「知念や、知念ー!」
ブンブンと手を振る名前に知念は手を無言で振り替えした。
「知念、あいつ誰さー」
「こないだ迷子になってるところを助けたんばあよ」
「相変わらず知念はお人よしやっしー」
平古場が呆れたように言う。
「知念のおかげで迷子にならずにすんだんや!せやからお礼にな、たこ焼き作ったろ思うたんやけど…知念、いらん?」
しょぼん、と落ち込んだ表情を見せる名前に知念は頭をポンと軽く叩いた。
「にふぇーでーびる、遠山」
「に…にふえ…?」
「違いますよ、にふぇーでーびるですよ。本土の言葉でありがとう、という意味です」
「あ、永四郎。やーはこいつと知り合い?」
「いえ、初めてですよ。流石に幼い子供相手に冷たい態度を取るのは俺の沽券にも関わりますから」
「……コロネや」
名前が小声で言った言葉が聞こえたのか木手は眼鏡を押し上げながら微妙な顔をした。
「…ゴーヤ食わすよ」
「永四郎、相手は年下やっしー!落ち着くばあ」
「ゴーヤって何や?」
「この世の食べ物とは思えないほどまずいさー」
木手を抑える平古場を尻目に名前は甲斐に尋ねる。
「そないにまずいん?うち食べとうない!」
想像したのか涙目になった名前がそう言った。
「マジで永四郎落ち着くやっしー!やーに悪気はないさー!」
いよいよゴーヤを手に持つ木手を抑える平古場は若干泣きそうだった。
「わったー何してるんばあよ」
「あ、慧君。今、永四郎がゴーヤをこいつに食わせようとしてるさー」
「ゴーヤ嫌やあああ!」
ジタバタと暴れる名前に田仁志が納得したように頷いた。
「ゴーヤは慣れてないときついやっしー」
「慧君が優しいさー」
驚いたように甲斐が言うと田仁志は呆れたように溜息を吐いた。
「やーは勘違いしてるさー。女には優しくするもんばあよ」
「……女?」
「何処が女やっしー」
甲斐と平古場が口を揃えて尋ねる。
「お二人とも、よく見てみなさい。男にしては華奢でしょう」
「二人ともふらーさー」
「男でも華奢なやつはおるやっし」
「うち女やで?」
「……本人もこう言ってるさー」
知念が名前の援護をする。
「じゃあ何で男子テニス部に入ってるさー?」
「金ちゃんと戦いたいからや!」
「やー、答えになってないし」
「わんの勘違いとか…女と男を間違えるのは、はじかさ」
平古場は恥ずかしそうに頬を掻いた。
「甲斐やったっけ?うちな、ホンマに女なんやで!幸村達にバレてもうたから試合には出れんけど…強うなりたいんや、立海で」
「やーが何を言いたいかは何となく分かったさー。でも女なら女子の方に出るってことも考えんといけねえやっし」
知念が頭を撫でながら言う。
「そうかもしれんけど…」
「ま、ちばりよー。わんは応援してやるさー」
平古場が髪をグシャグシャと撫で回す。
「髪ボサボサやー!」
腕から逃れようと名前は暴れる。
「ほら、そこ。さっさと離れなさいよ平古場君。ゴーヤ食わすよ」
「げ。ゴーヤは勘弁」
「うちもゴーヤは嫌や!」
平古場と名前が逃げ出す。
「こら待ちなさいよ。………全く」
やれやれ、といった風に木手は二人を追い掛け始めた。


───
椿様リクエスト『沖縄組との絡み』でした。
初比嘉です、うーん…うちなーぐち難しいですね。
ほのぼのしてるように見えたらいいです。
※ふらー=馬鹿
はじかさ=恥ずかしい
ちばりよー=頑張れ
だった筈…!



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