「ひーかーるー」
「何や、うっさい」
財前が朝起きると何故か名前がベットの端に腰掛けていた。
「ちゅうか、何で此処におんねん」
「あんな、光の母ちゃんが入れてくれたで!」
「オカン…何やっとんねん」
はあ、と財前は溜息を吐くと「起きるから退きいや」と言いながら起き上がった。
「ひーかるー、」
財前のベットの上に寝転がりながら名前が声を掛ける。
「何や、今着替えとるんやけど」
「光、最近ぶかつぶかつ言うて遊んでくれんから来たんに、嫌やった?」
「仕方ないやろ、サボったらあの人ら煩いし。金太郎はどうしたんや」
「今日、金ちゃんおらんからつまんない」
「…何でいないんや」
「虫歯あった言うて母ちゃんに歯医者連れてかれた」
「………自業自得やろ、」
名前の言葉にそう答えると財前は上着を羽織った。
「ほら、行くで名前」
「え、何処にや?」
「ストテニ。名前、テニスしに来たんやろ、その格好」
「光凄いなあ、何で服で分かるん?」
「…やっぱアホやろ」
「アホやないし!うち、アホやないもん!」
ムキになって言い返す名前にフッと鼻で笑い髪を撫でる。
「ほら、ええから行くで」
「…おん!」
財前に頭を撫でられたことですっかり機嫌がよくなり、名前は財前にじゃれつく。
「暑いんやけど」
「離れんもん」
ぎゅう、と名前はへばり付いたままで言う。
力の強い名前を引きはがすのは面倒だと財前は溜息を吐くに留めラケットバックを手に取った。
「ほら、早く行くで。遅くなるとストテニ空きなくなんで」
「それは嫌や!早う行くで光!」
パッと離れるとバタバタと近くに置いてあったウサギリュック(背中の方にラケットを入れる為のネットがあるお手製)を肩に掛ける。
「ほらっ早う早う!」
ぐいっと財前の腕を引っ張る名前。
「力強い、ちゅうか何で引っ張んねん」
「光が動こうとせんから」
「…朝飯も食えないんか。オカン、ゼリーある?」
「あるで。こんなこともあろうかと買い溜め済みや」
冷やされた飲むタイプのゼリーを投げて渡され、財前はそれを受け取ると名前に引っ張られながら外に出た。















「結局、ストテニ空いてへんかったな…」
「まあ、遅かったしな。…名前、落ち込んでるの止めえや、うざい」
べしり、と頭を叩くと財前は時計を確認する。
「この時間なら、平気か。名前、行くで」
「行くって……何処にや?」
「ストテニやなくても学校行けばコートあるやろ」
「学校、て……光の学校なん?」
「………それはない。あん人らに会ったら煩いやろうし」
考え込み財前が告げた言葉に、名前は首を傾げた。
「やったら何処でやるん?」
「廃校になったとこや」
当たり前のように言うと財前は名前の手を引く。
「まだ廃校になったばっかやからコートもそんな荒れてへんし、この時間なら誰も来とらん」
「光、物知りやなあ」
「こないだ見つけただけや」
感心したように見つめる名前にそう言い、財前は歩みを早める。
「光とテニスするん久々やな!」
「そないに楽しみやったんか?」
にやり、とあくどい笑みを浮かべて言う財前に「おん!」と返す名前。
「光とテニスするん楽しいんやもん!」
名前の純粋な瞳に何も言えなくなり、財前は暫く沈黙したあとに呟くように言った。
「……せやったら、早う中学に上がれや」
「光、何か言ったん?」
「何も言うとらんし」
財前の言葉に、名前は首を傾げながら「そうなん?」と言った。
「試合は怠いからせえへんからな、ちゅうかもう昼近いからする元気ないやろ」
そんな名前の言葉を黙殺し、財前は話を変えた。
「うー…まあ、お腹は空いとるけど。うち、光とテニスしたいんや」
「…とりあえず昼食ってからや、試合やるんは。今はラリー。ええな?」
「試合やってくれるん!?なら、ええで!約束や!」
全身で喜びを表すように跳びはねる名前に呆れた顔をしつつも、財前はほんの僅かに笑った。

───
理一様リクエスト『金ちゃん姉で財前とほの甘な日常』でした。
限りなく財前オチな雰囲気がある金ちゃん姉連載です←
財前と名前は仲良し。
財前はツンツンデレで、名前は懐ききってるワンコなイメージ。
そこに更に金ちゃんが加わってきます。
理一様のみお持ち帰り可能です。


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