エリザさんとテオ君のお家にお泊りしました。
……聞いたらサポートブックに書かれていた住所は以前壊されてしまったらしい。
何でも取り壊しがこの間あったらしく、現在は何もないところだとか。
行き場所がない私を泊めてくれたエリザさんに感謝しなくては。
「エリザさん、手伝います」
「あら、ありがとうリンさん」
ニコリと笑み、エリザさんが料理をしていた手を止めて私にサラダを作るように頼んだ。
エリザさんの横に立ってサラダを作り始めるとテレビで昨日の銀行強盗のニュースが流れる。
『ヒーロー達の活躍で捕まった銀行強盗ですがその際主犯格に人質にされていた少女の素晴らしい杖捌きによって……』
「ふふ、噂になってるわね?」
「止めてくださいよ…テレビに映ってないのが奇跡なんですから」
「まあ、聞く話じゃHEROTVのプロデューサーは視聴率の鬼らしいから…きっとばれたら旅行どころじゃなくなるものね」
「そうなんですよ…旅行で来たのに観光も出来なかったら嫌ですし」
エリザさんとそんな風に会話してるとテオ君が起きてきたのか元気な声が聞こえる。
「おはようママ、リンお姉ちゃん!」
「おはようテオ君」
「おはようテオ。顔洗った?」
「あ、まだだった!顔洗ってくるー」
エリザさんの言葉にテオ君がパタパタとリビングから出ていく。
テオ君は凄いいい子だと思う。
「そういえば私、ヒーローのことあんまり知らないんですよ」
「あら、そういえばそうよね。それじゃああとでヒーローのこと教えるわ」
「ありがとうエリザさん」
本当に気が利く人だと思う、エリザさんは。
顔を洗って戻って来たテオ君の手元にあるカード達を見ながらエリザさんが答えてくれた。
KOHに氷の女王、カンフーマスターにブルジョア直火焼きのヒーロー、見切れ職人に猛牛戦車、ヒーロー界初のコンビヒーロー。
エリザさんもテオ君もヒーローが好きなのかキラキラとした目で話してくれた。
ヒーローが本当にいたというのが凄い嬉しい。
実際助けてもらった…あれ、もらった?
まあ助けてもらったか、とにかく実際目の前にしてたからあの状況じゃなければ私多分発狂をしてたと思う。
「それじゃあ私はこれで。お世話になりました」
「大丈夫なの?泊まるところは……」
「いや、流石にお世話になれませんて」
朝ご飯を食べ終わり荷物を持って出てこうとしたら引き留められた。
テオ君も私にしがみついて離れようとしない。
「リンお姉ちゃん…」
捨てられた仔犬のような目で私を見つめるテオ君に負けました。
「私達も寂しいから、リンさんがいてくれて嬉しいわ。旅行から帰るまでいてくれて構わないのよ?」
華やいだ雰囲気のエリザさんに圧されるように荷物を昨夜借りた部屋に置くと、エリザさんがこの辺りを散策してきたらと提案してくれた。
エリザさんも着いて行きたいと言ったけど、迷惑を掛けられないからと断った。
居候の身であまり迷惑は掛けられない。
「それじゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい!」
テオ君もこれから学校らしく準備をしているけど、声を掛けると元気良く送り出してくれた。
やっぱりいい子である。
とりあえず銀行に寄ってお金を卸さないと何も買えない。
お土産は帰る直前で良いし。
危険だって聞いた以上身を守る為の道具も必要だと思ったからだ。
あの二人が何かあったとき、私が助けてあげないとって思ったのだ。
驕りかもしれないけれど私はそこそこ腕が立つ。
流石に銀行強盗のときのような無茶はしないけどある程度のことなら助けてあげたい。
つらつらと考えながら歩いていたら向こうから紫のジャンパーを着た金髪の男の子が歩いて来た。
整った顔をしている男の子だけど何故か浮かない顔をしている。
というか、私に全く気付いてない。
下を向いて歩いている彼が物にぶつかるのは時間の問題だろう。
咄嗟に私は彼に手を伸ばして引き留めた。
「……へ?」
間抜けな声を出して彼は私を見つめた、かと思うと叫んだ。
「え、あああっあの……!?」
顔が真っ赤である。
そんな初々しい反応に可愛いな、と思いながら口を開く。
「下向いて歩いてると物にぶつかるよ」
「へ?……あ、すいません」
混乱している様子のまま彼は謝った。
「って、昨日の銀行強盗の…」
「わ、何でそれを」
昨日の人質の中にはいなかった彼にそれを言われて私はつい尋ねてしまった。
整った顔立ちの彼を忘れるとも思えなかったのだ。
尋ねると彼は顔を青くさせ、ブンブンと横に振った。
「あ、いや…えと、何でもないです」
……何か変なことを言ったのだろうか、挙動不審な彼を私は怪しげな目で見てから手を離した。
いつまでも腕を掴んでいては申し訳ない。
というか何で私が昨日の銀行強盗のときにいたことを知ってるのかと思ったけどもしかしたら野次馬の中にいたのかもしれない。
そう思うことにして私はその場を離れようとした。
「あ、あの…日本の方ですか?」
そんな彼の言葉がなければ。
見れば緊張した様子で私に尋ねている姿はふるふると震えてこちらを見つめる小型犬のようである。
どちらかと言えば可愛いものには目がない私にとってちょっと胸に来るものがあった。
…ついつい頷いてしまったのである。
「僕、日本の文化が好きなんです!」
パアッと顔を輝かせる彼を見て後悔した。
あ、懐かれたかもしれないと。
良ければお話しませんか、なんて怖ず怖ずと誘ってくれた彼がなんかもうツボに来てしまって既に断れなくなってしまった。
今日は散策は無理そうである。
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