携帯を手に入れてから、私はよくイワン君やカリーナと電話をするようになった。
イワン君には最初に電話したとき目茶苦茶驚かれた。
カリーナはどうやら鏑木さんに番号を聞いたらしく最初の一言は「携帯買うなら私を誘ってくれればよかったのに。…一緒に選んであげたのに!」って言われて切られた。
イワン君からそのあとメールが届いてカリーナが八つ当たりに鏑木さんに対してグーパンチをしたとか書いてあった。
……いや、恐らく鏑木さんが余計なことを言ってしまったのだろう。
怒っているカリーナの姿が目に浮かぶようだ。
「……さて、今日は何処に行こうかなあ」
この間見れなかったブロンズエリアにでも行ってみようか。
一番下の層だとエリザさんから聞いていた。
こういった場所の方が割といろいろ置いてあるのだ。
もしかしたら日本刀くらいあるかもしれない。
………日本刀といっても私は刃引きしたものしか持っていなかったのであまり詳しくは言えないが。
鏑木さんとイワン君に観光案内されていたときに移動用のエレベーターや道を教えてくれたので問題はない。
変な輩にナメられないようにと服を男物にして髪を帽子に隠して来たのだが…それは杞憂だったらしい。
誰も私に目を向ける人はいなかった。
案外人間というものは自分の都合だけで動くものだ。
この辺りはまだ表通りだから変な輩も少ない故に絡まれないのだとは思うが。
気を取り直して私は近くにあった路地裏に入り込んだ。
じめじめした地面、積まれたゴミ袋。
ぴくりとも動かない人。
………酷い、有様だ。
けれど此処で立ち止まる訳にはいかないのだ。
あまり立ち止まっていれば目を付けられてしまうかもしれない。
そんな訳で帽子を深く被り直し進んで行くことにした。
ところどころ寂れた看板を出す家がある。
薄暗くて奥までは見えないが雑貨やらが置いてあるみたいだ。
他には銃や違法そうなもの。
中には銀行強盗が持っていたような銃もある。
もしかしたら彼らはこういうところで銃を買ったのかもしれない。
そんなことを考えながら剣の絵が描かれた看板が目に入った。
中を覗くと剣が並べられている。
見たところ手入れもされているようで、内装の汚さと手入れされた剣の輝きが反比例している。
「………」
「いらっしゃい」
腰の曲がったお爺さんが私に気付いて声を掛けてきた。
「何かお探しかな?」
「私に合った──」
口を開きかけた私を遮るように、お爺さんは私に一本の剣を差し出した。
ニヤリとシニカルに笑うお爺さんは私に言った。
「いい剣だろう?」
「そうですね、曇りのない真っ直ぐな剣です」
思ったままに伝えると満足そうに頷き、私を手招きした。
「着いてくるといい」










「さあ、注文を受けよう」
奥にある小さな机と椅子二つ。
片側の椅子に腰掛けるよう手で示され、私は座った。
「何にするかね?見たところ、日系のようだが」
「日本刀が、欲しいんです」
私の言葉に面白そうに笑い、お爺さんはメジャーを取り出した。
「腕の長さと、握力の検査をさせてもらえるかね?」
その言葉に了承し、私は右腕を差し出した。
「……ああ、次は左を…ふむ、少し左腕の方が長いな。そして握力は…女性にしては高い、これなら長刀でも持てるだろう?」
確認するように私に尋ねるお爺さんに頷いた。
「やはりか。…ああ、それともう一つ」
ビッと人差し指を立てながら一言。
「君はNEXTなのかい?」
「……NEXT?」
ちょくちょくNEXTと聞くが、NEXTとは何なのだろうか。
もしかするとヒーロー達が操る炎や氷、風に雷なども関係しているものなのか…?
「NEXTを知らないのかい?珍しい子もいたものだ、……ふうむ。此処に刀を求めて来たのは運がいい」
いそいそと近くにあった布を取り外しながらお爺さんはぶつぶつと呟く。
「あの……?」
「ああ、いや。気にしないで欲しい。少し値段は張るが、いい物がある」
そう言ってお爺さんが出して来たのは長刀だった。
装飾らしい装飾はなく、本当に武器としての刀らしい。
「これは?」
「ああ、ワシの知人が打った代物でな。曰く、切れない物はない刀だそうだ。……ただし腕がよければの話だがな」
付け足すように呟き鞘から刀を出す。
気のせいかもしれないけれど、仄かに青く光っている…?
「値段はまあ…この辺りじゃそもそも浸透していない型だから、安くするけど…どうだい?」
「買いたい、ですけど…」
「ついでにもう一つ、サービスもするけれど」
「………買います」
そうして、私はこの店で刀を買った。
もう一つのおまけとは、呼び寄せの紐らしい。
二本セットになっていて、片方は刀に、もう片方は自分の手首に。
離れた場所にあっても念じれば手元に刀を呼び寄せられるらしい。
それを試す為に店内で試したら、青く光って私の手元に刀があった。
…これもNEXT、という能力らしい。
他の場所に飛ばすことも出来るようなのでエリザさんに借りている部屋に飛ばした。
何かあったときの為の刀。
何もなければいい、私が刀を使うことなんてない。
そんな風に生活がしたい。
けれど同時にそれが無理なことかもしれないと思っていた。
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