火曜日・A
 

柳君が来たのは図書館だった。
本を返してお弁当に手を付けて暫く食べていたかと思うと不意にお弁当を仕舞い、立ち上がった。
どうやら本を探すらしい。
私も今のうちにとお母さんが作ってくれたお弁当を食べる。
勿論卵焼きは友人にあげてから来た。
友人は用事があるらしくもう一人の友人とニヤニヤしながらすぐに立ち去ってしまった。
…おかげで見失ってしまわないかドキドキしなくてはならなかった。
食べ終わって私が柳君の座っている席を見ると、柳君は既に座って本を読んでいた。
…話し掛けるなら今かもしれない。
「柳君、」
私はお弁当を纏めて柳君の前まで行き声を掛けた。
「…ああ、同じクラスの苗字か。何か用か?」
「その…相談に乗って欲しくて」
「相談、か。ふむ……まあいいだろう。とりあえず話してみろ」
柳君は一旦本を閉じて私にそう言った。
私は何処から話そうか迷いながら口を開いた。
「ええと…どう話せばいいか分からないから、順番がぐちゃぐちゃかもしれないからいい?」
「構わない、こちらで時系列順に並べ替える」
ブレザーの内ポケットから懐紙と筆ペンを取り出し柳君はそう言った。
「まず私が今朝起きたとき、私の記憶じゃ昨日の夜は日曜日だったの」
「…日曜日?」
「うん、でも時計を確認したら今日は火曜日。昨日一日の記憶が全くないの」
「昨日は確かに苗字は来ていたぞ」
メモを取りながら柳君は言った。
そう、そこが分からないのだ。
お母さんも昨日は学校に普通に行ったと言うし…。
「…お母さんも、昨日は私が普通に学校に行っていたって言っていたわ」
「……一つ聞かせてくれ」
「何?」
「何故それを俺に相談したんだ?」
「…夢」
「……夢?」
「夢で柳君が出て来て『何か変わったことがあったら絶対に俺に相談しろ』って言ってて…」
「…俺が苗字の夢の中に?」
「うん…」
「夢の内容を詳しく聞かせてくれ」
「、…その、柳君に抱きしめられてて」
「……俺が?」
「うん…それで咄嗟に私ビンタして、何だか柳君が納得してて『相談しろ』って言ってて、私はそのあとすぐに階段から落ちて……。あ、そういえば夢の中の柳君が此処は自分の部屋だって言ってた」
「俺の部屋で……」
メモを取っていた手を休め、柳君は言った。
「………悪いが、俺は記憶障害や夢については専門外だ。他を当たってくれ」
「そんな……」
「そうだな…柳生辺りが知っているかもしれない、そちらを当たってみてみたらどうだ?」
柳君は当たり障りなく私の悩みを解決する気はないと断りを入れていた。










「信じらんない…!」
柳君ってあんなに冷たい人だったんだ。
柳生君とは何の繋がりがない私は柳生君に相談出来る訳がないのに…!
ムカムカしながら中庭を歩いていると柳君の声がした。
「苗字、先程のことだが…………苗字っ危ない!」
突然の大声に腕を引っ張られる感覚、そして柳君の開眼した目。
ガシャン、という重いものが割れた音と同時に私の意識は遠くなっていった。



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