関東っちゅーんは怖いとこやなぁ…
 

「此処が関東かー…めっちゃゴチャゴチャしとるんやな」
ラケットの入ったリュックサックを片手に東京駅の改札で周りを見渡す。
そんな銀音に好奇の目線をおくる通行人。
豹柄のタンクトップに短パンの銀音に好奇の目が行くのは仕方ないことだ。
「んー……ほんで、神奈川行くにはどれに乗るんやろ?」
一人上京の形になる銀音には頼れそうな人はいない。
だからキョロキョロと辺りを見渡し、母親に書いてもらったメモと駅の表示を見比べていた。
「分からへん……まあええわ!走っとったらつくやろ!」
よしっと意気込み駅の外に出て準備体操を始めると。
「ちょっとそこの君」
優しそうな顔つきの少年に話し掛けられた。
「なんやー?」
首を傾げて聞くと、関西弁に驚いたのか少し開眼した。
「此処にいると危ないよ」
人の行き交いが激しい往来の真ん中にいた為注意されてしまい、銀音は落ち込んだ。
「おん、端っこに行くで」
「気をつけてね」
「おん!おーきに兄ちゃん!」
ブンブンと手を振りながらお礼を言えば、控え目に手を振り替えして言った。
「どういたしまして。……そういえば、何でこんなところで準備体操をしてるの?」
「あんな、神奈川まで行きたいんや。せやけど、どの電車乗れば良いか分からんくて…」
身振り手振りで伝えると納得がいった顔をして少年は言った。
「もしかして、此処から神奈川まで走って行くつもりだったのかな」
「おん、そうやで!」
「ちょっと遠いからオススメは出来ないけど……そうだ。もし良かったら僕が神奈川まで送ろうか?」
「! 良いん?」
「うん、これからスポーツショップ行こうと思ってたからね。向こうのも見てみたいし」
「兄ちゃんホンマええ人やな!うち、遠山銀音言います!よろしゅうよろしゅう!」
「僕は不二周助。遠山君で良いかな?」
「名前でも構わへんで!」
不二にピョンと飛び付きながら銀音は自己紹介した。
「僕も名前で構わないよ、銀音」
「おん、周助おーきにな!」
頭を撫でた不二に銀音は笑顔ではしゃぐ。
「ほら、行くよ銀音。早くしないと日が暮れちゃうからね」
腕時計を見ながら不二が言った。
「ホンマや……早う行こうっ」





二人は電車に乗った。
「銀音は何で神奈川に?」
「あんなあんな、うちこっちに引っ越して来たん」
「そうなんだ、でも家族とかは?」
「大阪におるん」
大阪にいると聞いた不二は再び開眼する。
「じゃあこっちには一人で来たんだ(こんな小さいのに一人でなんて、大変だっただろうな)」
「せや、うちは立海入ってテニスする為にこっち来たさかい」
「立海で?ってことは男テニに入るんだ」
「おん!弟と戦う為にこっちわざわざ出て来たんやから、強いとこ行かなな」
テニスで話しが弾んだ二人。
神奈川につくまでテニスする時のフォームの話しや技の話しをし続けた。
「あ、着いたみたいだね」
電車が止まって二人は降り、駅の改札口で立ち止まった。
「今日はおーきに、周助!助かったわ」
「こっちこそ、楽しかったよ」
にこやかに話しをする二人。
「そうだ、銀音」
「なんー?」
「携帯って持ってる?」
「おん、持ってるで!」
淡い薄緑の携帯を差し出せば、貸してと手を出されて手渡す。
「……これでよし」
カチカチと暫く弄っていた不二が携帯を銀音に返した。
「? 何がええんや?」
「連絡先入れておいたから。いつでも連絡入れてね」
テニスの相手も大歓迎だよ、と付け足した不二に銀音が飛び付いた。
「おーきに、周助!休みに試合しよーなっ」
「ふふ、それじゃあ僕はそろそろ行くよ。またね、銀音」
「おんっ、ほなまたなー」
駅から出て行った不二を見送り、銀音は反対側の出口から出て行った。












「つ、着いた……」
グルグルと道をさ迷い続けてやっとの思いでたどり着いたのは綺麗なマンションだった。
「オトン、頑張ったなぁ……」
きっと一人暮らしする銀音の為にセキュリティ万全な場所を探してくれたのだろう。
「すんませんー、今日から入居する遠山なんですが」
「ああ、遠山君。一人暮らしは大変だと思うけど、頑張ってね。おばちゃんも助けるから」
「おーきにっ管理人さん!」
鍵を受け取りまじまじと眺める。
「これ、鍵の形してないから不思議でしょう?」
「おん、クリスタルみたいやな」
「一つしかないから無くしたら入れなくなっちゃうから、気をつけてね」
「おん、分かった!」
注意事項を聞いて中へと入った。
「中、広いなあ」
荷物が来るのは明日だから今日は何もない状態で過ごさなくてはいけない。
ちゃんとお金も持って来てるから夕飯は買いに行くことにした銀音。
一先ず外に出て辺りを散策すると決めて、リュックをしょったまま外に出た。
「夕飯は、何がええかなー」
ルンルンと鼻歌を歌いながら歩く。
「お好み、タコ焼き、お肉ーっ……って、ん?」
見るからに不良な格好をした男達がお婆さんに絡んでいるのを見つけて銀音は近寄った。
「良いからそれ渡しな、ばーさん」
「こ、これはその……」
「アンタが持ってるより俺らが使った方がよっぽどいーべ?」
げらげらと大声で笑う不良に困り顔で縮こまるお婆さん。
「なあなあ、何しとるん?」
その場の雰囲気にそぐわぬ明るい声で銀音は割って入った。
「何だこのガキ?」
「お前の出る幕なんざないんだよ!」
大声でからかう不良達を無視してお婆さんに笑顔で言った。
「あんな、婆ちゃん。うちが何とかするさかい、もう行ったって!」
「! ありがとうね、僕」
「おんっ、」
頭をペこりと下げるとお婆さんが去って行った。



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