U-17に招集させられ数日。
名前は気が付けばすっかり高校生達に馴染んでいた。
「…あれ、可笑しない?俺中学生なんやけど」
「まあまあ、いいことじゃないか」
「入江センパイはそりゃあそう言うやろうけど、俺かて立派な青学やし」
「訳分からないこと言ってないでほら、練習練習」
「えー…俺、試合したいんやけど…」
怠いとコートの隅で駄々をこねる名前に苦笑しながら入江は「あとで試合ならしてあげるから」と言うと自分は練習に入る。
「…ホンマのホンマやからな!」
納得した名前もサーキットメニューをこなし始めた。
名前が高校生達と一緒にいるのには理由があった。
U-17合宿に来た当初に行われた脱落タイブレークマッチで名前は端の方に座っていて余ってしまった為、急遽コーチからの指示で高校生と試合をしたのだ。
その結果を見て名前を高校生達と同じ練習メニューに入れ、高校生達と必然的に一緒に行動することになってしまったのだ。
「そもそも跡部やら幸村やら手塚やら俺より強いやつはいっぱいおるやろ!俺も向こうでやりたいー」
「文句を言っている暇があるならメニューをこなせ」
「徳川センパイはストイックやああ!」
隣でメニューをこなしていた徳川に注意され名前は騒ぐ。
これでコートを落とされないのは何故なのだろうか。
いくら6番コートといえどそこそこの実力がある場所だというのに。
「大和センパイー!あとで俺と乱打してもろうてええ!?」
…自由人である名前はあまりちょっかいを掛けると面倒なことになるからかもしれなかった。
名前が一年生だった頃の部長だった大和に声を掛けたりと金太郎より大人しいとはいえなかなかのゴンタクレである。
「いいですよ、…でもその前に名前君はまず練習メニューをこなさなければ乱打が出来ませんからね」
3番コートである大和が苦笑混じりに了承すると気合いが入った掛け声を出しながら名前はメニューをこなしていく。
「相変わらず元気いっぱいですね、名前君は」










「名前、隣いいか?」
「あ、手塚やん!どうぞどうぞ」
夕食の時間に手塚は名前に話し掛けた。
この合宿に来てからあまり話せていなかった手塚は名前の隣に座ると黙々とご飯に手を付け始める。
「そういえばリョーマは帰ったんやったよなあ…一回くらい試合したればよかったわあ」
「…そういう名前こそ、遠山が帰っていただろう?いいのか」
「あんまよくはないで。…まあ、金太郎なら大丈夫やって分かっとるしな!多分今頃どっかで練習中や」
「そうか。……ところで名前、そのあみぐるみは…」
「あ、これ?これな、鬼センパイが作ってくれたんやで!可愛えやろー」
机の上に置いてあったうさぎのあみぐるみを指差した手塚に名前はあみぐるみを抱えながら笑った。
身長も高い男子が持っているというのもシュールな光景だけど、名前の家で大きなぬいぐるみの抱き枕を見たことがある手塚は特に何も言わずに頷いた。
「鬼センパイってホンマ凄いなあ…今度は手塚作ってもろうたら?」
「いや、遠慮しておく」
サラリとかわし、手塚は箸を置いた。
「あれ、もう食べ終わったん?手塚」
「ああ。…名前、楽しいか?」
唐突な手塚からの質問に名前は一瞬目を丸くしたもののすぐに笑顔になった。
「おん!当たり前やろ、こないに強いし楽しいやつらばっかやもん!」
名前の言葉に満足した手塚はトレーを片付けに席を立った。
「…やあ、遠山」
「?……あ、幸村やん」
食べ終わり、トレーニングルームに来た名前は幸村に話し掛けられた。
「全国大会以来だったよね、君とは」
「んー、せやなあ」
「…俺はやっと、あのとき遠山が何で俺との試合を放棄したのか何となく分かった気がするよ」
「そうなん?…てっきりリョーマと戦ったときに分かった思うとったんやけど」
トレーニング機器の近くに置いてあるベンチに腰掛け二人は話をする。
「ボウヤとの試合で俺は楽しむってことを思い出しはしたよ。…でもやっぱり君の真意は掴めなかったんだ」
幸村の言葉に名前はへえ、とだけ相槌を返した。
時折冷めているときがあるのだが今もそうらしい。
「この合宿中、遠山の練習しているところを見てて思ったんだよ。遠山はボウヤと同じようにテニスを楽しんでいるんだよね?」
「そりゃあそうやろ、俺テニス好きやし」
「ただボウヤと違って遠山は捻くれてるというか…うーん、何て言えばいいのかな。遠山って試合の好き嫌いが激しいでしょ」
「違ったかな」と確かめるように名前を見つめる幸村に名前は困ったように頬を掻いた。
「あー…好き嫌い、言うかなあ…うん、あんときは腹に据えとってな。俺の弟に何してんのや!みたいな感じで。そんで打ち合っとったけど幸村、全然楽しくなさそうやったから」
「いや、それは確かにそんなことを言っていたけど…」
「ほら、楽しない試合しとったら気分も滅入るやん!そないな試合は公式やないならやらん」
きっぱりと言ってのけた名前にぽかんとした表情を浮かべた幸村は一拍置いて笑い始めた。
「あははっ何その理屈!あーもう…遠山って面白いね」
「おーきに!ちゅうか幸村って笑い上戸なん?」
「まっさか。俺も久々に大笑いしたよ」
幸村はまだ笑ったままでそんな幸村に首を傾げながら名前は立ち上がった。
「U-17合宿、かあ…幸村はどう思うとる?」
「…そうだね、俺は何か裏があるんじゃないかと思ってるよ。蓮二もそう言っていたしね」
「うん、まあそうやろうなあ…何にせよやることは変わらんし、向こうが何かに俺らを利用しよるんなら俺らは強うなるんにU-17(此処)利用すればええやろ」
「……遠山さ、馬鹿なフリして頭いいでしょ」
「んー?俺、一応金太郎よりは頭ええとは思うで!」
キラキラとした笑顔を見せる名前に幸村は苦笑した。
もしかしたら名前もクセモノなのかもしれないな、なんて考えながら。


───
星流様リクエスト『金ちゃん兄で全国大会後かU-17合宿』でした。
うわあ何て意味不な文章。
高校生と同じ練習の理由は名前の基礎能力が他の中学生より高かったから高校生の練習をさせた方が伸びると考えられたから。
ちなみに幸村とは今回初めてちゃんと話しました。
幸村笑い上戸説浮上←



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