ちょっと未来の立海大家族だよ、家族集合!
 

「にいちゃ!」
「あ?って、銀音かよ」
末っ子の銀音と五男の赤也。
二人が少し大きくなった頃の話。
「にーちゃ!あれなんや?」
「あれ、って…ああ。ペットショップだよ」
「ぺっとしょっぷ…て?」
「犬とか猫…あとはウサギなんかがいる場所だよ、まあ触れないけど……ってあれ?何処行ったんだよ銀音」
説明していると、気付けば銀音の姿がなかった。
「銀音?……まさか、」
いつもの散歩に行ったのかと考えるがその割にはこの辺りは人通りも少なく、辺りを見渡しやすい。
「ペットショップの中かよ…」
少しだけウンザリした顔で赤也はペットショップの中に入って行った。
「にーちゃ、にーちゃ!」
ペットショップの奥にあったモコモコとした塊の中からくぐもった銀音の声がした。
「銀音!?」
慌てて赤也が近付いた。
「何でこんなに沢山の動物に引っ付かれてんだよ!」
中から銀音を引っ張り出し、赤也は手を引いてペットショップを出た。
「にいちゃ、」
「次からペットショップは禁止だかんな」
「おん…」
しゅんとして銀音は頷いた。
「たく…ほら、帰っぜ」
手を引っ張り、赤也はゆっくり歩く。
「にーちゃ、おこっとる?」
「怒ってねえよ」
「へへ…」
銀音は嬉しそうに笑った。
「今日はひろ兄がビーフシチュー作ってくれるらしいぜ」
「びーふしちう?」
「ビーフシチュー。ひろ兄のビーフシチューは美味いぜ?」
「ほんまっ?にーちゃ、はよかえろう!」
ぐいぐいと手を引っ張る銀音。
「そうだな、でも走るとこけるから歩けよ」
「おん!」
言われた通りに歩く銀音。
二人の影法師は仲良く寄り添いながら長く伸びていた。


















「ひろ兄ただいまー!」
「ひりょにーちゃただいまー!」
「お帰りなさい二人とも。もうすぐ出来るので手を洗ってうがいしてきて下さいね」
「分かってる」
「わかってるで」
二人は返事をして、洗面所に行って手を洗い、うがいをした。
「おっ、美味そうな匂い。今日は…ビーフシチューか」
「比呂士の作るビーフシチューは美味いからの」
ブン太と雅治が外から戻ってくる。
「あれ、二人とも。ジャッカルは一緒じゃないのか?」
「精市母さん、ジャッカルなら後片付けしてるぜぃ」
比呂士と共に夕飯の支度をしていた精市が顔を見せて尋ねた。
「む、今日はビーフシチューか」
「父さん、そうだぜよ」
風呂上がりの弦一郎が肩にタオルを掛けた状態でやって来る。
「む?蓮二はどうしたんだ」
「俺ならここです、父さん」
玄関の方から蓮二の声がする。
「先程まで中にいた筈ですが……まさか、お二方?」
比呂士が何かに気付いたような顔をしてブン太と雅治を見る。
「何だよぃ」
「プリッ」
「ごまかさないで下さい。ジャッカル君が後片付けをしていたんでしょう?蓮二兄さんが気付いて手伝いに外に出ていった…違いますか?」
「知らんなり、俺は手を洗ってくるけえの」
「あ、おいっ雅治!」
比呂士の雰囲気に何かを感じとった雅治はブン太を置いてさっさと逃げた。
「ブン太君?」
「ひ、比呂士…落ち着けって!」
「私はこれ以上この上ないくらい落ち着いてますよ」
今までにないくらい眼鏡を光らせて、比呂士が笑う。
「比呂士、それくらいにしといたらどうだ?ビーフシチューが焦げるぞ」
見兼ねた蓮二が止めに入る。
「そうでした、今全員の分を持って来ますね」
蓮二に言われていつも通りの雰囲気に戻り、キッチンに戻っていった比呂士を見てブン太は助かったと息を吐いた。
「助かったぜ、蓮二兄さん」
「これに懲りたら次からはジャッカルに押し付けないことだ」
蓮二に釘を刺され、ブン太は渋々頷いた。
「あーっぶんにーちゃや!」
バタバタと部屋に飛び込んで来た銀音はブン太に一目散に飛び付いた。
「お、銀音。どうしたんだよぃ」
「あんな!にーちゃがまさにーちゃにあそばれてるで!」
「あー……良いんじゃね?いつものことだし」
どうでもいい、とブン太は呟き銀音を抱え上げた。
「ぶんにーちゃたかいで!」
きゃー!と騒ぐ銀音に気分をよくしたブン太は銀音を上に軽く投げた。
「たかいたかーい!」
「そーだろ?ほら、もういっか…」
「ブン太?」
ポンとブン太の肩に穏やかな声と共に手が置かれる。
「せっせせせせ精市母さん…」
「ふふっ、何やってるのかな?」
「せーままや!たかいたかいしてんやで!」
「そっか、良かったね銀音。でも危ないからやったら駄目」
ブン太の手から銀音を奪い、精市は笑った。
「あー…わりい。片付けに時間掛かっちまった」
「ふふっ構わないよ、ジャッカル。どうせそこの跳べない紅いブ太が押し付けたんだろ?」
外からジャッカルが戻って来て、誰にともなく謝った。
それに精市が満面の笑みを浮かべて答える。
「ねえ、飛べない紅いブ太」
「俺、別に飛べない紅いブ太じゃ……」
「え?」
「俺は飛べない紅いブ太だぜぃ、精市母さん!」
精市の笑顔に負け、ブン太は前言を撤回した。
「ぶんにーちゃ、ぶたなん?」
「そうだよ、銀音」
「ぶたにーちゃ、ぶたにーちゃ!」
純粋なその言葉はブン太の胸に深く突き刺さった。
「……銀音、あまり言ってやるな」
横でその様子を見ていたジャッカルが止めに入る。
「面白いところだったのに」
「母さん、そろそろ夕飯の支度が出来たみたいだ」
「あ、本当?ごめんね、比呂士。最後は殆ど一人でやらせちゃって」
「いえ、構いませんよ。後は温めるだけでしたし」
比呂士がそう答え、席に夕飯を置いていく。
「む、赤也!雅治!いつまでやっとるつもりだ!」
未だに戻って来ない二人を弦一郎が呼ぶ。
「すまんの、」
「まさ兄のせいじゃんかよ…」
ボソッと呟いた赤也の言葉を黙殺し、雅治は席に座る。
「では今日も恒例の…」
「銀音の隣が誰になるかじゃんけんで決めるよ」
その言葉をきっかけに、銀音を除く全員がじゃんけんを始める。
「今日は蓮二の隣か」
「れんにーちゃ!」
「銀音、熱いからしっかりと冷ましてから食べるんだ」
「おん!」
前髪をボンボンが付いたヘアゴムで止めた銀音は頷き、言われた通りに食べ始めた。


―――
キリリク5000で凜様からのリクエスト『金ちゃん姉番外編IFシリーズ立海大家族』でした。
まだIFシリーズ始動してませんがこんな感じに進めていこうみたいなものを感じとれたら幸いです。
このシリーズだと苗字呼びは全くないと思って下さい。
あったとしても学校名が苗字です。
それでは凜様へ捧げます。



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