何か部活に来たら手の平サイズの女の子がいました。
「……って何でや!」
白石はビシッとツッコミを入れた。
「……!」
びくっと体を震わせた女の子は自分が座っていたボールの籠の中に潜り込んだ。
「あ、ちょ……」
「………(白石君怖いよー)」
戸惑い気味に白石がボール籠のボールを退けて女の子をそっと持ち上げた。
「…自分何処から来たん?ジ〇リの世界なん?」
「……!…!(あそこ!あれ!)」
白石の問い掛けに女の子は小さな手を必死に動かしてボール籠を指差した。
「…え、ボール籠から?ジ〇リの世界からやって来たんかと思っとったわ」
白石は大分部活仲間によって毒された思考に苦笑しつつ女の子を机の上に降ろした。
「にしても、ホンマに不思議やなあ。卵焼き…やないか。あ、自分ボールにそっくりな色しとるし。ボール籠から来たっちゅうし、もしかしてホンマにボールなんか?なんて……」
「……!(当たりだよー)」
「………ホンマなん?」
冗談のつもりで言った言葉に思い切り首を縦に振られて、白石は固まった。
「いや、でも…何で人になって」
「白石、お前何俺んこと置いてってんねん!」
「げ、謙也…(何もこないなタイミングで来んでもええやろ!)」
咄嗟に自分の後ろに女の子を隠し、白石は苦い顔をした。
「げ、とは何やねん!」
「いや何でもないわ。…それに今日は謙也が寝坊したから置いて行ったんやろ」
「やとしても、声掛けてけや」
「何や謙也、お前そっちの気があったんか」
「ないに決まっとるっちゅー話や!」
女の子はそんなやり取りを耳にしながら首を傾げた。
「……(謙也君?)」
目の前に立っている白石の服を掴んでくいくい、と引っ張る。
「あ、せや謙也。先行って用意しといてくれんか?」
「何でや、」
「スピードスターやから頼んどるんやで」
「! おう、任せときぃ!」
慣れた様子で白石は追い払い、女の子の方を見た。
「…とりあえず他んやつに見つからんようにせんとな」
大騒ぎになるであろうと予想がついた白石は女の子をロッカーの中に降ろした。
「少しの間だけ我慢しててな」
「……、…………!(うん、分かったよ!)」
白石の言葉に頷くと女の子は端の方にぺったりくっついて寝転がった。
「タオルは置いてくからその上におってもええで」
「………(うん)」
白石が置いたタオルに近寄り女の子はタオルの折り目から中に潜り込んで笑った。















ゴロゴロとタオルの上を転がっていた女の子は飽きたのかムクリと起き上がった。
「………(つまんないよー!)」
いつもならテニスコートの端っこで皆が練習している様子を眺めていた女の子にとって暇で暇でしょうがなかった。
ロッカーの下の方にある隙間を見つめ、女の子は考え込むとその隙間から抜け出そうとぐいぐいロッカーのドアを押し始めた。
「……!(出れないー!)」
此処まで来ると意地なのか女の子は懸命にドアを押す。
その瞬間。
ガチャ、ぽて。
外からドアが開けられ女の子は落ちた。
「…………!(痛いよっ何なのー!)」
「って大丈夫か、自分!?」
慌てた様子の白石が女の子を持ち上げる。
どうやら短い休憩時間を縫って様子を見に来たらしい白石を女の子は見上げる。
「……(つまんないー)」
ぎゅっと指にしがみついて離さない女の子に苦笑し、白石は自分のズボンのポケットへと女の子を入れる。
「とりあえずコートまでは連れてったるから、ばれんようにな?」
「……!(ありがとう!)」
くるりと丸まりボールの形になり、怪しまれない形状になると白石はそっとコートの隅の目立たないところに降ろす。
「…っしゃ、勝ったモン勝ちや」
部内のスローガンを呟き気を引き締め、白石は練習へと戻って行った。



ボールと白石君。
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