効果発動!『HEROシグナル!』
 

ヒーローに憧れていたら、旅行先で本物のヒーローに会えた。
けれど、何で此処に彼女がいるのだろうか。
「…あれ、店員さん!?」
「あれ、確か銀音ちゃんだっけ」
「相変わらずのローテーションな美人さんですね」
働いている雑貨屋によく来る女の子に会った。
偶然とは不思議なものだと思う。
銀音ちゃんはちょっと変わってるけど楽しい女の子だ。
最近仲の良い男の子が出来たとか言ってたのを最後にいきなり来なくなったから何があったのか心配していたけど…どうやら旅行に来てただけみたいだ。
「銀音ちゃんもこっちに来てたんだ?」
「あー…何か成り行きで?むしろ店員さんがこっち来てたことに驚いたようん」
「相変わらず敬語なし、と…」
「あばば…それは言わないお約束で!」
感情表現が豊かだよね…、銀音ちゃんは。
とりあえずお茶でもしながら話そうかってことになり近くのカフェに入った。
「あの小物良いね、…何処に売ってるんだか」
「あれだったらそこのアンティークショップに置いてあった気がするよ店員さん!」
「あ、そうなんだ。あとで覗いてみようか」
「おけおけ把握。そういえば店員さんは何処で寝泊まり中?」
「…知り合った人のところで居候中」
「あららー。私も似たようなモンだけどね!」
少なくとも胸を張って言えることではない気がする。
まあそう言っても聞かないんだろうけど…。
暫く会わないうちに大人しくなったかと思ったけどそうでもなかったみたいだ。
むしろ悪化した気もする。
「そういえば今、男の子と同棲してるんだよねー…あ、夕飯の食材買わなきゃ駄目だったよ」
「…同棲?」
「あ、嘘嘘今のなし。可愛いトイプーと暮らしてるよ!」
「銀音ちゃん、ラリアットとコブラツイストのどっちが良い?」
「サーセン話させていただきまっす!」
……相変わらずのノリに何だか安心した。
話を聞いていると何となく事情が掴めてきたからまあ許す。
知り合いみたいだし、平気か…?
まあとにかく何かあったら連絡するように指示したけど銀音ちゃんは以外と気付かなかったりする。
所謂鈍感というかなんというか。
さて、そんな銀音ちゃんに私聞かなきゃならないことがある。
「銀音ちゃんは誰と旅行で来たの?」
「(え、旅行?…あ、そっかトリップって旅行って意味だもんね。周りの人から変に思われない為にとか店員さんマジグッジョブすぐる)一応、赤也とってことになるよ!赤也マジ天使。誰だよ赤也のこと悪魔とか言ったやつ。けしからんもっとやれ」
…うん、通常運転だ。
何言ってるのか全く分からない。
とりあえずその『赤也』って子の方が身に危険が迫ってる気がしてきた。
まあ言わないけど…。
「それで店員さんは誰と旅行で来たの?」
「私は一人だよ。飛行機でビュンと」
「飛行機…?」
「うん、貸し切りの飛行機」
「それなんて跡部様」
誰なんだ『跡部様』…お金持ちか何かなんだろうな、きっと。
「あ、じゃあHEROTVは見てる?」
「HEROTV…ああ、居候先の人達が好きで見てるから一緒に見てるよ」
「店員さんだって好きな癖に。いけずー」
…いつ銀音ちゃんにヒーローが好きだって話したんだっけか。
私の記憶じゃ話してなかった気がするんだけど…。
「いつ聞いたの、その話」
「あー…何か店員さんが酔ってたとき。丁度会って絡まれたんだよね……」
「うわあ…何だかごめん」
それは本当に申し訳ないや。
私飲むと記憶あるときとないときの差が激しいからなあ…。
いつ飲んだときだろう。
そういえば二ヶ月くらい前に飲んだ次の日に知らないカーディガンを羽織っていた気が……。
もしかしてそのとき?
カーディガンもまだ家に保管されてる、けど…。
いつ返せるんだろうか。
「あ、それより質問だよ質問。ヒーローの中で誰が一番好き?」
「ヒーローの中で?……どのヒーローも捨て難いけど一番はやっぱりスカイハイかな」
「正統派ヒーローktkr!やっぱり時代はスカイハイですよね分かります」
うんうん、と頷きながら言う銀音ちゃん。
「ちなみに私はアントニー…あ、違った。ロックバイソンが好きだよ!あとドラゴンキッドと折紙サイクロン」
「多いね。…ってアントニー?」
「え、知らないのキャンディキャン〇ィ。名作なのに!?」
「いや知ってるけど…銀音ちゃん中三だよね?」
「…てへぺろ☆」
…ごまかそうとし始めた?
銀音ちゃん、流石に言い逃れしようとかは無理だよ、多分。
だってキャンディキャン〇ィって連載開始が私が生まれるより前だった気がするんだけど…。
気のせい?
「世の中には企業秘密というものがありまして」
「………」
「つまり…企業秘密です(ハート」
銀音ちゃんの将来がとても不安になった。
「あれ、店員さんの目が妙に冷たい…!?」
「ああ……うん、まあ人それぞれだよね…」
「うわあああ店員さん目を逸らさないでえええ!」
ちょっとからかったら見事な反応をしてくれた銀音ちゃんに妙な達成感を覚えながら頼んだ珈琲を一口飲んだ。
……うん、良い豆を使ってるな。
「別にキャンディキャン〇ィはママンが知ってただけなんですうぅ!私はただの中学生だしね!」
「必死さが逆に怪しいんだけど」
「………」
「…ごめん、冗談だって」
「ですよね!さあって、そろそろ出ます?」
「あー…うん、そうだね」
「今日は楽しかったね店員さん!」
「そうだね……あ」
「ん?どったの店員さん」
「一つ言い忘れてたけど、私の好きなヒーロー。スカイハイも好きだけど実はローミングとイービルも好きなんだよね」
「………!」
何故か驚かれた。
しかもブツブツ何か言っている。
「…今日は赤也とご馳走だよいやっふうい!」
「えー、と…何だかよく分からないけど私は帰らせてもらうよ」
「あ、そうだった!店員さんそれならこれ、あげるよ!」
「これは…」
まだ発売されていないローミングとイービルのヒーローカードだった。
「それ、知り合いがテレビ局の人で幾つか譲ってくれたんだよねー。…私はぶっちゃけいらないし(だって何処のナルシストだよって話になるし)店員さん好きならあげるよ」
ニッと銀音ちゃんが笑いながら言い、鳴り響いたコール音に慌てたように走りながら手を振って立ち去った。
「じゃあねー店員さん!また今度っ」
「…行っちゃったか」
挨拶する暇もなかった。
ローミングとイービルのヒーローカードをマジマジと見つめ私は裏返した。
裏にはそれぞれサインが入っていた。
「……、サイン入りとかレアなものをくれたの?」
そう呟き私はエリザさんの家へと歩き始めた。


───
キリ番87000星苺様リクエスト「『また明日、』と『オタ事情』の番外編」でした。
これは、コラボって形で良かったのでしょうか…。
しかもキャラが出て来ていない罠。
コラボだったのでオタ主はよく明日主の働いていた雑貨屋に行く設定になっていました。
星苺様のみお持ち帰り可能です。



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