光の誕生日!
 

今日は何や先輩らと金ちゃんの様子が可笑しい。
……いや、可笑しいんは謙也さんと金ちゃんだけやけど。
この二人は極端に隠し事が出来へん二人やからこの二人が同時に可笑しいときは確実に何かあるときや。
白石部長らが何も言わんっちゅうことは白石部長らも一枚噛んどるんやろ、気に食わんわ。
面倒やから無視しとるけど、チラチラこっち見んなや。
それあからさまに何やある言うてるもんなんやけど。
「何や鬱陶しいんですけど謙也さん」
「え?べ、べべべべ別に何も隠しとらんわ!」
いや吃り過ぎやろ。
「いやーん、光きゅんったらだ・い・た・ん!謙也君にそないな熱いプロポーズしちゃうなんて…!」
「は?」
「でも、どうせならアタシにプロポーズを……」
「小春!何浮気晒しとんねん!」
「…やあよユウ君、冗談やって!」
騒がしなってきた先輩らに付き合うんが馬鹿らしなってきた俺は少し離れたコートに移動した。
軽く乱打でもしよ思うて、俺は向こう側にいる小石川副部長に頼んで乱打を始めた。
溜息を吐いて俺がボールを打とうとすると聞き覚えのある声が聞こえて、ボールを打ち損なった。
…何でおるんや。
「光ー!」
フェンス越しに手をブンブンと振る銀音に頭が痛なったわ。
「何やもう用意終わったん?」
「せやで!柳と丸井と一緒にな」
え、何で柳さんと丸井さんまで来とんねん。
白石部長と話している銀音の言葉に苛立ちのような何かを覚えながら小石川副部長に断りを入れて銀音の前…ちゅうてもフェンス越しやけど立った。
「何でおるねん」
「えー?やって光今日、誕生日やんか」
不思議そうな顔をして当たり前のように言った銀音は思い出したように慌てて俺んこと見た。
「最初に言うの忘れとったわ!誕生日おめでとうな、光!」
満面の笑みを浮かべて言うた銀音は「部活終わったら楽しみにしててなー!」と告げて部室の方に走って行った。
「どや、嬉しいサプライズやろ?」
ニヤニヤと笑いながら白石部長が言う。
「…別にいつでも会おう思うたら会えますわ」
白石部長にそう切り返すと分かってたのか苦笑を返された。
「ホンマ素直になった方がええで?」
分かっとりますわ。










部活が終わって部室に戻ると銀音と丸井さん、柳さんがおった。
「ホンマに二人も来とったんですね」
小さく漏らすとその糸目を俺に向けながら柳さんは言う。
「…誕生日のプレゼントを作るのを手伝う為に、な。あとは暴走しないように見張るという意味も込めてだが」
ノートに何かをサラサラと書きながら柳さんが言うと、丸井さんが面白そうに言うた。
「よく言うぜ、ついでに試合とかのデータ取ってただろぃ」
部活をやっている様子を見ていたらしい。
銀音は既に金ちゃんとはしゃいでおってとてもじゃないけど話し掛けに行く気はせえへん。
自分から疲れに行くんはアホや。
部室にある椅子に全員が座って銀音達が作った善哉を出された。
「あんま美味ないかもしれん、けど……」
「銀音、この俺が作るの手伝ってやったんだからそんな心配は無用だっつの」
丸井さんにデコピンをされ、柳さんに頭を軽く撫でられた銀音は嬉しそうに「せやな!」なんて頷いた。
「じゃあ、改めて…今日は光の誕生日や。一年間弱、俺らは一緒に練習してやって来とった。去年は光の誕生日が直前になって分かったから慌ててあんまちゃんとしたモンは出来へんかった。せやから、今年は盛大に祝お思っとる」
白石部長がそう言い、一区切り付けてからジュースの入ったコップを持ち上げて言うた。
「祝ったモン勝ちや!光、誕生日おめでとう。これからもよろしゅうな」
「おめでとう!」
口々に俺におめでとうなんて言いジュースを飲み始めると、俺も善哉に手を付けた。
あんま甘ない、仄かな甘味にモチモチの白玉。
…銀音は料理がそないに出来んから、多分白玉が銀音なんやろうな。
まあ口に出しはせんけど。
前に比べたら白玉も作るん上手くなっとるし。
「うわ、何やこのお新香…!こないな味が絶頂なお新香食べたことあらへん」
「味が薄味やけど善哉の甘さを引き立てはりますな」
銀さんも褒めるお新香を一口食べてみると成る程、確かにこれは美味いわ。
柳さんやな、これ。
涼しい顔で善哉を食べてる柳さんを見れば俺の方を向いて「食べないのか」と聞いてきた。
「食べますわ、」
再び善哉を口にすると銀音が横に来て言うた。
「光、これからもよろしゅう!」



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