準決勝!うちも試合したいわ…
 

とうとう準決勝である。
「くあーっ。柳、何でうちに来たん?」
「……毎回毎回遅刻してくるからな、呼びに来させてもらった」
「そないに遅刻しとらんで?」
「…まあいい。今日の相手は不動峰だ、準レギュラーと正レギュラーの宍戸が相手だったとはいえ氷帝をストレートで下した相手だ。なかなかの強敵になることが予測される」
「うむ、だが我が立海の三連覇に死角はない。すぐに下してくれるわ」
「おーおー真田も言うのう」
「仁王君!そのような言い方は謹みたまえ!」
「…プリッ」
「なージャッカルー、俺腹減っちまった」
「もうかよ…ほら、このあんパンで最後だからな」
「よっしゃ、やりい!今日も天才的に決めてやるぜ」
「どうせ氷帝を下したとかいっても所詮敵じゃねーっスよ。ダークホース…って言いましたっけ。まっ、すぐに終わらせてやるし」
全員が全員リラックスした様子でコートへと歩みを進める。
銀音もこれから始まる試合に目を輝かせながらソワソワと待っていた。
「此処、いいかしら?」
「…あっ、姉ちゃんやー!」
杏が近寄り腰を下ろすと銀音は嬉しそうにじゃれついた。
「姉ちゃん久しぶりやなあ」
「そうね…って言っても数日前だけどね。にしてもとうとう王者立海とかあ…」
しみじみとした様子で言う杏に銀音は首を傾げた。
「おうじゃ、って何や?」
「王者って言うのはね……」
「銀音ー!そろそろ試合始まんだから早く来いよー!」
丸井の声に掻き消され、杏の言葉を聞き取ることが出来なかった。
「ほら、銀音君。呼ばれてるわよ?」
「おん!…あ、姉ちゃんお互い頑張ろうな!」
「ええ、勿論よ!」
にっこりと笑って言った杏と別れて銀音は丸井とジャッカルに飛びついた。
「おっまえ可愛い女子ナンパしてんなよ!」
「ナンパしとらんもん!」
「おいおい…ブン太、銀音はナンパなんて出来るやつじゃねえだろ?」
「そりゃーそうだけどよ」
ぷくうとガムを膨らませる丸井をジャッカルは諌めた。
「それよりナンパって何なん?」
「ナンパ知らねえのかよ」
キョトンとした銀音の問い掛けに丸井はクシャリと髪を掻き上げながら言った。
「ナンパっつうのは…あー、ジャッカルパス」
「無責任に任せんなよ!」
「そこの三人、そろそろ試合が始まるぞ」
「あ、柳やー!」
柳が声を掛けると柳にじゃれつく銀音。
「悪い悪い、ってか銀音随分と柳に懐いてんのな」
「何だ、ヤキモチか?」
「妬いてねえよ。…最近柳がSっ気出してきたなとしか思ってねえし」
「それは言えてるな。…柳、この間も真田のことからかってたしな」
「弦一郎の反応は面白いんだ。特に銀音絡みになると、な」
フッと笑みを浮かべる柳にジャッカルと丸井が口元を引き攣らせた。
「柳が怖いぜ…」
「柳ーうちも試合したい!」
「駄目だ」
「えーっ何でなん?」
「銀音は選手登録していないからな」
銀音をあしらい、 柳はコートの中へと入って行く。
ジャッカルと丸井もコートの中に入って行くと銀音はつまらなそうにコートを見た。
「…うちやって試合、やりたいもん」
銀音はラケットを片手にその場を離れた。










フラフラと足を進めていると別の試合をしているコートに辿り着き、足を止めた。
「此処って周助の学校やったっけ?…応援したろ!」
こっそりと応援団らしき他の生徒達の後ろに紛れて銀音は試合を眺め始めた。
白熱した試合展開に銀音は目を輝かせながらぴょんぴょんと跳びはねてボールを目で追い掛ける。
「真田達とは全く違う試合するんやなあ…」
感心したような声を上げたあと、ふと気が付いた。
「…眼鏡の兄ちゃんがおらん?」
仁王と柳生と一緒に試合を見た手塚がいないことに気が付いた銀音は首を傾げた。
キョロキョロと辺りを見回し、近くにいた知らない学校の人に声を掛けた。
「なあなあ。此処で試合しとる青学の、こないだごっつう試合しとった眼鏡の兄ちゃんっておらんの?」
「お前知らねえのかよ!青学の手塚なら肩を痛めて九州に行ってるって話だぜ?」
「そうなん?ふうん…おーきにな、兄ちゃん!」
とりあえずお礼を言って銀音は少し距離を取った。
青学と赤いジャージの木製のラケットを使う相手校の試合に退屈しないとばかりに試合を眺める。
「楽しそうやなあー…うちも試合したいわ」
立海がする試合とは何だか違って見える試合を見ながら銀音は呟いた。
今、立海と不動峰の試合がどうなっているのかも知らずに。
本当に羨ましそうに、キラキラとした視線で試合を見続けた。



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