テニスっておもろいんやな!
 

「金ちゃん、」
「銀音どうしたん?」
遠山家の双子、ただいま4歳。
大きな目を輝かせながら銀音は言った。
「あれ、やってみたい!」
指を指しながらはしゃぐ銀音。
金太郎が目を向ければ、小さな黄色いボールを自在にラケットで打ち返す大柄な男がいた。
「うおー…なんやあれ!」
金太郎の目はそれに引き付けられた。
銀音もその様子を興奮しながら見ていた。
「ん?自分ら、テニスに興味あるんか」
あまりにも熱心に見ていたからかその男が視線に気付いて近寄って来た。
「「おんっ!おっちゃんすごいな、どうやったらそないなことできるん?」」
「基礎が出来てりゃあ誰にも出来るさ」
ラケットを肩に乗せながら男は笑った。
「ワイらもできるようになるん?」
「おーおー元気がええなぁ。当たり前や」
「そんなら、おしえてーな!」
「うちらもやってみとう」
「見知らぬ坊主らにそないなこと出来る訳無いやろ、」
くるりと背を向けた男に二人は顔を見合わせて、その背中に向かって大声で言った。
「ワイ、遠山金太郎や!」
「うちは遠山銀音!」
「「なまえしったらみしらぬこどもやないやろ?」」
「お前ら……」
満面の笑みを浮かべた二人の声に振り向き男は溜息をついた。
「仕方ない、ただし明日からや。明日の朝の10時にラケット用意して此処に来ぃ」
「「おーきにっ、くまのおっちゃん!」」
「熊って、あのなぁ……まあええか」
何かを言いかけた男は諦めたように口を閉じた。


















「「おそいで、くまのおっちゃん」」
「お前らが早過ぎなんや…」
やる気なさ気に呟き、男は二人の手にあるラケットとボール、履いているシューズを見た。
「靴はテニスシューズを履いてないみたいやな…なら、二人とも裸足でコートに入ってもらうわ」
「はだし?」
「ああ、せや。テニスコートはテニスシューズ履いとらんといけん」
「ふーん…」
二人は言われた通りに裸足になりコートに入った。
「まずは基礎からや。素振りを教えたるからやってみぃ」



























「まあ今日は此処までや。また明日来ぃ」
手をヒラヒラと振りながら男は帰って行った。
「ごっつつかれるなあ、金ちゃん…」
「おん…けど、はよううてるようになりたいな」
幼い二人は息を切らしながら、座り込んで会話する。
「すこしやすんだらすぶりやろうな」
「どっちが多くできるかきょうそうやで、銀音!」
「ぜったい負けへんからなっ」
同時にガバッと立ち上がり二人は素振りを始め、暗くなるまでし続けた。
その一週間後にはすっかりラリーが続くようになった二人を見て男は思った。
(こいつらは何処までも純粋に、貪欲にテニスを求めて強うなる)と。














それから数年、二人は小学校を卒業し別々の道を行くことになる。
互いの力を別の場所で高め合い、試合をする為に。



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