とある昼下がり、幸村の機嫌は急降下していた。
「ふふ…市ね、長政様にお弁当作って来たの……食べて?」
「市が弁当を…!?の、残すのは悪だからな!食べてやらないこともない!」
「うわあ何あれ。凄い腹立つんだけど」
「落ち着け精市。箸が折れるぞ」
ギシギシと箸を握り締めて笑う幸村を柳が制した。
「織田さんのこと名前で呼んでるし、お弁当作ってもらってるし……何?あの態度。織田さん泣かせてるよね、いつも」
「そうじゃのう…浅井、じゃったか。あいつは織田のことを好きなんじゃろうけど捻くれた態度しか取れとらんし、その好意が伝わりにくいし…むしろ滅べ」
「に、仁王君…言い過ぎですよ」
無表情にザクザクと箸でご飯を刺す仁王に控え目に柳生は声を掛けていた。
「そうっスよ!浅井先輩って絶対気付いてないし…自分で泣かせておいて『メソメソするな!』ですよ?こないだ聞いたときマジでキレそうになりました!」
それを聞いて立海レギュラー陣は思った。
浅井長政を市に近付けないようにしよう、と…。
そうと決まればと言わんばかりに切原が笑顔で市に抱き着いた。
「織田先輩!俺達も一緒に食べていいっスか?」
「赤也…うん、構わないわ……」
切原の言葉に頷く市に浅井は若干首を傾げた。
「市、この者達と仲がよかったのか?」
「うん…お友達よ……」
「そ、そうなのか…」
「浅井先輩こんにちはっス!」
ニコニコしながら挨拶をする切原は他のレギュラー陣を呼んだ。
全員が合流すると再び食事が始まった。
「そういえば浅井って風紀委員だったよね?」
市から遠ざけようと発した幸村の言葉に浅井は頷いた。
「ああ、そうだ。私は服装の乱れや素行が悪いのは悪だと思っているからな」
「へえ、そうなんだ。…でもさ正直なところ織田さんと二人っきりで一緒にいるのって不純異性行為として風紀を乱していると取られても可笑しくはないんじゃないかな?」
ニコニコと笑いながら幸村が言った言葉に浅井は確かに、と箸を置いた。
「実際、俺達も二人が付き合ってるのかと思ったしな」
丸井も食べながら口を挟む。
二人が付き合っていないことなんて把握済みだった。
市の方は恋愛感情を持っている訳ではないが割と好意的に見ているようだったから、浅井の方を牽制したのだ。
こうしておけば少なくとも学生の間は付き合うなどはない。
市の方からは告白もしないと当たりをつけている辺りが丸井の凄いとこだ。
「私達は別に、つ…付き合ってなどいない!不純異性行為は悪のすることだ!」
顔を真っ赤にして否定する浅井をはいはい、と丸井は軽くスルーした。
「そうだ、市。この間話してた雑貨屋のことなんだけどよ…」
「どうだった…?よさそうなもの、あった……?」
ジャッカルは市に話し掛けて、浅井と話させないようにする。
「やれやれ…皆さんも必死ですよね」
「そう言う柳生、お前はどうなんじゃ?」
「紳士たる者、このようなこと……と言いたいところですがこの場合は何も言いません」
何かしら思うところがあったのか何かを言うでもなく黙ってノートを書き続ける柳の方に柳生は向かった。
「市…その、」
「あ、弦一郎。浅井も一緒に食べてるんだけどさー…」
そこで遮るように幸村は声を上げた。
先程までいなかった真田が片手にお茶のペットボトルを持ち首を傾げていた。
「…む、そうなのか?……あ、そういえば浅井、お前を顧問が探していたぞ」
真田の言葉に浅井は慌ててお弁当を仕舞うとあとで食べると言いながら去って行った。
「弦一郎、ナイスだ」
「そうか?」
柳の一言に真田は分からない、といったばかりに肩を竦めた。



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麻子様リクエスト『長政と夢主の邪魔をしようとする立海』でした。
夢主好き過ぎて暴走する立海メンバーです。
好き、っていうよりやり過ぎな長政に近付けたくないだけです。
泣かせるとか駄目、絶対。
だから長政が態度を改めれば近付けさせないようにするとかはなくなります、頑張れ長政。



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