暇を持て余した神の子の遊び
 

「さあ皆ー、リアル鬼ごっこの時間だよ」
「イエッサー!」
うふふ、とお花を飛ばすような微笑みを浮かべて我等が男子テニス部部長の幸村精市が言った。
幸村の思いつきで行われるサバイバルゲーム。
今回は鬼ごっこをしよう!と部活が始まる直前に言い出した。
勿論部活が始まる直前の為逃げ出すことも出来ず、レギュラー陣とマネージャーは強制参加になった。
ルールは簡単、鬼(幸村)に捕まったら負け。
勿論立海の敷地内のみ。
捕まったら五感を奪われるのかはたまた…何をされるか分かったものじゃない。
「あ、マネージャーはハンデあげるね。そうだな…じゃあ水鉄砲を使用していいよ」
はい、と手渡された水鉄砲は威力があるもので。
「ってこれ水圧が凄いやつじゃ………!」
「うん、そうだよ。田中は女の子だし…それで他の人を狙ってくれたら嬉しいな」
あ、今本音が最後に出た。
全員の心は一つになった。
逃げ切らないと命に係わる!
どうやら鬼の補佐に回ることになった銀音は一安心しながら幸村の横に立つ。
「今日の罰ゲームは何にしようかな?そういえば青学の乾から飲み物貰ってたよな……これ、捕まったら飲ませようか」
相変わらず楽しそうな幸村の呟きに銀音はゾッとした。
皆逃げて超逃げて。
「それじゃあ行こうか」










最初にターゲットにされたのは柳生だった。
「あはは、柳生ってば速いな」
「幸村……」
凄いいい笑顔の幸村に銀音はどう言葉を掛けたらいいのか分からなかった。
むしろ柳生、頑張れ…君の眼鏡の逆光は忘れないよ……!
そんなことを思いながら銀音は柳生の首筋目掛けて水鉄砲を撃った。
「うぐっ」
ドサリ。
銀音は上手い具合に柳生の意識を落とした。
「ナイス田中!」
「あああ…ごめん、柳生…!」
君の勇姿は忘れないよ…例え幸村が気絶している柳生に乾汁を飲ませようとして、眼鏡を鼻眼鏡にしていても…。
柳生の悲鳴が立海中に響き渡った。
「さあて次は誰を追い掛けようかなー」
楽しそうな幸村の後ろに立ち柳生に合掌しながら銀音は必死に聞こえないフリをした。
「じゃあ次はダブルスの仁王でも狙おうか」
「(仁王…どんな目に遭わされるのか分からないけど頑張って…!)」
終了時間までまだまだある時計をチラ見しながら銀音は思った。
これ無理ゲーだわ、と。
「と、その前に…そこにいる丸井。捕まえようか」
近くの茂みを指差す幸村。
それと同時に丸井が茂みから走って逃げ始めた。
「いたの?」
「さっき赤毛が見えたからね、気付かないフリして近付いてたんだ。さ、早く捕まえようか。罰ゲームは何にしようかな?」
一気にスタートダッシュを掛けて追い掛ける幸村の後ろを銀音は必死に追い掛けた。
「あはは、待ちなよ丸井」
「ゆっ、幸村君…!」
全力疾走の丸井を軽々追い掛けていく幸村。
まるで草食動物を追い掛けるライオンのようだ。
「丸井の罰ゲームはそうだなあ…三日間女装でいい?いいよね、はい捕まえた」
「嫌だ…!」
「拒否権はないよ」
捕まり、乾汁を飲まされた丸井の格好は立海ユニフォームにスカート…完璧に見た目は女子である。
「丸井…!」
「ほら、銀音。早く他のやつらを捕まえに行くよ」
ズルズルと引っ張られながら銀音は丸井の姿を写メった。
芥川に写メを送ろうと思いながら…。
「次はー…あ、あの天パは赤也だね。じゃあ赤也捕まえよっか」
「赤也逃げて超逃げて!」
目が爛々と輝いてる幸村の姿につい叫んでしまった銀音。
それを聞き切原は逃げた。
「………田中」
「……はい」
「お仕置きで男装ね。あと乾汁」
「……!」










銀音が目を覚ましたとき、全ては終わっていた。
ジャッカルはモヒカンヘアー(ウィッグ)に、切原はワックスでガチガチに固められた更なるワカメヘアー(むしろアフロ)、仁王は青のメッシュを入れられて髪を寝かせておさげ、真田はピカ〇ュウの着ぐるみを着せられていた。
ただ柳のみは何ら変わりがなかった。
「……あれ、柳は捕まらなかったんだ」
「捕まえたよ?」
「…え」
じゃあ何で柳は何もされてないの?
皆の疑問は一つになった。
「あ…あまり恥ずかしいから、見ないで……っ」
「……はあ?」
頬を赤く染める柳。
柳ってこんな性格だったっけ、冷静だったよね?
と全員が首を傾げる中、幸村が爆弾発言をした。
「連二の罰ゲームはね、恥ずかしがり屋の乙女な性格になることだよ」
「何をしたの幸村!?」
「ちょっと乾汁改良版を飲ませただけだよ?」
「レアだけどあれは色々まずいだろぃ!あんな参謀を見せたら立海終わる!」
「ちゅうか王者の威厳零になるのう…」
「えー…でもすっごい似合うんだけどなあ」
残念そうには見えない表情で幸村は肩を落とした。
「今すぐ戻してお願いだから!」
柳以外の全員が幸村に叫んだ。



───
キリ番100000、炉亜様リクエスト『立海ギャグ』でした。
……あれ、ギャグなんでしょうかね?
ギャグって一体…ギャグって一体……!
炉亜様のみお持ち帰り可能です。



前へ 次へ

 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -