もうすぐ始まるで!
 

「明日は決勝当日だね、弦一郎」
「それもあるが精市の手術の日でもあるだろう」
「ふふ、そうだったね」
そう言って幸村は微笑んだ。
「そういえば皆はどうしてる?」
「それぞれ体を休めるよう言ってあるが…恐らく少し打っているのであろうな」
「……………」
「…幸村?」
「ああ、ごめん。何でもないんだ」
そう言って笑う幸村に真田は眉根を寄せた。
「そういえば銀音はどうしてる?」
「銀音か?あいつはよく試合をしたいと駄々をこねているが…」
「ふふ、やっぱり」
真田の言葉に面白そうに笑う幸村。
「む、何がやっぱりなんだ?」
「ああ、いやね?此処にたまに一人で来てくれたりするんだけどその度に試合がしたいって、拗ねちゃってるんだよね」
思い返したのかふふ、と楽しそうに笑うと幸村は付け加えるように言った。
「たまにはさ、試合形式でもいいからさせてあげてね」
そんな風に言う幸村に真田は静かに頷いた。
「…………幸村」
「何かな」
「必ず優勝旗を持って帰る」
「……楽しみに待ってるよ、真田」
常勝の名に、何よりもこれから手術を受ける幸村の名に恥じぬよう。
そう心に誓い、真田は病室を出て行った。
「…もうすぐ、かあ」
幸村のそんな声が後を追い掛けて気がした。










関東大会決勝。
そのときは近づいていた。
「銀音はこれでも被っときんしゃい」
仁王がそういって帽子をしっかりと被せる。
「仁王君、何をして…」
「プリッ。まあよう見ときんしゃい」
いつもの何かを企んでいるような仁王に柳生が溜息を吐く。
「ほーれ、どっからどう見ても普通の男子じゃき」
「…失礼ですよ、仁王君」
「プリッ」
柳生の言葉にそう返す仁王。
「ぷり」
そんな仁王に真似をする銀音に柳生は苦笑した。
「全く…。良いですか?今日は大人しく見ていてくださいね、そうでないと幸村君の手術の開始時間に間に合わなくなってしまいますから」
「おん!ちゃんと見とるで!」
元気良く頷いた銀音を尻目に着々とアップが進められていく。
お互いに試合の準備が整いコートに並ぶ。
審判のコール、そして一礼。
真田と大石が向き合い、大石が宣戦布告をした。
「俺達は勝つ為に来た!!」
「ほあー…あいつ、度胸あるんやなあ」
気合いの篭ったその言葉に銀音は目を瞬かせた。
「どないな試合が見れるんやろ…!皆ー、気張りいや!」
大声で声を張る銀音に周りが苦笑する。
「あのレギュラーに対してそんな発言出来んのはお前くらいだよ、遠山」
そんな一言に銀音は首を傾げた。
「そうなん?」
「そりゃあ…なあ…」
ごまかすように周りが言葉を濁し、応援が始まる。
最初の試合はダブルスで丸井・ジャッカルペアVS桃城・海堂ペアだ。



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