これから始まるのは確か闇タコ焼きパーティーだった筈
 

「皆、闇タコ焼きパーティーするよ」
「………あの、幸村部長」
「うん?何かな赤也」
「いきなり銀音の家に押しかけてやるとか言わないっスよね?」
「大丈夫、もう銀音の家に行くって連絡しておいてあるから」
「用意周到過ぎて正直やりたくねえっスよ!」
あー、こんにちは。
立海大附属2年、エースの切原赤也だぜ。
今日、幸村部長がいきなり闇タコ焼きパーティーをするって言い出した。
嫌な予感しかしないのは俺の気のせいか?










「皆集まったね、ちゃんと中に入れる具は持って来たよね」
幸村部長の声に全員で頷いた。
「じゃあこれから始めるけど……蓮二、説明よろしく」
柳先輩が説明を任されて立ち上がった。
「ああ、今日するのは闇タコ焼きだ。ルールは簡単、タコ焼きの具を持って来てそれを使ってタコ焼きを作る。後は全員好きなものを選び食す。ただし、一度選んだものは全て食べることだ」
「あ、勿論食べられるものだけだからね」
柳先輩の言葉に幸村部長が付け足した。
「はいはーい幸村君質問」
「何かな丸井」
「食えれば何でもありなんだよな?じゃあこれは良いよな」
ガサガサと袋の中身を幸村部長だけに見せる丸井先輩。
「うん、平気だよ」
「よっしゃ!」
何だろう、丸井先輩のは食いたくなくなった。
あの幸村部長の笑顔からしてゲテモノだ……!
「それじゃあ各自焼き始めていいよ」
こうして、闇タコ焼きパーティーは幕を上げた…。



















