短編 | ナノ
「だーっもう付き纏わないでよ!」 「まだお前のデータが集まっていないからな。それは出来ない」 「面倒なのに目を付けられた…」 きっぱり断られ、私はがっくりと肩を落とした。 いつもならこの時間、私は優雅に紅茶を飲みながらテレビを見ているのに。 今私は学校から遠い、お洒落なカフェにいる。 本当に調子が狂う。 「…柳君、別に私はテニスをしている訳じゃないからデータはいらないと思うんだけど」 「ふむ、その切り返しは予測していなかった。心配はいらない、データの悪用はしないからな」 「微妙に話が成り立ってないのはよく分かった」 柳君は態となのかそうでないのかは知らないけど、話が通じなかった。 「そもそも悪用はしない以前に私に付き纏ってデータを取ってたらその時点で、すと」 「……何か言ったか」 「いえ、何も」 目を開かれて、私は咄嗟に口をつぐんだ。 柳君怖い。 「大体、何で私?クラスが一緒なくらいしか共通点が見つからない」 「共通点か?それならクラスが同じ以外に好きな本の作者、得意な教科、それから…」 「ごめん、分かったからそのノート仕舞って」 私の中の危機察知能力が告げてる。 これ以上付き纏われたら大変なことになる、と。 「ところで、お前と付き合っている男子のことだが」 「そこまで知ってる柳君が私は怖い」 「ありがとう」 「褒めてないけどね。…で、彼氏が何?」 「今そこを他の女生徒と腕を組みながら歩いているが」 「……………」 「仲が良さそうだな」 「もしかして、わざわざ遠いカフェに来たのって」 嫌な予感しかしない。 当たって欲しくないけど多分合ってる。 「あの状況を見てもらう為だ。見ていて腹が立ったのでな、お前という彼女がありながら浮気…いや、あいつからすればお前が遊びだった可能性もあるが」 「………、要は私に別れた方がいいって言う為に?」 「ああ、そうだ。…半分くらいは俺の希望でもあるがな」 「ん、何か言った?柳君」 「いや、特に何も言っていないが。…さて、どうする?」 尋ねられ、私が出す答えは一つしかない。 「別れてくる、今」 「…別れるだろうとは思っていたが今言いに行くとは思わなかったな」 「データにない動きをしたってこと?」 「ああ。だから俺はお前に興味がある」 何だか面倒そうな雰囲気を感じ取ったけど無視して私は席を立った。 「それから、俺はお前が好きだからな」 「…………は?」 「金は払っておこう、ではまた明日学校で」 「いやいやいや、意義あり!今サラッと告白しなかった?!」 「何の事だ?」 「流すな!私バッチリ聞いてたからね」 伝票を掴んでカフェから出て行こうとする柳君を止めた。 「…良いのか?お前の彼氏が歩いて行ってしまうが」 「今電話して振る。それより柳君、今の話をきっちりしてもらおうか」 「積極的だな」 「柳君?」 あれ、柳君ってこんな性格だったっけ。 クラスでの柳君と何か違うような気もする。 「ふむ…、ならばはっきり言っておこう。お前が気になる、付き合ってくれ」 「柳君、案外ノリが軽いね。……その為にわざわざこうやって動くのも凄いけど」 「そうか?俺は気になったことはとことん追求したいタイプでな。その為なら法に触れない範囲での努力は惜しまない」 「今凄いこと聞いた気もするけどまあいっか」 珈琲を一口飲み、柳君は続けた。 てか柳君怖いな。 「付き合うって言われても…」 「因みに、付き合うとは男女間の交際だ」 「それは分かるよ。……でもさ、別れる直前の人に言う台詞ではないよね」 「俺はお前を幸せにするが?」 どうしよう、話が通じてる気がしない。 それよりも真顔で口説かれると顔が赤くなるって本当だったんだ。 「だからデータを取らせてくれ」 「……………結局それ!?今の言葉で台なしだよ!顔赤くした自分が恥ずかしい!」 「顔を赤くしていたのか」 「………〜〜っいい加減にしてよ!」 咄嗟に叫んだ私は間違ってないと思う。 ノート開いて書き込まないで!
企画【この蟹よ、届け】様に提出しました
いい加減にして下さい
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