極々平凡。
そんな私は普通に仲のいい友達だっていたし、勉強も運動も人並み。
……運動はちょっとだけ苦手だけど。
「名前、またねー」
「あ、うん。また明日」
バイバイと手を振る友達に私も手を振って、帰り道をゆっくり歩く。
東京にある私立中学。
私の母校で、学校も平凡。
強いて言うならちょっと不良っぽい人が多いだけ。
部活の大会だって地区予選で二回戦に上がれればいい方で、県大会とか関東大会、まして全国大会なんて夢のまた夢。
…普通の学校だからって、頑張る人が殆どいない。
噂で聞いたのはあの氷帝学園の理事長が私の通っている私立の援助をしているってくらいで、それ以外は全く特徴がない。
それが、そんな何処にでもいるような赤い縁取りの眼鏡を掛けているくらいしか特徴がない私のプロフィールだった。













一人でゆっくりと家へと足を進める帰り道。
ふといつもと違う道から帰りたくなって、私は道を一本ずらした。
「あれ、こんなところに雑貨屋さんなんてあったっけ?」
時折通っていた道にある、お洒落なそれでいて年季の入った建物に首を傾げた。
私は結構小物なんかを集めるのが好きだからこの辺りにある雑貨屋は把握しているのだ。
「……ちょっとだけならいいよね」
気になった私は控えめに扉を開いて中へと足を踏み入れた。
お店の中はちょっと明かりが暗めについていて、不思議と涼しげなイメージがある。
小物の置き方も次々と目移りするように、上手く置かれている。
かといってすぐさま視線を他にやるでもなく、スッと欲しいものが見つかるかのような不思議な感覚。
何だかワクワクしながら私はお店の奥へ奥へと足を踏み入れる。
「お店の人はいないのかな」
開いてはいたからいるのだろうけど全く人が来る気配がしない。
寝てる、とか?
「そうだとしたら買えないよね…また出直そうかな」
そう呟き、踵を返すとふとぬいぐるみが目に入った。
フンワリとした猫のぬいぐるみ。
引き寄せられるように、私はそのぬいぐるみに手を伸ばした。
「可愛い…」
触るとモコモコした感触。
私好みで、色も白くて愛らしい。
何と首輪までついていて、こっちは深い藍色に透明なガラス玉が付いている。
「いらっしゃいませ、その子が気に入りましたか」
控えめにテノールの声が後ろから掛かった。
「え、あ…はい」
「ふふ、そう。それはよかった」
振り向くと優しげな風貌の男の人がレジの前に立っていた。
「あの…いくらですか?」
今月のお小遣はまだ残ってる筈だから買える。
尋ねると、僅かに考えるようなそぶりを見せて男の人は言った。
「無料だよ」
「え、…」
「その子を大切に出来るなら無料」
にっこりと微笑みながら男の人が言った言葉に私は戸惑った。
「で、でもそれは……」
「じゃあ、暫くこのお店に来てもらっていいかな?僕の話し相手になってくれないかな」
「え?そんなことで良いんですか」
「勿論。このお店は開いたばかりで暇しているんだ」
そう言って微笑んだ男らしいに、私は無意識のうちに頷いた。



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