「幸村ー、うちも出来たで!」
「早いね銀音」
「やって慣れとるもん」
着々と周りが出来上がっていく中、俺は悩んでいた。
……確実に普通のなんか作ったら幸村部長にイップス掛けられる。
「とりあえずこれ入れときゃいいか」
調度持っていたカロリーメ〇ト(メイプルシロップ味)を細かくして俺はタコ焼き?を作った。
「皆出来たみたいだね。それじゃあ選んでいこうか」
「俺はこれにするぜぃ」
「では私はこれを」
「ふむ…では俺はこれにしよう」
「俺はこの少し焦げたのを貰うぜよ」
「じゃあ俺はこれだな」
「俺はこれだ」
と、全員が手を伸ばし始めた。
どれにしろ危険だと思うから俺はあえて手を伸ばさなかった。
「それじゃあまずは弦一郎からね。これは…ああ、蓮二のか」
幸村部長が皿の下に置いてある名前の紙を読み上げる。
「む、蓮二のものであったか」
「そのようだな」
「それじゃあしっかり食べてね」
「ああ、」
真田副部長は爪楊枝で一つタコ焼きを口まで運んだ。
「……ぐぅあっ!?」
ドサリ。
真田副部長は白目を向いて倒れた。
「「「「「……………」」」」」
「あれ、中身は何を入れたんだい蓮二?」
「ああ…貞治から乾汁を貰ってな。具はタコだが生地を作るときに乾汁を混ぜたんだ」
「真田寝てもうたん?」
幸村部長と柳先輩、銀音だけが平然と話している。
「…さ、じゃあ弦一郎はほっといて続きをしようか!」
何事もなかったかのように幸村部長が言った。
初っ端からこのパーティー怖え。
絶対に被害者が続発するだろ。
「じゃあ次は…ジャッカルかな」
「お、俺…?」
可哀相に、ジャッカル先輩。
顔がもう真っ青だ。
「作ったのは…柳生だね」
「おや、私のでしたか」
「柳生のか…」
ジャッカル先輩はホッとした顔をした。
紳士って呼ばれている柳生先輩のだし、きっと変なもん入ってないもんな。
「それじゃあいただきます…………んぐはっ!」
ドサリ。
ジャッカル先輩も倒れた。
………ええええ!?
「柳生、中身は?」
「中身ですか?マーマイトですよ」
※マーマイト…栄養抜群で野菜をペースト状にしたもの。パンに塗ったりして食べる。凄いまずい。
えげつねえ……。
ジャッカル先輩、成仏してください。
「あ、じゃあ次は…」
既に二人が脱落済み。
このまま行くと全滅も有り得る。
……いや、まだジャッカル先輩と真田副部長が作ったタコ焼きがあるしな。
まさか柳生先輩があんなもの入れるなんて思わなかったけど。
「はい、丸井ね」
「おう」
「えーと…作ったのは赤也だね」
「赤也のなら大したもん入ってねえだろぃ」
普通に口に入れた丸井先輩。
「……………、」
「丸井先輩?」
フラッ、バタリ。
「丸井先輩!?」
カロリーメ〇トなのに気絶した!
「あ、ゴメン。間違えて自分の皿にあった紙を読んじゃった。本当は弦一郎のだって」
「副部長の!?」
副部長だけは危険物入れないと思ってたのに…!
「えーと、中に入ってるのはキムチ炒飯だね」
「キムチ炒飯で気絶したんスか!?」
「甘いな、赤也。弦一郎が入れたキムチ炒飯はただのキムチ炒飯ではない」
「ただのキムチ炒飯じゃない…?」
「弦一郎はキムチにこだわり、米にこだわった。米はこの時期最もよいとされる米を使った。そしてキムチも厳選したものを使用して作った」
「それただの美味いキムチ炒飯じゃないっスか」
俺の言葉に、柳先輩はかぶりを振った。
「確かに、キムチは厳選されたものだ。ただしそれは美味いものではない……辛いものを厳選したんだ」
「………………、」
「幸村、これ辛いなあ」
「本当にに辛いね」
「あの二人見てると辛くないように見えんですけど」
丸井先輩の残したタコ焼きを食べる幸村部長と銀音。
「ああ、それは二人が辛いものが平気だからだろう?」
「………えええ」
「さっ、キムチ炒飯も食べたことだし次行くよ」
「次は誰かの」
「じゃあ仁王、行ってみようか」
「………プリ」
「ぷりー!」
「あ、良かったね仁王。仁王のは銀音が作ったものだよ」
「…今回に限っては嫌だがの」
「仁王早う食べてー」
「分かっとるよ」
仁王先輩はタコ焼きを口に入れた。
「…これ、普通に美味いの」
「やろ?マグロ入れたんや」
「醤油付けても美味そうじゃ」
普通に当たりだった。
つーか羨ましい。
「じゃあ次は柳生行ってみよっかな」
「私ですか」
「柳生のは…仁王が作ったタコ焼きだね」
「仁王君の作ったものですか。……仁王君、先程色々入れてませんでしたか?」
「闇タコ焼きじゃけえ、秘密ナリ」
「そうですか…ではいただきます」
柳生先輩は一つ食べた。
「……すみません、少しお手洗いをお借りしますね」
口元を抑えて柳生先輩は部屋から出て行った。
……流石紳士。
「仁王、中は何だい?」
「中身は飴ちゃんとキャラメルぜよ」
「それは…きついな」
柳先輩が一言コメントした。
確かに、飴とキャラメルが溶けてるタコ焼きってきつそうだ…。
「じゃあ、俺はもう食べたから…蓮二の番だね」
「俺のはどうやらジャッカルのようだな」
「! てことは俺が丸井先輩の…?」
「ふふっ、やだなあ赤也。まだ俺の作ったものもあるよ」
幸村部長が笑顔でこっちを見てくる。
「い、いやだなー幸村部長。忘れる訳ないじゃないっスか」
「そう? ……それじゃあ蓮二」
「ああ、………ふむ、中に海苔とチーズを入れたのか」
結構美味いな、と柳先輩が呟いた。
「じゃあ銀音と赤也は同時に食べよっか。銀音のは丸井の、赤也のは俺が作ったタコ焼きだね」
「げっ……」
「え?」
「美味そうっスね幸村部長!」
「丸井が作ったん何か色違う気ぃすんねんけど…」
ああ、確実に違うよな。
見た目が黄緑だし。
本当に何入れたんだよ。
「まあえっか!いただきまーす」
普通に銀音は口に入れた。
「ふぐぅ!」
銀音は悶絶した。
「中身はフィッシュ・アンド・チップスだね」
「何やのこれ!めっちゃまずいやん!」
そう言って水を飲む銀音。
逆に気絶しない銀音ってすげえよな。
「じゃあ赤也。食べなよ」
「そ、スね……」
男は度胸、男は度胸……っ!
「………っ!?」
一口口に入れただけで俺の意識は飛んだ。



















「あ、起きたん?切原」
「……何とか、な」
まだ舌に味が残って嫌だ。
「先輩達は?」
「皆今は片付けしとるで」
「片付け?」
「せや、切原はもう少し休んどった方がええで。あんなん食べたんやし……」
あんなんって何だ!?
「俺、結局何食べたんだよ!」
「………………、まずいもん」
どれだけ聞いても誰も俺に教えてはくれなかった。
ただ幸村部長が笑顔で知らないと言ったときは正直ぞっとした。

―――
バレンタインフリリク。
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