心で笑ってたあの頃
 

「こんにちは、市ちゃん!久々やね」
「小春が言うから来てやったで」
「…ま、今日はよろしく頼みますわ」
「こんにちは…小春さん、一氏さん、財前さん……」
今日は三連休の初日。
大阪から神奈川まで泊まりで遊びに来た3人を市は持て成していた。
「相変わらずの広さやな、この家」
「ホンマ、市ちゃん一人で住むには広すぎよね…」
寒々とした部屋を見て、小春と一氏は呟いた。
「あ、市先輩。土産持って来ました」
片手に下げていたビニール袋を市に手渡し、財前が言った。
「ありがとう……」
「構いませんわ、こんくらい当たり前やし」
市の言葉を聞き、財前はそう返した。
「白い恋人のパチモンの面白い恋人…おいおい光、これを何でチョイスしたんや」
「………ユウジ先輩、チョイスとか古いっスわ」
「駄目出しすんなや!」
一氏が財前にツッコミを入れる。
「ああ、せや。市ちゃん、お風呂は一緒に入って沢山話しような」
「うん……」
「待てや、小春!小春と一緒に入るんは俺やろ!」
「ユウ君、アタシは女でユウ君は男やで?」
「先輩ら、何で違和感なく話してんですか」
財前の蔑んだような目が一氏と小春に注がれる。
「市先輩も、いくら小春先輩が女らしいからって流されんでください」
「……小春さん、男性だったの?」
そんな市の呟きに財前は沈黙した。
「ホンマ、市ちゃんはええ子やなぁ」
うふふーと笑う小春。
「そうかしら……?」
「そうやで。それにひかるんも……」
「小春先輩、早う荷物置いて来たらどうですか」
「あら、そうだったわ。じゃあちょっと荷物置いて来るで」
「小春ぅ、手伝うでー!」
一氏と小春が奥に荷物を置きに行く。
「市先輩、お風呂は各自一人で入るんで良いっスよね」
「うん……あ、ご飯は何にする…?」
「じゃあデザートは善哉で頼みますわ」
「ええ…腕に頼を掛けて作るわ……」
「ホンマですか、市先輩の善哉美味いんで嬉しいっすわ」
そんな二人の会話に影からこっそり見ていた二人は小声で言った。
「いやーん、ひかるんったら相変わらず市ちゃんにはデレなんやから!」
「ホンマ、何があったらああまで懐くんやろな小春」
「ふふっ恋は人を変えるんよユウ君」
「小春ぅ!俺は小春と会ったときから小春以外が背景にしか見えなくなったで!!」
「ユウ君…」
「小春…」
二人の声に財前が冷めた目で言った。
「……どうでもええですけど、早うこっち来たらどうですか」
「気付いとったんなら初めっから言えや!」
「すんません、なんか話し掛けたくなかったんで」
「お前…」
謝る気がさらさらない財前の言葉に一氏はキッと睨み、雰囲気が悪くなる。
「一氏さん……」
「何や市」
市が話し掛けるとその雰囲気が一気に和らぎ、一氏が返事をした。
「今日のご飯、何か食べたいものはある……?」
「ああ、……オクラのサラダが食いたい」
照れ臭そうに言った言葉に市は頷いた。
「オクラのサラダね………。小春さんは?」
「アタシ?アタシはそうね…市ちゃんの肉じゃがが食べたいわ」
「あれ、美味いっスよね」
「確かに、オカンが作るんより美味い」
小春のリクエストに、二人が同意する。
「じゃあ肉じゃがとオクラのサラダと善哉ね………」
「光はまた善哉頼んだんか」
「そういうユウジ先輩こそオクラ頼んどるやないですか」
「もうっ二人とも喧嘩は駄目やで」
またも雰囲気が悪くなるものの小春が諌めた。
「寝る場所はいつもの部屋に4人で布団を敷きましょう…?」
「じゃあ俺が市先輩の隣で」
「アタシも市ちゃんの隣やな」
「俺は小春の隣やないと嫌や」
「ユウ君、乙女の隣に気安く来んなや」
「小春っ!?」
「…ちゅーかユウジ先輩、小春先輩に夢見過ぎやろ」
財前のボソッと呟かれた言葉に気付いた人はいなかった。



















「さて、それじゃあ…」
これから寝るというとき、小春がそう切り出した。
勿論寝る場所は一氏、小春、市、財前になっている。
一氏と財前はアディ〇スのジャージ、小春はフリルがついた可愛らしいネグリジェ、市は着物のような形の和風なパジャマだ。
「何かやるんか小春」
「せっかく市ちゃんとおるんやから寝たら勿体ないやろ?」
「それはそうかもしれへんけど……」
「市先輩うとうとしてはりますけど」
「あらホンマ。……ロックオーン」
「小春! 浮気かあぁぁぁぁあ!?」
「ユウジ先輩、市先輩が目覚ますんで止めてください」
財前に釘を刺され一氏は口を閉じた。
何だかんだで3人とも市に対して甘い。
「にしても、市ちゃんたら最近ホンマ忙しそうやったな」
「そうやな……いつもならよく連絡入れてくれてたんに、殆ど連絡寄越さんかったしな」
「立海のテニス部に目ぇ付けられたみたいやしな。…何で市先輩大阪やないんやろ」
「ひかるん、それは言わない約束やで。それに、市ちゃんかて大阪から引っ越したくなかったんやから」
「ああ、確か市先輩、前は大阪におったんでしたっけ」
「そうや。あれは衝撃やったで……」
二人が懐かしむような顔で言ったのを、財前は面白くなさそうな顔をして見つめた。
「大丈夫やで、ひかるん。ひかるんが好きなんは知っとるから」
「別に小春先輩のこと、そういった意味で好きやありませんから」
「何やと光!小春の魅力が分からないんか!?」
「分かりたないっすわ」
そんな会話をぼんやりした頭で聞きながら市は仄かに笑った。―――
キリリク6000番で『大阪の3人(小春・ユウジ・財前)とパジャマパーティー。お泊り会』でした。
この他にも『赤也とほのぼの(実体、幽霊どちらでも可能)』、『金ちゃん姉と緋色主のツーショット』でしたが今回はあえてお泊り会で。
ツーショットの方は書いてみて、失敗だったのでお蔵入りです。(それでも構わないと言っていただければサイトの方に載せます)
リクエストしてくださったリリ様に捧げます。



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