短編 | ナノ



10月18日、あと2分で19日。
私は携帯と睨めっこしていた。
そこには私の幼なじみである彼への誕生日の祝いの言葉が書かれたメールの画面。
勿論、未送信のものだ。
「誕生日おめでとう、だけじゃなんだか素っ気ないよなあ…」
彼、柳生比呂士がこの時間まで起きているのか怪しいからこんな時間に送らなくてもとも思うけれど、比呂士には一番におめでとうと言いたいのだ。
そしてこれだけを送るのも何か嫌だからとずっと悩んでいたのだけど、気付いたらもう少しで誕生日当日になってしまう。
実を言うと一つだけ思いついてはいたけれど、少し気恥ずかしいからと保留にしているものがある。
いっそのこと、それを送って明日反応を見てみようか。
私は嘘を書いている訳ではないんだし。
深夜のテンション、それと半ば自暴自棄ともとれる行動。
大慌てで文字を打ち、あと少しで誕生日になるのを今か今かと待ち構える。
送信ボタンを押したいような、押したくないような。
長い間待ち構えていたように感じた。
0時ジャストになった瞬間、私は比呂士にメールを送信した。
携帯を閉じて、私は布団に潜る。
比呂士は今頃携帯をサイレントマナーモードにして寝ているだろう、明日の朝どんな風に反応してくれるのだろう。
少しだけワクワクしながら私は眠った。










翌朝、真っ赤な顔をした比呂士が家の前に立っていて私を抱きしめたのは私の予想外だったけど。


『誕生日おめでとう!











比呂士のことが好き、愛してる。付き合ってください。』



なかなか押せない送信ボタン