ二つに折れていた。
「ベスさんが来る前に新しいの買いに行かないと駄目っぽいね、これ」
そうボヤくと泉李は家を出た。










新しい棍を買い終え、泉李が戻って来ると既にエリザベスが家の中に待機していた。
「遅かったですね」
「ちょっと武器を買い直しに」
そんな会話をして、泉李はエリザベスと共にタルタロスへと向かった。
「それでは参りましょう」
早速エリザベスがエントランスを抜けて内部へと入り込む。
それに続いて泉李が内部に足を踏み入れると、ぐにゃり。
何か捻じ曲がったような感覚と、引っ張られる感覚が混じる。
「うわ、」
「大丈夫でございますか?」
「まあ何とか。…って、もしかしてワープ?」
「そのようですね。最高到達階まで飛ばされた模様です」
淡々とした物言いでエリザベスが同意する。
そして、階段を探して二人は歩き始めた。
「またワープ機能が使える場所があればいいけど…」
「そうですね」










「此処が最上階…」
登り切った二人は目の前にある巨大な扉を見た。
その扉には彫刻のように《彼》が佇んでいる。
「ベスさん」
「ええ…漸く、辿り着きました」
一歩、扉に近付くエリザベス。
その瞬間、辺りの雰囲気が一気に険悪なものへと変貌した。
「これは…」
辺りを見回すと、何処からやって来たのかエレボスが悠然と佇んでいた。
「……!?」
咄嗟に距離を取った泉李は慌ててエリザベスに声を掛ける。
「ベスさん!」
一瞬扉の方に気を取られていたエリザベスが動こうとする。
しかしエレボスの方が動くのが早かった。
不意を突かれる形になったエリザベスはダウンしてしまう。
「そんな…!」
再びエリザベスへと攻撃しようとするエレボスに泉李は自分の持っていた棍を投げ付ける。
その衝撃にエレボスが僅かに止まる。
その隙を狙って泉李はエリザベスの元へ走った。
「ベスさん!しっかり!」
声を掛けてもちゃんとした返事が返ってこない。
再びエレボスが向かって来るのが見え、泉李は何か無いかと周りを見る。
「……っ!ペルソナ!」
咄嗟に目に入ったペルソナ全書を開き、叫ぶ。
その瞬間に目の前がぐらり、と歪む。
現れたのは、マーラ様とジャックフロストだった。
「な、んで…っよりによって、マーラ様が」
息が上がる。
根こそぎ体力を持って行かれる感覚が泉李を襲う。
「ペルソナ能力、がワイルドじゃないと負、担が大分大きいって、こと…?」
ペルソナ全書を介せばペルソナを召喚出来るだけマシだと、呼び出したペルソナに指示をする。
「ジャックフロスト、マハブフ!マーラ様はアギダイン!」
2体のペルソナが力を振るうと体がまた更に重く感じる。
「そのままっ続け、て!」
エリザベスが起きるまで2体のペルソナが攻撃する。
「…、」
「ベスさん!?」
「まあ、立派ですこと」
「ベスさんんん!!」
気が付いたエリザベスの最初の一言はマーラ様に対する言葉だった。
「あら、ごめんなさい。つい…」
そう言うや否や泉李の手にあるペルソナ全書を見て顔を顰めた。
「お使いになられたのですね」
直様泉李の手からペルソナ全書を取り上げる。
するとジャックフロストとマーラ様が消え、エリザベスが立ち上がる。
「さて…少々お痛が過ぎたようでございますね」
微笑みを称えたエリザベスがペルソナ全書のページを開く。
「あれ、ベスさん…?」
「泉李様はあちらの扉の方へ行っていてください」
有無を言わせぬ口調で言われ、泉李はそれに従った。
「私、エレベーターガールではございますが、少々荒事の方でも心得がありますので」
ページを捲る手を止め、エリザベスがエレボスを睨みつける。
「ペルソナカード、ドロー」
ピクシーを召喚して、いきなり畳み掛ける。
「メギドラオンでございます」
凶悪技であるメギドラオンを放つ。
「凄、」
扉にもたれ掛かるように立つ泉李。
「何だかエレボスもゲームのときより、弱い…」
何となくそう感じて泉李が呟く。
もしかすると人の死に触れたい欲求が以前より薄れたのかもしれない。
「これなら、もしかして…行ける、かもしれ、な…」
立つことすら辛くなってきて、泉李はズルズルと座り込む。
「……っ、これ、つ、ら…!」
そのとき、エリザベスの攻撃の隙間を縫って、エレボスが扉にもたれ掛かり、座り込んでいる泉李に向かって攻撃を放つ。
「! 泉李様…っ」
しまった、とエリザベスがこちらに走って来るものの、間に合いそうにない。
(此処までかな…あーあ、ツイてないよね…せめて国光君に会いたかった…)
ボンヤリとしか周りが見えていない泉李は動けない。
ゆるゆると閉じる瞳。
その視界に誰かの後ろ姿らしきものが見えた気がした。
暗転。

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