少なからず、パオリンちゃんと話が出来たのは私にとってよかったみたいだ。
パオリンちゃんの明るさになんだか救われた気がした。
「今日はありがと、僕楽しかったよ!今度型を教えてねっ!」
にこやかにそう言ってくれたパオリンちゃんと別れ、一度エリザさんの家に帰ると、私はエリザさんに素直に申し出て家を出ることにした。
勿論、エリザさんは渋ったがいつ帰れるか分からない私を置いておくのは外聞が悪いだろう。
せめて次の家が決まるまでは、と留められ私はもう暫くエリザさんにお世話になることになった。





「店長、この辺りで何処か良い不動産屋ってありますか?」
「不動産屋か…引越しか?」
「ええ、今居候の身でして。長くお世話になると迷惑でしょうし、早めに移動したいなと」
仕事の合間に店長に尋ねてみると、店長は考え込んだ後に特に思い当たるものはないと首を横に振った。
「悪いが、私はこの辺りの不動産屋はあまり詳しくなくてな…」
「そうですか…」
「知り合いに聞いてみておこう」
店長がそう言い、この話は一旦終わった。
そうして暫く働き、時間になって上がると私は近くのコンビニに入った。
…肉まんでも食べよう、そう思ってレジで頼むと隣のレジで男性が同じように肉まんを頼んでいた。
こっそりその人を見てみると金の髪に青い目、ガタイは良く、見るからに好青年っといった感じの人だった。
その人は肉まんを手にコンビニを出て行き、私も肉まんを受け取るとコンビニから出て早速食べることにした。
先程出て行った人は既に見えない、肉まんを食べながら歩いているのだろうか。
そんな事をぼんやり考えながら私はコンビニ前で肉まんを食べる。
いろんな人が目の前を通り過ぎて行くのを眺め、私は肉まんのゴミをゴミ箱に入れてエリザさんの家へと帰る。
筈だったのだが。
何故か私は車に押し込められ、犯罪者であろう人に人質にされていた。
咄嗟のことに反応出来なかったのが悔しい、がこれはどうしたものか…。
余りにも動揺していない私を見て恐怖の余り固まっているとでも思ったのか男は下卑た笑いを向けてくるので何も言わずに車内へと目を配らせる。
…隣には男、私が怪しい動きをしていないか見張っている。
運転席に覆面をしている人、そして足元や椅子に散らばる金。
…何処かから盗んだらしい。
車のドアは一人分の空きと少し離れている。
このままでは抜けることはキツイかと考え、何とか気を引かなくてはと気を引き締めると車に着いていたラジオからHEROTVの開始の声が聞こえてくる。
…その途端に舌打ちをする男たちの様子にこの車が相手だと分かり、身を固くする。
私が居なければ簡単とは行かないだろうけどそれなりに早い確保が出来るだろうこの逃走劇。
しかし、人質である私を盾に取られれば…。
覚悟を決める、気付かれないように深呼吸をする。
後ろ手に念じ、ブレスレットが青く輝く。
それに気付いた男が声を上げようとした瞬間、抜き身の刀身を男に向ける。
「動かないでください、死にたくなければそのまま」
男の顔が強張るのを確認し、少しずつドアの方に下がる。
しかし。
ガツンッ。
急に車体が揺れ、刀身がブレて男から逸れてしまう。
…運転手だ。
ミラー越しに目が合う。
ゾッとする程冷たい目に背筋が凍る。
それに気を取られ、私は一瞬状況を忘れる。
そして思い出し、刀身を男に再び向けるには遅過ぎた。
青く発光する男、腕が此方に向かう。
刀を持つ手を抑えられ、思いっきり頭をぶん殴られる。
ーーーああ、しまった、グラグラす、
頭を何かに揺さぶられるような感覚。
まるで車酔いするような…。
そのままお腹の辺りを殴られる。
それと同時に血と、肉まんを吐き出す。
可笑しい、なんだこれ…。
油断、した。
グッタリとした身体、言うことを聞かない。
男の罵倒する声がする。
嗚呼…駄目だ。
やっぱり、私は弱。
暗転。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -