苦労するとしても、
 

「あー…」
テニスボールだと言い張る手の平サイズの女の子に会って二日目。
白石は早速ピンチに陥っていた。
「……服、どないしよか」
勿論白石の家には手の平サイズの服などない。
昔はあったかもしれないが誰かしらに譲られているか、捨ててしまっているだろう。
まさかテニスボールだとはいえ女の子、着替えがないのは可哀相だと、白石は思いはしたもののいい案は思い浮かばず。
「やっぱり、着替えはいるよな…?」
「……!(平気だよ!)」
「そうやな、どないしよか」
意志疎通の出来ていない二人だが全くそれに気づかずに白石が悩む。
「正直他のやつらに本当のこと話しても信じひんような気ぃするし…」
特に財前辺りが、と思いながら白石は考える。
「……あ、せや。ないなら作ればええやないか」
悩んだ末に浮かんだ考えはいろいろとぶっ飛んでいた。


















「まずはデザインやな」
一度やりだすととことんやる白石はルーズリーフに大まかな形を書いていく。
「やっぱり女の子らしくスカートとかがええやろか。…でも、部活のときのこと考えるとテニスウェアがええんか…」
ああでもないこうでもないと試行錯誤した結果。
「これでどうや?」
「………(駄目ー)」
駄目出しされた。
「ならこれは…ああ、でもこの形だと部活のとき動きにくいな」
「……!………(ひーまー!白石君暇だよー)」
白石が考えていると暇になったらしい女の子がペシペシと白石の手の平を叩く。
「ちょっと待っててな。今考えとるから」
「…………(白石君が無視する…!)」
机の棚のところに降ろされた女の子は面白くなさそうに頬を膨らます。
「……!…………(白石君のばかー!つまんないよー)」
ピョンピョンと跳びはねてアピールする女の子に気付く様子もなく、白石はデザインを考えている。
「…やっぱりテニスウェアがええな。うん、なら服のデザインも四天宝寺のもんのがええか…?」
ぶつぶつ呟く白石に痺れを切らした女の子はくるりと丸まると白石の額目掛けて飛び掛かった。
「…っと、何や?」
そこでやっと気付いたらしい白石が女の子を片手で受け止めて尋ねる。
「……(つまんないのー)」
「…、あーもうちょい待っててくれへん?君の服作っとるから」白石の服の袖を握りしめて離さない女の子に何となく何を言っているのか理解した白石は人差し指で頭を撫でる。
「………(もう少しだけなら我慢する)」
渋々といった様子で頷く女の子を尻目に、白石は再び作業に戻った。


















完璧に暇になってしまった女の子は丸まった状態でコロコロと転がって遊んでいると。
「うーん…まあ、こんなもんやろうか。あとはユウジにでも生地分けてもろうて…」
デザインし終わったらしい白石が伸びをして女の子をひょいと持ち上げる。
「近いうちに出来上がるから楽しみにしとき?」
「…!(うん!)」
そして数日後、指先が絆創膏で一杯になっている白石と四天宝寺のユニフォーム姿の女の子の姿があった。


―――
キリリク41000悦様からのリクエスト『テニスボール擬人化』の続きでした。
ちょっと出会ったときは都合上書けませんでした、すいません。
そのうちサイトにアップ出来たらしようと思います。
補足として、我が家の白石君は意外と裁縫は苦手です。
けど出来上がりは完璧にするのが絶頂クオリティー。
悦様のみお持ち帰り可能です。



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