立海大家族4
 

「何でおれがコイツのめんどうを…」
「にーちゃ?」
「何でもねえよ!」
「そーな?」
言葉を理解してたどたどしくも口を開く銀音。
今やすっかりこの家のアイドルである。
「だいたい、おれはコイツと年そんなかわんねえし」
不貞腐れているのは今まで末っ子だった赤也、今のこの状況が面白くないのだ。
何となく家族を取られた気分で銀音をジト目で見つめた。
「…う?」
そんな赤也を不思議そうに見つめ返す銀音に赤也は肩を落とした。
「…何でもねえよ」
先程と同じ言葉を返しながらも赤也はチラリと台所の方を見た。
台所では先程から何をしているのか阿鼻叫喚といった具合だ。
「……(にげたほうがいい気がしてきた)」
「にーちゃー」
思考する赤也に銀音はすり寄る。
「…っかーらーくっつくなっての!」
苛立ちを隠さないまま、赤也は銀音を引き剥がした。
「………」
「あー、もう…」
ようやく静かになった銀音。
赤也はホッとした。
暫くは面倒を見なくてもいいと思ったからだ。
「……ふえ、」
「…あ?」
「うわあああん!」
びゃあああ!と声を上げて泣き出す銀音に赤也は目を丸くした。
「え、な…何ないてんだよっ」
「にーちゃ、きら…きらって…!」
「え?」
「うわああああん!!」
泣いていて要領を得ない銀音。
まだ赤ちゃんである銀音が言いたいことが分かる方が不思議なのだが、赤也は必死に耳を傾ける。
だって怒らせたら母さんこええし。
「にーちゃ、うち、んこと…きら、きらって…やから、っぐす」
銀音の言うことが少しだけ分かったのか、赤也は黙った。
「…べつに、きらいじゃねーし」
「っく、ホンマ…?」
「ホントだっつの」
まだうけ入れきれてねえだけなんだよ、とボソリと呟いた。











「…うわ」
キッチンにいた精市が先程まで響いていた声が聞こえなくなったことに疑問を感じて顔を覗かせ、直様笑顔になりながら声を漏らした。
「おや、どうしましたか母上」
「ほら見てよ比呂士」
一緒にいた比呂士が不思議そうに後ろから近寄ると精市が手招きしてリビングを指差す。
「……やりましたね、母上!」「うん、そうだね。っていうかうちの子達天使過ぎるよね」
その視線の先にはスヤスヤと寄り添って眠る銀音と赤也の姿があった。



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