「金ちゃーん!」
「名前ーっ!」
「…はあ、何でこの練習試合受けたんだろ」
青春学園中等部、テニスコート。
似た容姿をした二人とその二人にジャージの裾を掴まれた帽子の少年がいた。
似た容姿をした二人は言わずもがな遠山金太郎と遠山名前だ。
といってもこの三年間で男女として区別が付いて来た為、金太郎の方が幾らか背が大きく、名前は若干体付きが女らしくなっている。
……ぱっと見は変わらないのではあったが。
そしてその二人の間にいる少年、越前リョーマ。
彼も一年生だった頃に比べて格段に背が伸びて大人びている。
しかし、金太郎にも名前にも身長を抜かされていて複雑な気持ちで一杯である。
精神的に越前の方が成熟しているが。
「コシマエー、まずワイと試合してえな!」
「えーっうちもコシマエと試合したい!」
双子にすっかり懐かれている越前は溜息を吐いた。
名前はともかく金太郎は部長。
お前そんなんでいいのかよ、なんて考えながら越前は二人を引きずったまま練習の指示を出す。
「…三年は乱打、二年は玉だしとボール拾い、一年はボール拾いと素振りで空いてる人はドリンクやスコアの用意ね。レギュラーは三年と一緒に乱打して」
淡々と指示を出すと引っ付いたままの二人を引きはがす。
「試合はやることやったあと。金ちゃんは指示出して来なよ」
「絶対試合やからな!」
「はいはい」
適当にあしらい四天宝寺の元に向かわせると残った名前に向き直る。
「…名前は自分のメニュー終わったの、」
「勿論やで!」
「ふーん、じゃあ俺が柔軟終わるまで乱打やってくれば?」
「おんっ」
パタパタと走り去る名前を見送り柔軟を始める。
別に竜崎みたいにならなくてもいいからもう少し静かにしてくれればいいのに、なんて考えながら越前は柔軟をする。
「えつぜん君、名前ちゃん見てないでヤンスか?」
特徴的な髪型と口癖の立海の部長、浦山しい太を見て名前を指差す。
「あ、いたでヤンスー。えつぜん君、ありがとうでヤンス」
「…越前なんだけど」
いつまで経っても直らない呼び方にもう一度注意する越前。
金太郎といい、どうして人の名前を間違って覚えるのかと若干いらつきながら。
「ごめんでヤンス、えつぜん君」
「…もういいよ」
諦めた越前は名前の方を見る。
今はカチローと乱打をしている。
上手い具合に緩急を付けてカチローを翻弄していた。
「(たまに本当に金ちゃんと姉弟なのか分からないくらい冷静なボール打つよね)」
そんなことをぼんやりと考え、全体に声を掛ける。
「乱打終了、これから練習試合を始めるよ」
「負けたやつはこの堀尾特製堀尾汁だからな!」
「…げ、堀尾君まだ作ってたんだ」
「乾先輩から教えてもらって改良してんだよな」
堀尾の声に青学の面々は顔を青ざめさせる。
立海の面々は分かっておらず、首を傾げる者もいる始末。
ただ一人、四天宝寺内でその威力を知っている金太郎だけが「ゾンビドリンクや…!後継者がおったんか……!」と震えていた。
「堀尾、堀尾汁は今日は禁止だから」
「何でだよ越前!堀尾汁は疲労回復やら色々…」
「試合出来なくなるじゃん」
「………」
それを言われたら何も言えない堀尾は目を逸らした。
「なあなあー堀尾汁って何なん?」
何なのか全く分かっていない名前がキラキラとした目で尋ねてきたが、越前は「…金ちゃんに聞いてよ」と帽子を深く被り直した。
「金ちゃん、堀尾汁て何なん?」
「ゾンビドリンクや…あれを飲むとゾンビになってまうんやで……!」
「ゾンビに…?い、嫌や!ゾンビになりとうない!」
相変わらず勘違いしていた金太郎の言葉により、名前も間違った知識を覚えた。
「コシマエはいつもそんな飲みもん飲んでるんか」
「凄いよなあ、コシマエ」
二人のキラキラした視線に気付かないフリをして試合前のアップに入る越前。
「集合、これから練習試合するよ」
「四天宝寺も集合やでー!」
「立海も集合でヤンスー!」
それぞれ集まると試合前の注意をする。
「じゃあまずは金ちゃんからね、試合」
「よっしゃあ!暴れたるでえ!」
「金ちゃん頑張ってえな!」
「おんっ!」
ブンブンとラケットを振りながら金太郎は頷くとコートに入って行った。
「行っくでー!」
「早く来なよ」
二人の試合が始まったと同時に名前も他のコートで試合が始まる。
心地好いインパクト音がコートに響いた。

───
星流様リクエスト『金ちゃん姉で中三か高一で金ちゃん・リョーマと練習試合か全国大会』でした。
もしくは『IF立海大家族(青学・氷帝・四天・立海)でイベント』でしたが、今回は練習試合にしました。
中三です、他一年生キャラ達もちらほら出しました。
双子に懐かれたリョーマ、本人も満更じゃありません←
星流様のみお持ち帰り可能です。


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