「ぐ…っ」
全国大会決勝戦S1。
その試合に出場する筈の越前が未だ来れる状態ではない為、金太郎が時間稼ぎにと立海の部長である幸村と試合をしていた。
目に見えてボールを追う姿がぎこちなくなってきた金太郎は、とうとう膝を着いた。
「──これで終わりだよ」
幸村の声が会場に響く。
鋭いスマッシュがコートに突き刺さる。
それと同時に紅い髪を靡かせた男が客席から飛び出して来てそのボールを打ち返した。
「やれやれ、金ちゃんも無茶すんなあ」
五感を奪われ何が起きたか分かっていない金太郎を肩に担ぎ上げながら関西独特の訛りを含んだその男に、その場が静まる。
「君は…」
打ち返されたボールをラケットで受け止めラリーを止めた幸村が問う。
「名前…」
不二の声が男──名前を呼ぶ。
「んー、何や?周助」
金太郎を四天宝寺のレギュラー陣が集まっている場所まで連れて行きながら視線だけを向ける。
「どうして、君が此処に……今は確か………」
「嫌やなあ。俺やって青学の一人やし?それに…リョーマ、まだ来れへんやろ?せやから俺がそれまで立海の部長さんのウォーミングアップに付き合ったろ思うて。……それに俺も強いやつと戦いたいんや!」
それまで強気な笑みを浮かべていた名前が金太郎と同じ純粋な笑みをにこりと浮かべて言う。
「へえ…今度は君が俺の相手をしてくれるのかい?」
「おん。…まあ、リョーマが来るまでやし可愛い後輩が倒す相手の体力消費させる訳にもいかんから軽ーくやけどな」
「ふうん…良い度胸だね」
幸村の言葉に名前はスウッと息を吸う。
「俺は遠山名前や!楽しい打ち合いしような!」
至極楽し気な声で自己紹介をした名前に幸村は「楽しい?…まあ楽しめたら楽しみなよ」と返し、サーブの体制を取った。
「あーっワクワクすんなあ!」
名前が低く構え、幸村を見据えると幸村はサーブを打った。
パコンパコン、とボールのラリー音が響く。
「……名前」
手塚が心配そうに名前を見つめた。
いくら繋ぎとはいえ名前が出る必要はなかった筈。
ましてや、現在病院にいた筈の名前が何故…そう考える手塚だったが名前の声に考えるのを止めた。
「行っくで…!超ウルトラグレートデリシャス大車輪山嵐!」
金太郎のものよりも威力があるそれに幸村は冷静に対処する。
「打ち合いって言う割には強い技だね」
「こんくらいで強い言うたらリョーマに負けてまうで?」
「……言うじゃないか」
打ち合いを続けていると、名前がボールを片手で取る。
「止ーめた」
「な…っ」
幸村がその言葉に驚きを隠せなかった。
未だイップスも起きていないこの状況でいきなり何を、と幸村は思う。
「やってぜっんぜんおもろないやん!幸村…言うたっけ?俺、テニスは楽しくやるがモットーなんや。そないなつまらんテニスしとるやつとはやりとうない」
「…………」
「それに、リョーマも来たみたいやし?」
その言葉と同時に全員が後ろを振り向く。
そこには確かに越前の姿があった。
「お待たせ!」
不敵に、いつも通りの笑みを浮かべ越前は言った。
「どうなるんかな、この勝負……リョーマ気張りいや!」
「ういっす、名前先輩!」
名前の言葉に力強く越前は頷いた。
──勝負は此処からである。

───
星流様リクエスト『金ちゃん姉(or兄)が中三で青学に通っていたら』でした。兄書きてえ!の衝動に刈られて兄Ver.
兄はどちらかと言えば策略家です、純粋ですが時折何かクール。
個人的に書きたかった決勝乱入でした。
星流様のみお持ち帰り可能です。


戻る


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -