青い春の皆様方へ
 

「あ…っついだあ…」
あまりの暑さに銀音はぐったりしていた。
既に暦上は秋になった今も暑さが酷く、雪国育ちの銀音にはとても辛かった。
「ううう…何で就職先間違えただか…」
嘆く銀音は青春学園にいた。
購買の競争率が高いのは銀音がいるからなのだが、この暑さで人が沢山来ると辛い。
クーラーが殆ど効かないのだ。
「ゆ…雪降らせてえべ…」
トレードマークのマフラーすら外す始末の銀音は若干人が減ってきた購買内を見た。
いつもならばサービスと言わんばかりに笑顔を振り撒くのだがそんな気力は全くない。
「ゆーきやこんこっ」
こっそりと自分の婆裟羅を発動して涼むのが精一杯だった。
「でも、今日はまだマシな方だべ…我慢、我慢だ」
ぶつぶつと呟き顔を上げると今日はまだ顔を見せていなかった生徒がパンを両手に抱えていた。
「よっ田中」
「……2650円だべ」
返事を返すのも億劫な銀音の様子に生徒──桃城は苦笑した。
「やっぱりまだ暑いからバテてるな、田中」
「雪国育ちナメたら駄目だべ。…あー、海堂が羨ましいべ」
「あんなマムシを羨んじゃいけねえな、いけねえよ」
「フシュー…んだと、桃城」
調度飲み物を買いに来ていたらしい海堂が桃城に睨みを利かす。
「何だよ、俺はそのまま当たり前のことを言っただけだぜ?」
「…上等だ、やんのかコラ!」
「そっちこそ!今すぐ…」
「あーっもう煩いだ!今すぐ帰れ(けえれ)!」
二人を追い払い、銀音は水を飲んだ。
「全く…いくらオラが精神的に年上だとしても、子供過ぎだべ」
いくらか回復した銀音は桃城が買おうとしていたパンを棚に戻した。
「手伝うよ」
「あ、不二だべ。見てただか?」
「うん、まあね。調度来たときに二人を追い出してたから見たとは言わないんだろうけど」
スッと横から手を伸ばして不二は手伝い始めた。
「助かったべ」
「まあこれくらいはね。…あ、そうだ。激辛豆板醤ラーメンは残ってる?」
「あれを食べるのは不二くらいだべ」
「美味しいのにね」
「オラはあんまり辛いもんは食わねえだよ」
不二の注文にラーメンを軽く茹でてスープを皿に入れる。
「相変わらずいい腕してるよね」
「そりゃあこれが仕事だべ、当たり前だ」
完成したラーメンをトレーに置き不二に出すと不二はお金を置いた。
「あと唐辛子のトッピングって何処にある?」
「それならさっき切ったのが…これだべ」
「ありがとう」
トッピングを大量に乗せて不二はトレーを持って移動していった。
「…あんな量の唐辛子、普通なら食べられないべ」
半ば感心したように不二を見送り、時間になるので購買を閉めた。
このあとは暫しの休息、やっと涼しい中のんびり出来るのだ。
「(この間作ったザッハトルテがあったべ。それと紅茶でも入れて…)」
計画を立てる銀音の顔はワクワクしていた。
やはり女の子、甘いものは大好きなのだ。
昼休みも終わり、食器を洗うのが終わった銀音は紅茶を入れてザッハトルテを用意していた。
「ねえ、俺の分もあるよね?」
「越前…おめえ、いつからいただ」
「ついさっき。日本に戻って来たからついでに学校にも顔を出しておこうと思ってね」
ちゃっかりご馳走になるつもりの越前を見遣り、溜息を吐くと銀音は越前の分も用意した。
「へえ、やるじゃん」
出されたケーキに越前は笑う。
「お褒めに預かり光栄だべ。…さ、紅茶が冷めないうちに早くするだよ」
肩を竦めながら言うと銀音はフォークを手に持った。



───
キリ番111000アイクロ様「緋花番外or少氷女子のIFで他校Ver.」でした。
今回は少氷女子の方を書かせていただきました。
あまりこのサイトじゃ現れない青春学園の皆様です。
たまには書いてみたくなるんです、何故でしょう。
夢主は意外にリアリスト。



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