白百合の簪を挿して
 

「織田先輩!今日は来てくれてありがとうございますっ」
「ううん…市も夏祭りに来たかったから……赤也こそ誘ってくれてありがとう…」
夏休みが始まってすぐにある夏祭りに市と切原はやって来ていた。
市は黒地に白い百合と鶴の浴衣、濃いピンクの帯を絞め長い髪は上で纏めて淡いピンクの飾りが付いた小さな百合の簪を挿していた。
切原はそんな市の姿に少しドキドキしつつ笑った。
「どういたしまして!織田先輩、似合ってますよ!」
「そうかしら…?」
「そっスよ!俺、先輩に惚れ直しちゃいました」
「ありがとう……」
照れたようにはにかむ市に切原は「早く回って楽しみましょうよー!」なんて照れ隠しに言って手を引っ張った。
「そうね……」
手を引かれるまま市と切原は歩き始めた。
「今日は何見ます?」
「そうね…市はわたあめが食べたいわ……赤也は?」
「そうっスねえ…まずは射的でしょ、ヤキソバとタコ焼きとお面も買って金魚すくいもやって、あとは…」
「沢山あるのね…」
「楽しまなきゃ損っスから!」
楽しげに屋台を見ながらあれもこれもと行きたい屋台を選ぶ赤也に市は目を丸くした。
「あとあんず飴も食べたいわ………」
「おっあんず飴っスか。いいっスね!」
屋台を一つ一つ廻りながら欲しいものを買って行くと、市の手にはわたあめとあんず飴、切原の腕には様々な食べ物が入った袋があった。
「へへっ大量っスよ!」
ライダー物のお面を少し後ろに向けるように付けた切原は機嫌良さそうに笑う。
「赤也、やっぱり市も持つわ…」
「だーいじょうぶですって。俺、力ありますし」
「でも…」
「それよりどっか移動しません?一通り廻っちゃいましたし」
人も増えて来ていて気を抜けばはぐれてしまいそうだと思った切原は片手だけに袋を持ち手を出しながら言う。
そんな切原に手を差し出して手を握ると市は同意をして人混みに逆らうように移動を始めた。










少し歩いて公園までやって来た二人は一旦足を止めた。
「今日は楽しかったっスね」
「ええ……」
ベンチに腰掛けながら切原と市は話す。
「他の人達も来ていたのかしらね…」
「多分丸井先輩とかジャッカル先輩辺りは来てたと思うっスよ。真田副部長は幸村部長や柳先輩が誘わないと来ないかもしれないっスけど」
切原の言葉に確かにと納得した市はあんず飴を少し舐める。
「味は変わらないのね……」
「あんず飴って味変わるんスか?」
「変わらないわ…」
「でも味変わるんなら良いっスよね!いろんな味が楽しめて」
にこやかに切原は言う。
市の言った意味をよく理解していないようだったけどどう説明すれば良いのかもいつと比べて変わらないのかが分からない市は黙って頷いた。
「織田先輩も食べます?タコ焼き」
「一つ戴くわ…」
割り箸を出しながら切原が尋ねると市は割り箸を受け取った。
少し冷めてきているタコ焼きを食べながら二人はたわいもない話をする。
最近の過ごし方や宿題について。
夏休み中に何処に出掛けたいのか。
話をして、時間的にももう帰らなければならなくなりベンチから立ち上がった。
「今日はありがとう、赤也……」
「いえいえっ俺が誘ったんですし!」
慌てて切原が首をブンブンと横に振る。
「……って、忘れてた!織田先輩これ、あげるっス!」
ガサガサと自分のジーンズのポケットから小さな紙袋を取り出して手渡す切原。
「ちゃっちいので申し訳ないですけど……」
「これ…さっき屋台に出てたブレスレット………?」
紙袋を開け、出て来た小さなピンクのラインストーンが付いたブレスレットをまじまじと見つめた。
「それ、今日のお礼っス」
ニコニコしながら告げて切原は「あ、送ってきますね!」と言うと市を家まで送る切原の耳は若干赤かった。
「赤也、ありがとう…大切にするわ………」
「…ういっす」
家の前に着くと切原は市の方に向き直った。
「それじゃあお休みなさい……市先輩!」
「! お休み、赤也……」
手をブンブンと振りながら切原は走って行った。



───
キリリク82000英様リクエスト『緋色主と赤也が夏祭りに行く』でした。
ご都合主義な展開ですいません…。
ちなみに他のレギュラー陣は二人のあとをこっそり着けて見守ってました。



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