火曜日・@
 

目が覚めたら何故か火曜日の朝だった。
「……え?」
寝る前の記憶じゃ昨日は確か日曜日だった筈だ。
けれど私の携帯の画面に映っているのは火曜日で。
携帯の画面を呆然と見つめたけど何度見ても表示は変わる訳がなく、お母さんの声でようやく私は動き始めた。
「今日は遅かったじゃない、寝坊?」
「うーん…ちょっとね。あ、そういえば昨日、私って何してたっけ?」
「昨日?昨日は普通に学校に行ってたじゃない」
どうしたのよ、なんて目を丸くするお母さんに曖昧にごまかして私はお弁当を手に家を出た。










「おはよう」
「おはよう名前」
挨拶をして席に着くと、近くの席に座っている仲の良い友人が挨拶を返してくれる。
「昨日のドラマ見た?」
「あー…ごめん、まだ見てないや」
「あんなに楽しみにしてたのに見逃したの!?」
「ごめんごめん」
びっくりしたような友人の声に私は笑いながら謝った。
「うーん…おかず一つ」
「卵焼きでいい?」
「やった、それならいいよ」
子供っぽい友人にそう約束すると私は教科書を取り出した。
「…あれ、」
「どうかしたの、名前」
「あー、いや…何でもないよ」
私は昨日用意した覚えがない火曜日の授業の準備を見つめて固まった。
…何で?
「ふうん?」
「本当に何でもないってば」
いかぶしむ友人にごまかそうとしつつ私は小さく溜息を吐いた。
「まあいいけどねー。…あ、柳君だ」
ドキリ。
友人の突然の台詞に心臓が跳ねた。
私と柳君は接点がないのに何であんな夢を見てしまったんだろう…。
……『何か起きたら』…か。
既に訳の分からないことが起きていて、何がなんだかさっぱりだ。
柳君がこちらを向くことはない。
…そうだ、いくら抱きしめられていたとはいってもあれは夢だったのだ。
でもあの柳君は言った。
『何か起きたら絶対に俺のところに来い。…良いな?』
あの声が嘘だったとは思えない。
優しさの中に鋭さを交えたあの真剣な声を、私はどうしても嘘だとは思えなかったのだ。
夢だとしても私はその柳君の言葉に従いたかった。
だから、私は。
柳君にこのことを相談することにした。










昼休み。
このタイミングを逃せばきっと柳君と今日話すことは無理になってしまう。
それは駄目だ。
昨日の記憶はないのに普通に生活している以上、私ではない私が出歩いていたのだから。
だから日付が変わってしまう前に何としても柳君に相談をしたかった。
柳君は本とお弁当を手に歩いて行く。
私もお弁当を片手に少し距離を取りながら柳君の後ろを着いて行った。



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