「源次郎さん…今日はチョコレートを持って来たのだけど……」
「うむ、頂くでござる!」
昼休み、学校の中庭で市と源次郎…真田幸村はベンチに座って過ごしていた。
「……仲良いよね、あの二人」
屋上で食べていたテニス部レギュラー達の目に映り、幸村はぽつりと言った。
「うむ。女子が苦手な兄上が織田とは普通に会話出来ているしな……」
「良い雰囲気ではあるが………」
「あの二人、付き合ってねえんだよな……」
ジャッカルの言葉に全員が頷いた。
二人は友達である。
端から見ていると本当に付き合っていないのか疑問に思うこともある二人だが、事実付き合ってはいない。
「……何で付き合わないんかのう」
仁王が呟き、お茶を一口飲む。
「そうっスよねえ…織田先輩と真田先輩が付き合ってくれればまだ諦めつくんスけど…」
はあ、と溜息を吐いた切原にクッキーを差し出しながら丸井が言う。
「お前、織田のこと好きだったのかよ。……ああでも、織田と話してるときお前そんな感じだったよな」
納得している丸井の手元から切原はクッキーを一つ取り、口に入れる。
「だって今まであんな良い先輩いなかったんですもん」
「…へえ、良い度胸だね赤也」
「へ?あ、いや別にそういう意味じゃないっスよ!?」
笑顔の幸村にそう言うと市を見つめる。
「女の人って、俺らのことすぐに顔で見るじゃないっスか。見た感じとかで性格まで決め付けて来て……」
「ああ…まあ、確かに」
「それがないのもそうなんスけど、何か織田先輩の側って安心出来るんスよね」
切原の言葉に納得しつつ、再び中庭にいる二人を見遣る幸村。
「……にしてもさ、こうも進展がないと腹が立つよね」
「それは言えてるな」
「しかし、年頃の男子と女子が付き合うなど……」
「弦一郎は黙ってて。二人とも、焦れったくてしょうがないんだよね…ぶっちゃけさ、源次郎さんがああやって女子と普通に話せるとかないし?あの世話係みたいな人…佐助さんに聞いてもいないみたいだし」
「幸村君、いつの間に仲良くなったんだよぃ」
「ふふ、まあ色々…ね。それにジャッカルの方が仲良いと思うよ」
笑顔の幸村に質問をした丸井は黙ってクッキーを食べはじめた。













「市殿は食べないでござるか?」
「市はもうお腹一杯だから………」
「そうでござるか…。でしたら、某も食べませぬ!市殿と食べた方が美味故」
笑顔で言う源次郎に市も控えめに微笑む。
「ありがとう、源次郎さん……」
「いえっ某の我が儘でござるので……」
ワタワタと首を横に振る源次郎に市は可笑しそうに口元を抑える。
「源次郎さんたら…市に合わせてくれるなんて、優しいのね……」
「やっ優しい…!?いっいえ、そのようなことありませぬ!」
かああ、と頬を身につけた赤い鉢巻きと同じくらいに染め、源次郎は答える。
「某なんかより、よっぽど市殿の方が…!」
「ありがとう……」
「何だか市殿が意地悪でござる…」
ショボンと肩を落とす源次郎に市は首を傾げる。
「意地悪なんかしてないわ…」
「う、うむ…。あ、そういえば市殿にお渡ししようと思っていたのでござるが……」
ふと思い出したように源次郎はブレザーのポケットを探る。
「市に渡したいもの……?」
「うむ。確かこの辺りに…あ、ありました!これでござる!」
輝かんばかりの笑顔で源次郎が差し出したのは彼岸花をモチーフにした小さなペンダント。
「これ………」
「その…縁起が悪いかとも思ったでござるが、市殿のいめーじにぴったりだった故…」
様子を伺うように最後の方が小さくなった源次郎を見て、市はそっと受け取った。
「ありがとう…市、嬉しい……」
受け取った市に嬉しそうに源次郎は笑う。
「お気に召していただけたなら嬉しいでござる!」
「源次郎さんが贈ってくれたものだもの……気に入らない訳ないわ…」
市はそう答えると口元を緩ませた。

───
紅姫様リクエスト『緋花で婆裟羅幸村も転生で甘夢』でした。
真田副部長の兄な設定ということだったので、名前は源次郎。
源次郎なのに兄とはこれいかに。
ちなみに佐助さんは皆さんお馴染み猿飛さん家の佐助さん。
彼も彼で相変わらずの世話焼きしてます。
紅姫様のみお持ち帰り可能です。


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