遊園地やで
 

「遊園地やーっ!」
「おいおい、はしゃぎ過ぎて迷子になるなよ」
「あ、うちジェットコースターに乗りたい!」
「聞けよっ!」
「まあまあジャッカル、お前がちゃんと見ててやればいい話だろぃ?」
「ブン太、お前もしっかり面倒見ろよ……?」
「お、あのホットドック美味そー」
「(聞いちゃいねえ…)」
休日、部活もなく暇をしていた銀音は丸井とジャッカルに誘われて遊園地に来ていた。
久しぶりに来た遊園地にテンションが上がりっぱなしの銀音は一瞬でも目を離したらいなくなりそうな程目を輝かせていた。
「ジェットコースター行ーこーうーやー」
「あ、おい!引っ張るなよ…!」
「あーっ銀音まだ俺ホットドック買ってねえんだよ!」
ぐいぐい引っ張る銀音に引きずられ、二人はジェットコースターへと連れて行かれる。
「申し訳ありませんが、身長が足りないので……」
「えーっ嫌やー!うちジェットコースター乗りたいねん、ええやろ姉ちゃん!」
「仕方ないだろ、また身長が伸びたら連れて来てやるから」
駄々をこねる銀音を宥めつつ、ジャッカルは溜息をついた。
「(この分じゃ楽しんでる余裕なさそうだな…)ブン太、さっきから黙ってるけどどうし…た」
後ろにいるであろう丸井に話し掛けようと振り向けば丸井はおらず、ジャッカルは語尾が小さくなっていく。
「あれー丸井は何処行ったん?」
「多分さっきのホットドック売ってるとこだと思う、けどな…」
その場でジッとして待っている筈がないと思いながらジャッカルは銀音を連れて歩き出すのだった。



















「やっぱいねえな」
「丸井迷子なんか?」
「あー…そう、だな」
ピーンポーンパーンポーン。
『迷子のお知らせです』
園内放送が流れ始める。
「誰か迷子になったんやなー」
『神奈川県からお越しのジャッカル桑原君、保護者の丸井ブン太さんが迷子センターで待っています。大至急迷子センターまでお越し下さい』
「………………」
「ジャッカル迷子やったん?」
放送が切れ、ジャッカルは無言になった。
そんなジャッカルの様子に気づかずに銀音はジャッカルを見上げて尋ねる。
「俺は迷子じゃねえ、ブン太のやつ自分からはぐれておいて俺がはぐれたことにしやがったな…!」
仕方なしにジャッカルは入り口の近くにある迷子センターへと足を向けた。
「ジャッカルー、丸井って迷子センターにおるんやろ?」
「そうだな、にしても……」
遠目から見てもすぐに分かる赤い髪を見つけて、ジャッカルは溜息をついた。
「あの短時間でどれだけ買い込んだんだよ…」
両手一杯に食べ物を抱えた丸井はこちらに気づくとジャッカルと銀音のところへと歩いて来た。
「よっ、遅かったな」
「遅かったな、……じゃねえだろ!」
「丸井ー迷子やったん?」
「ジャッカルと銀音が迷子だったんだろぃ?」
「お前が食い物買いに行ったからだろうが」
「あ、ジャッカルこれ持てよ。勿論食ったら怒るからな!」
マイペースな丸井はジャッカルに手に持っていた食べ物を押し付け、銀音の手を握った。
「今日は存分に天才的な楽しみ方を披露してやるぜ、覚悟しろよぃ?」
「天才的やでーっ!」
「あんまりはしゃぐなよ、二人とも」
一応釘を刺すジャッカルだが聞いていない二人に半ば諦めたような顔をした。
「まず最初はコーヒーカップからだな。回しまくるぜ、……ジャッカルが!」
「って俺かよ!」
「ジャッカルのツッコミが段々キレ増しとるな!」
「(あまり嬉しくねえ)」
銀音の言葉に複雑な気持ちになるジャッカルだった。
「それじゃあ回るぜぃ!」




















「銀音、お前回し過ぎだろぃ……」
「えー金ちゃんの方がグルグルなるで?」
「ぜってー銀音の弟と遊園地に来ることがあったら回させねえ」
「金ちゃん回すの好きやから多分暴れるで?」
「あれ以上やったら壊れるから止めとけ」
ジャッカルの言葉に渋々頷き、銀音は遊園地のマップを広げた。
「コーヒーカップは終わったから…絶叫系に乗んねえ?」
「さっきのジェットコースターはともかく他のジェットコースターなら銀音でも乗れそうだな」
「あの一番グルグルするやつがよかった」
「銀音、あと少し足りねえくらいだからすぐに乗れるようになるぜぃ?」
面白くなさそうな顔の銀音を丸井が頭を撫でながら言うと納得して笑った。
「…お前、案外兄貴分だよな」
「まあ俺は天才的だから下の面倒を見るのだって簡単だぜぃ」
「丸井ー肩車してーな」
「あ?良いけどあんまり騒ぐなよぃ」
「おん、」
丸井に肩車をしてもらい嬉しそうに声を出す銀音。
まだまだ遊びは始まったばかりである。



―――
キリリク14000夕鶴様リクエスト『金ちゃん姉で明るい話』でした。
明るい話とのことでしたのでプラチナペアの二人と遊園地へ。
この話が少しでも皆さんを笑顔に出来れば良いと思います。



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