「田中じゃ、何しとるん」
「あ、ピヨピヨ星人」
「何じゃそのピヨピヨ星人ちゅーんは」
「ピヨピヨ星人はピヨピヨ星人だよ」
「ふうん、よう分からんぜよ」
どうでも良さそうなピヨピヨ星人…もといにおーはくあ、と欠伸を一つした。
「ちっこいのう」
「余計なお世話、…におーがデカすぎなだけ」
「学年で一番小さいお前さんが言えることじゃなかよ」
…むう、におーには口で勝てない。
両親は二人とも背が高いのに何で私はこんなに小さいんだろう。
「…におーが私の身長奪って大きくなったんだ」
「言い掛かりは止めんしゃい、まーくん泣くナリ」
「泣けよ」
「……田中、目がマジぜよ」
におーが泣いたら写メってファンに流してやろうと思ったのに。
「ファンに流したら柳生にチクる」
「ごめんなさい」
「流石田中、お利口さんじゃ」
におーは私の頭を撫でる。
紳士で優しいやぎゅに勝てないって知ってるから、におーはこうやって脅してくる。
…今度におーが授業サボってたこと幸村くんに言ってやる。
「におーは何で屋上にいるの」
「んー、サボり」
「いけないんだ、先生に言ってやろ。幸村くんに言ってやろ」
「お前さんもサボっとるし」
「…私は自主休学だし」
「じゃあ俺も自主休学じゃき」
「……?」
訳が分からない。
におーが私がサボるとすぐにやって来ることとか、席が遠いのにわざわざ話し掛けに来たりとか。
休み時間になると丸いくんからお菓子を奪って私に食べさせたりとか。
よく分かんない、におーは。
「…田中ー暇だぜよー」
「………」
「田中ー」
「……………」
「名前」
「! いきなり名前で呼ばないでよ」
「田中が返事しないんが悪いんじゃろ」
におーが悪い、私が寝ようとしてるのに構って構ってって感じで声を掛けてきて。
「ちゅうか、お前さん変わっとるのう。俺に名前呼ばれたら大抵の女は顔を赤く染めるモンなんじゃが」
「ありがとう」
「……褒めとらん、のじゃが」
微妙な顔をしたにおーが言う。
…え、違うの?
「まあええ、お前さんがそういう性格だって知っとるきに」
「どんな性格」
「プリ」
「何でもプリって言えば許されるって思わないでね」
「……………黙秘権試行じゃ」
「却下」
「それをまた却下じゃ」
……拉致があかない。
「…もういいや」
「もうええんか」
「眠い、飽きた」
「俺は飽きとらんぜよ」
「知らないー」
俯せになって寝たフリをすると暫くにおーは黙っていたかと思うと、こちらを覗き込んだ。
「…ピヨ」
頭を撫でられ、私は完璧に起きるタイミングを失っていた。
…におーの癖に。
におーはそうやって暫く私の頭を撫でていたあと、呟くように言った。
「好いとうよ、名前」
ポンと軽く頭を叩きにおーは起き上がって立ち去った。
「……え、におー?」
ポカンとして私は屋上のドアを見つめていた。
におー、がそんなこと言うなんて。

















「…はあ」
どうしよう、におーのせいだ。
におーがあんなこと言わなければこんなに考えなくてよかったのに。
「田中ー」
「あ、丸いだ」
「だからお前は俺の名前をいつになったら覚えんだよ」
「…田中」
「えーだって丸いじゃん」
「よっしゃ、シメる」
「…………」
におーを無視して丸いと話し掛けてるとにおーに腕を掴まれた。
「…あ、丸い。そういえばじゃこーが探してた」
「……お前いい加減人の名前ちゃんと呼べよ。それに、仁王が俺をガン見してくっから無視すんのやめてやれよ」
呆れた口調で言うと丸いは「幸せにな」なんて言って歩いて行った。
……うん、訳分かんない。
「田中、何無視しとるんじゃ」
「…してない、」
「しとるだに」
……今日のにおーは何だか可笑しい。
「お前さん、まさか…」
何かに気づいたような顔をすると、ニヤリと口元を歪ませる。
「何、かな」
「聞いてたんじゃろ、あのとき」
「え、何で…」
「まあ起きとったの知っとって言うたんやけどの」
じゃあ何で勿体振った言い方したの。
「………寝る」
「寝たら田中の髪の毛結ぶぜよ」
「じゃあ寝ない」
結局におーには勝てないらしい。
「ククッ、やっぱり田中は面白いナリ」
「……ん」
何だかんだで私はにおーといるのは嫌じゃないらしい。
におーと私はこのくらいが調度いいのかもしれない。
…におーがどう思ってるのかは分からないけど。
「好いとうよ、名前」
けどやっぱりにおーのこういうところは苦手だ。

───
柚様リクエスト『短編で仁王か柳か財前(タメ設定)』でした。
もしくは『オタ事情or金ちゃん姉の番外』でしたが、今回は短編で仁王とのお話で…。
いやしかしすいません、意味不明な文で。
柚様のみお持ち帰り可能です。


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